魔女の喫茶店

たからだから

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―レッド・ブラットの兄妹編―

親友エミリア

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「うわー、雨降りそうな空だねえ」
 ギルは灰色の空を窓から覗くと、青空が顔を見せる事は無く重い空気と雨の匂いを感じていた。
 誘拐事件から数週間、来た依頼は犬探し。ギルは「確かに何でも屋だけど、そう言うのじゃないのよ!」と、頭を抱えながら怒っていたのを思い出し、自然と苦笑いを浮かべてしまった。

 ミアとギルの同棲生活もそれなりに順調ではある。家事はきちんと、曜日等で当番を決めている為ミアにとっては楽なもので少し助かっていた。空間魔法で寝室には絶対に、入って来れないので安心して夜も寝れる。
 この生活にミアは少し慣れつつあった。
「……また、騒がしい事件が起きてるわね」
 ミアはカウンターに座りながら手に持つ新聞紙を凝視していた。ギルが背後から覗くと大きな文字でと目立つように書いてあり、その隣には燃える森の写真が載っていた。
「確か森の奥で燃えたやつだっけ?」
 ミアは少し驚いた様にギルに顔を向ける。
「知ってるの?」
「朝テレビでやってたよ。……ミアちゃん全然起きなかったもんね。今日朝食の当番だったのに」
 ミアはギルの言葉に顔を逸らせば罰が悪そうな表情を浮かべた。

 ミアは朝がとても、弱い。故に開店時間は10時からであり、時々遅刻しそうにもなるくらいで最近は学んだのか時間になると激しい音の鳴る目覚まし時計を購入した。それでも起きれないのだから不思議だ。
「俺が部屋に入れるなら起こしてあげるんだけど?」
「それは結構です」
「え~」
 キッパリ言われてしまい残念そうにしながらも、ギルは再び新聞へと目を向けた。
 朝のテレビでは不審火と言う訳ではなく、放火されたのではないかと専門家が話していたのを思い出す。
「まあ、その火災おかしいよねえ。燃える原因なんて無い筈なのに」
 ギルの言葉にミアはもしかして、と魔術師の姿が脳裏に浮かぶものの燃やす理由が分からず考えるのを諦めた。

 立ち上がろうとした時だった、勢い良く扉が開き、激しく鈴が揺れたせいか鈴の音が煩く鳴る。
「ミアー!エミリアちゃんが遊びに来たよー!」
 元気な声で店内に入ってくる姿を見てミアは驚く。
「エミリア!?」
「あ~!会いたかったよ~!聞いてよ~!あの嫌な上司がまーた、お前はドジだ!って怒るんだよ~」
 勢い良く抱き着かれ体勢が崩れそうになるのをミアは必死にバランスを取り、抱き留めると騒がしく喋るエミリアに苦笑いを浮かべながらも、落ち着くように促す。
「ちょ……っわ!え、エミリア!落ち着いてってば、何しに来たの!」
「ああ、そうそう!ミアってば弟子出来たんでしょ?あ、もしかしてこの人……って!ええ!?ギルくんじゃん!」
 相変わらず騒がしいエミリアにミアは深い溜息を吐き出しつつ、知っている様子に驚きエミリアとギルの顔を交互に見つめた。

「え?知り合い?」
「知り合いも何も、オキザリスじゃ大人気のモテ男のギル・ベックフォードだよ!?え、何?知らなかったの?」
「……何となく、顔覚えてるなってくらい」
「何それー!?こんなちょー!いい男なのに!」
「ほんとだよねえ~。俺ショックだよ」
「ね~!」
 顔を見合わせる2人にミアは再び深い溜息を吐き出し、頭が痛くなる様な思いだった。





 ――――
 ―――――――




「で?いきなり何の用なの?」
 ミアはコーヒーカップをテーブルに不満そうな顔で置くと、楽しそうに笑うエミリアを見つめた。
「んー、相変わらず美味しいコーヒー。何って、弟子はどんな子かなあ?って見に来たの。いや~、まさかギルくんだなんてビックリだよ!」
 楽しそうに話すエミリアを見て、流石情報が早いと困った様に笑う。

 エミリア・ベネットはミアの学生時代からの友達であり大親友だ。入学式の時にエミリアから話し掛けられ仲良くなった。
 2人で悪戯したり、夜の学校を散歩したり、箒で飛んだりとかなり遊んだ仲で卒業した後も、未だに交流は続いている。
 エミリアは人の心が読める心眼術を物心ついた頃には習得してしまっており、コントロールが出来なかった為普段から他人の心の声が聞こえていた。現在はコントロールが出来、他人の心の声をシャットアウトする事が出来ている。

