魔術学院最下位の俺が最強スキル絶対真眼を手に入れちゃいました。~必ず首席で卒業してみせる~

一条おかゆ

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第4話 成り上がりの始まり

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「……では、今週末の魔術戦頑張ってください」

 ベルナール先生はそう伝え、帰りのホームルームを終わらせた。
 生徒達はそれを聞き、帰り始めたり、友達を雑談し始めた。
 俺も鞄の中に教科書を入れていると、

「アベル君。この後、第5演習室に来てください。伝える事があります」

 教壇のベルナール先生にそう言われた。

「はい。分かりました」

 俺の返事を聞くなりベルナール先生は部屋から出て行った。

「……バカベル、怒られるじゃん」
「成績で怒られるとかカワイソー」
「仕方ないだろー最下位だぜ、あいつ」

 オリヴィアさんのおかげなのか、声を大にして馬鹿にされることは無い。
 でも……聞こえてくる。
 早めに演習室に行こ。

 俺はすぐに席を立ち、教室から出た。
 そして階段を下り、この校舎の一階へと向かった。

 ベルナール先生に呼ばれた要件はなんとなくわかる。
 俺の成績についてだろう。
 最下位――これは俺にとっても抜け出さなければならない高い壁に違いないのだが、そう簡単ならとっくに超えている。
 カレンとの昼食は楽しかったし、午後は馬鹿にされることも無かったから楽だったんだがな……。

 そんな事を考えていると、第5演習室にはすぐ着いた。
 そして俺は少しの躊躇いを覚えながらも、演習室の扉を開いた。

「失礼します」
「アベル君ですね、こちらです」

 丁寧にベルナール先生に呼ばれた。
 演習室には誰もおらず、俺とベルナール先生の二人きりだ。
 ベルナール先生は席の一つに既に座っており、俺は重い足取りでその前の席に向かった。

「どうぞ、掛けてください」
「わかりました」

 俺はベルナール先生に向き合うように椅子の向きを変え、座った。

「アベル君……」

 この先言われることは分かっている――はずだった。

という言葉を聞いたことがありますか?」
「……え?」

 ……ぽかん。

 てっきり成績の事で呼ばれたと思ったのに、全然違った。

「知らないのですか?」
「い、いえ! 知ってますよ。あれですよね、200年前に聖杖の勇者に滅ぼされたっていう」

 今のは予想外の質問に困惑しただけですよ!

「そうです」
「でも、なんで突然そんな事を?」
「実は……」

 先生は下を向いて口ごもった。
 それにつられて前に流れてくる金の髪が艶めかしい。

「……その魔族が復活したようなんです」
「……え、本当なんですか?」

 魔族――
 子供用のおとぎ話や歴史の本によく出てくる悪役だ。
 その戦闘能力は、平均的な魔族でさえ十分に訓練された人間をも上回る……らしい。
 だからこそ魔族に対抗しようと、300年くらい前から魔術学院や剣術学院が出来始めたんじゃなかったっけ?

 魔族については俺もそれ程詳しくない。
 しかし魔族はさっきも言った通り滅ぼされたはずだ、一匹残らず。

「事実です。昨夜コンティーユ通りの路地裏付近で出現したそうです」

 コンティーユ通り!?
 それは昨日俺があのスーツの男と遭遇した場所だ。
 出現した魔族とは……あのスーツ姿の男の事か。

「でもどうしてそんな事を俺に?」
「学院長からの指示です。細かい事は私にも伝えられていません」

 学院長……だと。
 何故学院長が俺にそんなことを伝えさせたんだ?
 昨日のアレを知っているのか?

「それと魔族の復活に関しては、詰所や国王にさえ伝えられていない極秘情報のようで、絶対に他言無用です」
「……本当になんで俺に伝えたんでしょうか?」
「分かりません。しかし学院長があなたに伝えた以上、何か理由があるのは明らかです。頑張って下さい、としか私には言えません」
「そうですか……」

 魔族なんて縁の無い言葉のように思っていたけど……こんな近くに転がっていたなんて。
 心には疑問ばっかりが残って、何一つ解決してくれない。
 でも、確実に何かが変わり始めている――そんな気がする。

 ◇◇◇

「はぁ……」

 先生に呼ばれたせいで帰るのが遅くなってしまった。
 カレンを待たせているだろうし、お腹も空いたし早く帰りたい。

 俺2年4組、自分の教室へと歩みを進める。
 もう既に時間がかなり立ったせいか、廊下を歩く生徒もまちまちだ。
 教室もほとんど人はいないだろうな。

「―――――よ」
「だか――――――」

 話し声が聞こえてくる。
 俺の教室からだ。

 時刻はすでに夕方。
 綺麗な夕焼けがオレンジ色の光を、廊下の窓から射し込んでいる。
 このシチュエーション、もしかして……

 告白か!?

