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第1章 こんなはずでは・・
1プロポーズ
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「リサ、君は僕のことをどう思っている?」
セントクリストファー王国の皇太子殿下アルベルトはとても真剣な顔で婚約者の私に向かって言った。
「どう・・とおっしゃられても・・・その・・とても、イケメンで、背が高くて、優しい方だなあ・・と」
私と皇太子殿下はソファに二人並んで座っているのだが、この至近距離では、私の胸は未だにときめきが隠せない。それほど殿下は美しい・・。私はため息を漏らしながら、殿下の方を見ていた。しかし、殿下は私と目を合わさないようにして、うつむき加減で言った。
「そのように、褒められるのは嬉しいことだが・・・いや、他に、その・・僕がシャノンとそっくりの君を僕の婚約者に選んだことに対して・・。やはり・・そういう僕のことを怒っているか?」
私が、殿下のそういった事情について知ったのは、つい前のことだった。
「ああ・・そのことに関してですね・・。それは、ショックじゃなかった・・といえば嘘になります。けれど、怒っているか?と言われれば、そうでもありません。だって、シャノンとそっくりだったからこそ、私はアルベルト皇太子殿下に出会え、こうして婚約者として殿下とこうしていられるのですから・・・。私にとって、シャノンとそっくりに生まれてきたことは、天から与えられたとびきりの幸運だと思っています」
思いがけず自分の気持ちがスラスラと口から出てきたことに、自分ながら驚いてしまう。これもシャノンと出会い、シャノンの生き方を知ったことによる進歩かもしれないと思う。
―――――――――――――――
シャノンというのは身体はほっそりとした黒猫で、ほぼ二等辺三角形に見える耳をピンとたてている。
マリンブルーの目が妙に神秘的で、少し斜にポーズを取ると妙に艶めかしい。
シャノンはいつもスラリとしたしっぽを上手にカールさせて、気品を漂わせながらシャンと背筋を伸ばして座っている。
残念ながら今のところ私以外の人にはその姿は見えないし、声も聞こえないようだ。シャノン曰く、彼女は猫型の妖精というものらしい。妖精というものが、何なのか、まだ今ひとつ分からないのであるが、ツヤツヤの毛並みがハンパじゃなく柔らかく気持ちがよくて、私にはなくてはならない癒しのモフモフ・・であることには間違いない。ただ、その優雅な見かけによらず、性格は男前で、口は悪く、とても生意気である。
念のために言っておくが、私がそっくりなのは、その可愛い黒猫というのではもちろんない。シャノンが転生する前の女性に私はそっくりなのだそうだ。彼女はアルベルト皇太子殿下の親友で、隣国のサルーン王国のアルベルト皇太子殿下の婚約者の第一候補だった。だったというのは、その彼女が事故で亡くなってしまったからである。その彼女が転生して、猫型の妖精シャノンとなっているのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「そうか、そのように考えてくれているのだね。ありがとう。僕こそ、君という人に出会えた幸運に感謝せずにはいられない」
殿下は私をまっすぐに見つめていた。
「そんな、アルベルト皇太子殿下、そのようなお言葉はもったいないです」
「リサ・・遠慮はいらないよ。二人でいる時はアルと呼んでくれ」
「え?よろしいのですか?」
「もちろんだよ。リサ、愛している」
愛しているの言葉が耳の中でリフレインする・・私の顔は熱く火照っていた。。
「リサ、正式に君にプロポーズする。私の妻になってほしい」
「・・・・・」
ぷ、ぷ、プロ、プロポーズ?つ、つ、妻!!私の心臓が急に大太鼓を叩くように響き始めた。今までも一応婚約者ということだったけど、そんな風にちゃんと言われたことがなかったから・・
「どうだろうか・・」
アルベルトは少し不安そうな顔で私を見ている・・深呼吸、深呼吸・・酸素を脳に入れなければ・・。選択は一択、YES・・、そうYESしかない・・。落ち着け、私。
ふう。
私はおもむろに床に正座した。アルベルトは何が起こるのかと、キョトンとしていたが、私は三つ指をつき、アルベルトの方をしっかり見てから言った。
「はい。ふつつかものですが、よろしくおねがいします」
「どうしたというのだ?」
「これは、あなたの妻になりますとお返事するときの、私の住んでいた世界の伝統的なやり方なんです。私、一度やってみたくて・・」
と言いながら、私は照れ笑いをした。
「ありがとう。僕はとても嬉しく感じた」
アルベルトはそう言うと、私を優しく抱きしめた。私はアルベルトの温かい胸の中で頭の中がじ~んとして身体が熱くなるのを感じていた。そして、この幸せが、これからもずっと、ずっと永遠に続くと思っていた。