 そんな彼女は今は心眼術を活かして魔法政府の情報部に勤めており、ミアにも情報を提供している。死の使いスノードロップとミアの関係は当時から知っており、力になりたいとわざわざ情報部に勤めたのだ。
 ミアはそんな事情は全く知らず、魔法政府に就職した事を報告したら驚きと共に自分の事の様に喜んだ。
「言っておくけど、ギルは弟子じゃなくて従業員!……もう、いきなり来るんだから驚くでしょ?」
「こんなカッコイイ店員さんならあたし、惚れちゃうなあ~。……だってあんまり関わってると、上が嫌な顔されちゃうし。あの頑固ジジイ!」
「まあ、しょうがないわよ。……魔法政府からしたら私の立場って微妙だし」
 エミリアの言葉にミアは小さく笑う。
 死の使いスノードロップによって一族を消され、ミアだけが生き残った。政府の中には死の使いスノードロップに加担しているのではないか、と噂されていた。
 才能ある魔法使い故に、政府の大きな味方になると同時に脅威でもあるのだ。

「あ、そう言えばギルくんとはあんまり話してなかったよね?あたしは、エミリア・ベネット。ミアの大親友よ!」
「エミリアちゃん、ね。よろしく」
 優しく微笑むギルにエミリアは惚れ惚れしてしまいながらも、何故弟子になったのだろうかと気になるところではあった。
 ミアは弟子を募集はしておらず、従業員すら募集するつもりは無かったのだ。何故かと問われれば、死の使いに情報を流したくないからである。だからこそ、ミアが何故彼を弟子にしたかも気になっていた。
 ギルには申し訳無いがエミリアはギルを信用はしていない。理由を聴こうとシャットアウトを外す。
「……え?」
「何どうしたの?」
「ん?俺の顔に何か付いてる?」
 エミリアは思わず声を上げてしまい慌てて笑顔を作って誤魔化す。
「な、なんでもないよ!あ、えっと、そうだ!本当の目的は弟子くんじゃないの!」
 ミアは不思議そうに此方を見てくるが、横目でギルを見るとただ、小さく笑っているだけだった。

「で、本当の目的って何?」
「あー、……何から言えばいいんだろ。えっと、この前の誘拐事件は覚えてる?」
「勿論、依頼されたからね。誘拐事件がどうしたの?」
「不老不死の魔法薬を作ってたって報告が上がって来たら、上が顔色を変えて調査し始めたの。元々作るのは禁止、って決まってるけどどうやらそれだけじゃないみたいでね……。」
 先程の笑顔が嘘の様に消え、真面目な表現で話し出すエミリアにミアも真剣に話を聞く。

「情報を集めて分かった事があってね、闇の魔術師達はまず、子供の血が必要だって集めてたんだけど必要なのは子供の血だけじゃなかったの。だから、不老不死の魔法薬を作れなかった」
「必要なもの?子供の血以外にも、って事?」
「そう、不老不死の魔法薬を作る上で1番大事な材料があるの。……稀血レッド・ブラットが必要なの」
稀血レッド・ブラット?」
 ミアは不思議そうに首を傾げた。初めて聞いた名前に必死に知識を絞るものの、ミアには分からなかった。

稀血レッド・ブラットはとっても、珍しい血と言うよりこの世に1人しか持っていない血なの。……魔法界の英雄の話は覚えてる?」
 ミアは英雄と言う言葉に思い出し、頷く。

 大昔、魔法使いと魔術師はノーマジを巻き込んだ戦争を引き起こしてしまった。沢山の命が消え、ノーマジは恐怖のどん底へと落とされた痛ましい戦争。
 しかし、その戦争を終わらせた英雄居た。その者は魔法使いで、とても優れた才能を持つ魔法使いでとても、優しい魔法使いでもあった。
 沢山の命が消える事を悲しんだ魔法使いは戦い、戦争を終わらせその後は全人種が平和に暮らせるよう、魔法政府を作った。
 ノーマジの様に政府を作り、警察を作り、ルールを作った。そうして秩序を守る事で平和な世界にしようと、様々な知恵と交流を増やし現在の魔法界が出来上がっている。

 戦争が続いていればどちらかの種族は消え去っていただろう、と語り継がれる伝説でもある。

「その英雄が戦う時に英雄の命を助けた血が、稀血レッド・ブラットなの。再び英雄が現れる日まで、その血を受け継がせていく事にした稀血レッド・ブラットの一族が、不老不死の魔法薬に必要なのよ。……どんな病気や怪我でも治す事が出来、1回だけ心臓が止まっても生き返らせる事が出来る奇跡の血。それが稀血レッド・ブラット

 エミリアはミアの顔を真剣に見つめていたが、横目でテーブルの上に置いてある新聞を見た。
「……闇の魔術師達が探してるのよ、稀血レッド・ブラットを」
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