 俺は中を探るためドアの隙間から覗き見ることにした。

「なんでバカベルに構うんだ!」
「別に私の勝手でしょ」

 声の主はカインとオリヴィアさん。
 どうやら俺のことで口論してるみたいだ。
 ……一瞬でも告白と思った俺が恥ずかしい。

「あんな奴のどこがいいんだよ!」
「あなたなんかよりは何倍もましよ」
「嘘だ! 俺の方があいつよりも何倍もイケているだろ!」
「少し前に告白して振られたのに関わらず、こうして無理矢理詰め寄って来る男のどこがイケてるの?」

 なんかやばいことになりそうな気がして来た。
 カインは煽られてかなり怒っているし、オリヴィアさんの言い方もかなりきつい。

 そして、その読みは間違いじゃなかった――

「っ! なんだと!!」

 カインが腕輪を鳴らしながらオリヴィアさんの腕を掴む。

「やめてよ!」
「悪いのはおま……」

 ガラッ――――

「カイン、その手を放せ」

 俺は扉を開けた。

「あぁ!? バカベル、いつからそこにいたんだよ」
「その手を放せって言ってるんだ!」

 久しぶりに大声を出した。

「てめぇ……最下位の癖に俺に口答えするとはいい度胸だな」

 カインはオリヴィアさんの手を放しこちらに向き直る。

「最下位の俺でも女の子に迫ったりはしないけどな」

「……ッ!? くっそ……ッ調子に乗るなよ、バカベルがァ!」

 カインは腰から小さな杖を取り出す。
 俺はそれに反応して前に駆け出した。

 本当に俺のスキルが正しいか分からない。
 もし間違っていたらどうする――

 まぁいい……考えるのは後だ。
 今はただ目の前の目標を倒すだけだ!

「『石弾ストーンバレット』!!」

 カインの杖の先から石のつぶてが飛んで来る。
 だが――

「なにっ!? 避けただと!?」

 見える!
 これが俺のスキル、『遅緩時間スローモーション』!
 今の俺なら高速で放たれる石のつぶてさえ余裕だ!

 そして驚くカインを睨み、俺はそのまま前に足を踏み出す。

「バカベル如きが!!」

 カインは体勢を整え、もう一度杖を向けてくる。
 だが遅い!

 ――ボゴッ!!

 杖から魔術が放たれる前に、俺はカインの顔面を殴った。

「うっぐわあぁ!」

 カインは顔面に強力な一撃を受け、後方に吹き飛ぶ。
 そして机に頭を打ちながら床に倒れた。

「俺はバカベルじゃない。……アベル・マミヤだ」

 カインは動かない。
 結構強く頭を打ってたけど、気絶したのか?
 血は出てないから大丈夫そうだけど……。
 ……今のうちに帰ってしまうか、起きたら怖いし。

 俺は自分の席へと向かい、鞄を背負った。

「あ、アベル君……っ!」

 窓から射し込む夕日が、オリヴィアさんの赤い髪を更に燃え上がらせる。
 オリヴィアさんはスカートの裾をつまんで、恥ずかしそうに下を向いている。

「そ、その……ありがと。かっこよかったよ……」

 逸らした顔から感謝が伝えられる。
 何でだろう、俺の心臓の鼓動が早くなる。

「……オリヴィアさんも早く帰った方がいいよ」

 そう言い残し、俺は教室から早歩きで出ていった。

 ……ッ!!
 オリヴィアさんめちゃくちゃ可愛かったぁぁ!!
 これは助けた甲斐があったかもな。
 でも、明日二人にどんな顔して会えば……。

 赤くなる俺の顔は、夕日だけが原因じゃないはずだ。
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