セントクリストファー王国の皇太子殿下アルベルトはとても真剣な顔で婚約者の私に向かって言った。
「どう・・とおっしゃられても・・・その・・とても、イケメンで、背が高くて、優しい方だなあ・・と」
私と皇太子殿下はソファに二人並んで座っているのだが、この至近距離では、私の胸は未だにときめきが隠せない。それほど殿下は美しい・・。私はため息を漏らしながら、殿下の方を見ていた。しかし、殿下は私と目を合わさないようにして、うつむき加減で言った。
「そのように、褒められるのは嬉しいことだが・・・いや、他に、その・・僕がシャノンとそっくりの君を僕の婚約者に選んだことに対して・・。やはり・・そういう僕のことを怒っているか?」
私が、殿下のそういった事情について知ったのは、つい前のことだった。
「ああ・・そのことに関してですね・・。それは、ショックじゃなかった・・といえば嘘になります。けれど、怒っているか?と言われれば、そうでもありません。だって、シャノンとそっくりだったからこそ、私はアルベルト皇太子殿下に出会え、こうして婚約者として殿下とこうしていられるのですから・・・。私にとって、シャノンとそっくりに生まれてきたことは、天から与えられたとびきりの幸運だと思っています」
思いがけず自分の気持ちがスラスラと口から出てきたことに、自分ながら驚いてしまう。これもシャノンと出会い、シャノンの生き方を知ったことによる進歩かもしれないと思う。
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シャノンというのは身体はほっそりとした黒猫で、ほぼ二等辺三角形に見える耳をピンとたてている。
マリンブルーの目が妙に神秘的で、少し斜にポーズを取ると妙に艶めかしい。
シャノンはいつもスラリとしたしっぽを上手にカールさせて、気品を漂わせながらシャンと背筋を伸ばして座っている。
残念ながら今のところ私以外の人にはその姿は見えないし、声も聞こえないようだ。シャノン曰く、彼女は猫型の妖精というものらしい。妖精というものが、何なのか、まだ今ひとつ分からないのであるが、ツヤツヤの毛並みがハンパじゃなく柔らかく気持ちがよくて、私にはなくてはならない癒しのモフモフ・・であることには間違いない。ただ、その優雅な見かけによらず、性格は男前で、口は悪く、とても生意気である。
念のために言っておくが、私がそっくりなのは、その可愛い黒猫というのではもちろんない。シャノンが転生する前の女性に私はそっくりなのだそうだ。彼女はアルベルト皇太子殿下の親友で、隣国のサルーン王国のアルベルト皇太子殿下の婚約者の第一候補だった。だったというのは、その彼女が事故で亡くなってしまったからである。その彼女が転生して、猫型の妖精シャノンとなっているのだ。
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「そうか、そのように考えてくれているのだね。ありがとう。僕こそ、君という人に出会えた幸運に感謝せずにはいられない」
殿下は私をまっすぐに見つめていた。
「そんな、アルベルト皇太子殿下、そのようなお言葉はもったいないです」
「リサ・・遠慮はいらないよ。二人でいる時はアルと呼んでくれ」
「え?よろしいのですか?」
「もちろんだよ。リサ、愛している」
愛しているの言葉が耳の中でリフレインする・・私の顔は熱く火照っていた。。
「リサ、正式に君にプロポーズする。私の妻になってほしい」
「・・・・・」
ぷ、ぷ、プロ、プロポーズ?つ、つ、妻!!私の心臓が急に大太鼓を叩くように響き始めた。今までも一応婚約者ということだったけど、そんな風にちゃんと言われたことがなかったから・・
「どうだろうか・・」
アルベルトは少し不安そうな顔で私を見ている・・深呼吸、深呼吸・・酸素を脳に入れなければ・・。選択は一択、YES・・、そうYESしかない・・。落ち着け、私。
ふう。
私はおもむろに床に正座した。アルベルトは何が起こるのかと、キョトンとしていたが、私は三つ指をつき、アルベルトの方をしっかり見てから言った。
「はい。ふつつかものですが、よろしくおねがいします」
「どうしたというのだ?」
「これは、あなたの妻になりますとお返事するときの、私の住んでいた世界の伝統的なやり方なんです。私、一度やってみたくて・・」
と言いながら、私は照れ笑いをした。
「ありがとう。僕はとても嬉しく感じた」
アルベルトはそう言うと、私を優しく抱きしめた。私はアルベルトの温かい胸の中で頭の中がじ~んとして身体が熱くなるのを感じていた。そして、この幸せが、これからもずっと、ずっと永遠に続くと思っていた。
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