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16話 家へ
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一階に上がり、すぐさま勝手口から外へ。
塀を跳び越え、玄関口の大通りまで回った。
そしてそのまま家へ走──
「やけにうるさかったね、イオ」
玄関に背を預けたベガが、僕の肩を掴む。
「思いっきり話し声が聞こえてきたよ。店主が見に行こうとしてたから、眠らせちゃった」
いたずらっぽく笑むベガ。
だが僕は、その笑みを崩す。
彼女の両肩に掴みかかり、紫の瞳をじっと見据えた。
「ベガ、よく聞いて」
一瞬、彼女は驚いた様子を見せたが、すぐに真剣な表情へと切り替わる。
「どうしたんだい、急に?」
「端的に言うよ。僕の前の家とベガの家が襲撃されようとしているんだ。僕は元婚約者を救いに行く。危険だからベガは、ここにい……」
「ついていくよ」
玄関から背を離し、彼女は通りへと歩く。
ど真ん中で両手を広げ、道を塞いだ。
大通りを駆けていたリザード──二足歩行する巨大なトカゲは急停止。
その背に跨る御者は、ベガに向けて怒鳴り散らす。
が、彼に向けてベガは、金貨を指で弾いた。
「怒るのはごもっともだ。だけど、少しの間だけ貸してくれ。急用でね」
御者は渋い顔をしたが、ベガから滲み出る殺気を感じ取ったのか、ひょいと跳び下りた。
代わりの主としてベガが、リザードの背に軽やかに跳び乗る。
手綱を握り、僕とレオンの前までリザードを歩ませると、
「さぁ、乗るといい、お姫様方。輝かしい栄光まで、わたくしが連れて行って進ぜましょう」
なんて、英雄譚の一節を冗談めかしく言いながら。
手を差し伸べてくれた。
だッ、だッ、だッ、だ──ッ!
リザードの両脚が石畳を蹴り、高速で進んでいく。
僕は振り落とされないよう、ベガの背中に抱き着き、僕の後ろに座るレオンは、僕の肩をしっかりと掴んでいる。
三人乗りだ。
「り、リザードの上、結構怖いんだけど……っ! 高いし、揺れるし!」
「それなら、私にもっと密着するんだ、イオ。戦う前に落竜して大怪我なんて、三文芝居より笑えないよ」
た、確かに……。
これから戦うっていうのに、落竜してしまっては元も子もない。
恥ずかしいけど、ここはもう少し強めにベガを抱き締めて……。
「……ふふ、役得だね」
「おいベガ、心の声が漏れてんぞ」
僕を間に挟んで会話するベガとレオン。
「久し振りだね、レオン。今日もイカしてるじゃないか、主に頭皮が」
「禿げてねぇよ! 久し振りの相手への第一声がそれ!?」
「はぁ……正直、レオンとの再会なんて嬉しくないんだけどなー。……あ、心の声が漏れてしまった」
「故意だよ! 漏れたんじゃなくて、漏らしたんだよ!」
「このリザード、二人乗り用なんだ。降りてくれないかな?」
「ド直球!? てか、俺とイオで対応が違い過ぎないか!?」
と、会話する二人だったが、ふとベガが、
「イオ、襲撃の時間は?」
「九時三十分!」
「腰嚢に懐中時計を入れてるから、確認してもらえるかい?」
僕は片手を離し、彼女の腰の鞄をオープン。
手を中に突っ込み、懐中時計がないか、まさぐる。
「……ん。あっ、やっ……。イオ、そこは駄目っ……」
「変な声、上げないでよっ! 言っておくけど、腰嚢以外は触ってないからねっ!」
「触ってもいいんだよ?」
「触らないからっ! てか、今そんな事したら普通に死ぬから!」
「あはは、冗談だよ、冗談」
これから戦いに行くのが嘘かのように、ベガは楽しそうに笑う。
……もしかしたら、彼女なりに僕らの不安と緊張を緩めようとしているのかもしれない。
相手は、数も多いし、装備もそれなりの物を用意してくるだろう。
確実に強い。
勝てるとは限らない。
負けた時の事を考えると、不安が募る。
しかも、相手は人間だ。
魔物と戦うのとは違った緊張感がある。
その緊張に、僕はまだ慣れていない。
だけど、その不安や緊張も、さっきのやり取りで多少は和らいだ。
それはレオンも同じだろう。
口には出さないだけで、ベガはベガなりに僕達の事を気遣ってくれているんだ。
……良い仲間を得た、と心の底から思うよ。
「九時二十八分……ギリギリだね」
取り出した懐中時計で時刻を確認すると、残り二分。
だけど同時に、僕の家が見えてくる。
「《アクセラレート》」
杖を抜き、自分に向けて詠唱。
「ベガ、スピードを緩めないでそのまま進んで! レオン、玄関を頼むよ!」
「分かった」
「任せろ!」
ベガは手綱を握ったまま。
一方レオンは、背負った"ショートボウ"を抜き取る。
ニエル武具の地下室にあった弓だ。
ついでに、近くに置かれていた矢もセットで持ってきた。
彼は矢を番え、弓を突き出し──放つ!
「《爆裂魔弓》ッ!」
放たれた矢は高速で飛び、玄関に命中。
矢じりが取っ手に触れたと同時、
バアアァァン──ッ!
爆発音と共にドアが吹き飛ぶ。
「ありがとう、レオン! ここからは僕の役目だね! 《プロテクテイク》」
支援魔術で、できるだけ身体を丈夫に。
勇気を振り絞って──跳んだ!
塀を跳び越え、玄関口の大通りまで回った。
そしてそのまま家へ走──
「やけにうるさかったね、イオ」
玄関に背を預けたベガが、僕の肩を掴む。
「思いっきり話し声が聞こえてきたよ。店主が見に行こうとしてたから、眠らせちゃった」
いたずらっぽく笑むベガ。
だが僕は、その笑みを崩す。
彼女の両肩に掴みかかり、紫の瞳をじっと見据えた。
「ベガ、よく聞いて」
一瞬、彼女は驚いた様子を見せたが、すぐに真剣な表情へと切り替わる。
「どうしたんだい、急に?」
「端的に言うよ。僕の前の家とベガの家が襲撃されようとしているんだ。僕は元婚約者を救いに行く。危険だからベガは、ここにい……」
「ついていくよ」
玄関から背を離し、彼女は通りへと歩く。
ど真ん中で両手を広げ、道を塞いだ。
大通りを駆けていたリザード──二足歩行する巨大なトカゲは急停止。
その背に跨る御者は、ベガに向けて怒鳴り散らす。
が、彼に向けてベガは、金貨を指で弾いた。
「怒るのはごもっともだ。だけど、少しの間だけ貸してくれ。急用でね」
御者は渋い顔をしたが、ベガから滲み出る殺気を感じ取ったのか、ひょいと跳び下りた。
代わりの主としてベガが、リザードの背に軽やかに跳び乗る。
手綱を握り、僕とレオンの前までリザードを歩ませると、
「さぁ、乗るといい、お姫様方。輝かしい栄光まで、わたくしが連れて行って進ぜましょう」
なんて、英雄譚の一節を冗談めかしく言いながら。
手を差し伸べてくれた。
だッ、だッ、だッ、だ──ッ!
リザードの両脚が石畳を蹴り、高速で進んでいく。
僕は振り落とされないよう、ベガの背中に抱き着き、僕の後ろに座るレオンは、僕の肩をしっかりと掴んでいる。
三人乗りだ。
「り、リザードの上、結構怖いんだけど……っ! 高いし、揺れるし!」
「それなら、私にもっと密着するんだ、イオ。戦う前に落竜して大怪我なんて、三文芝居より笑えないよ」
た、確かに……。
これから戦うっていうのに、落竜してしまっては元も子もない。
恥ずかしいけど、ここはもう少し強めにベガを抱き締めて……。
「……ふふ、役得だね」
「おいベガ、心の声が漏れてんぞ」
僕を間に挟んで会話するベガとレオン。
「久し振りだね、レオン。今日もイカしてるじゃないか、主に頭皮が」
「禿げてねぇよ! 久し振りの相手への第一声がそれ!?」
「はぁ……正直、レオンとの再会なんて嬉しくないんだけどなー。……あ、心の声が漏れてしまった」
「故意だよ! 漏れたんじゃなくて、漏らしたんだよ!」
「このリザード、二人乗り用なんだ。降りてくれないかな?」
「ド直球!? てか、俺とイオで対応が違い過ぎないか!?」
と、会話する二人だったが、ふとベガが、
「イオ、襲撃の時間は?」
「九時三十分!」
「腰嚢に懐中時計を入れてるから、確認してもらえるかい?」
僕は片手を離し、彼女の腰の鞄をオープン。
手を中に突っ込み、懐中時計がないか、まさぐる。
「……ん。あっ、やっ……。イオ、そこは駄目っ……」
「変な声、上げないでよっ! 言っておくけど、腰嚢以外は触ってないからねっ!」
「触ってもいいんだよ?」
「触らないからっ! てか、今そんな事したら普通に死ぬから!」
「あはは、冗談だよ、冗談」
これから戦いに行くのが嘘かのように、ベガは楽しそうに笑う。
……もしかしたら、彼女なりに僕らの不安と緊張を緩めようとしているのかもしれない。
相手は、数も多いし、装備もそれなりの物を用意してくるだろう。
確実に強い。
勝てるとは限らない。
負けた時の事を考えると、不安が募る。
しかも、相手は人間だ。
魔物と戦うのとは違った緊張感がある。
その緊張に、僕はまだ慣れていない。
だけど、その不安や緊張も、さっきのやり取りで多少は和らいだ。
それはレオンも同じだろう。
口には出さないだけで、ベガはベガなりに僕達の事を気遣ってくれているんだ。
……良い仲間を得た、と心の底から思うよ。
「九時二十八分……ギリギリだね」
取り出した懐中時計で時刻を確認すると、残り二分。
だけど同時に、僕の家が見えてくる。
「《アクセラレート》」
杖を抜き、自分に向けて詠唱。
「ベガ、スピードを緩めないでそのまま進んで! レオン、玄関を頼むよ!」
「分かった」
「任せろ!」
ベガは手綱を握ったまま。
一方レオンは、背負った"ショートボウ"を抜き取る。
ニエル武具の地下室にあった弓だ。
ついでに、近くに置かれていた矢もセットで持ってきた。
彼は矢を番え、弓を突き出し──放つ!
「《爆裂魔弓》ッ!」
放たれた矢は高速で飛び、玄関に命中。
矢じりが取っ手に触れたと同時、
バアアァァン──ッ!
爆発音と共にドアが吹き飛ぶ。
「ありがとう、レオン! ここからは僕の役目だね! 《プロテクテイク》」
支援魔術で、できるだけ身体を丈夫に。
勇気を振り絞って──跳んだ!
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