東京王

EURO TOKYO

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それも僕が?

東京王

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ダムドの首から夥しい鮮血が流れ出る。
「ダムドーーーッ!!」
感情が迸る。喉が熱くなる叫び。ダムドの背後に刀を持った男がいる事に気づいたのはその時だ。
目が血走っている。
殺される。
そう感じた。
ダムドが言っていた、シールドがあるって。破られた?いつ?何故?助けてよ。

近づこうと一歩踏み出した男の腕を何かが削いだ。下から上へ。
刀を握った右手は上空へ飛ばされていて、手を消失した腕先から血が溢れた。
ダムドの後ろに回転する人影があって、綺麗な回し蹴りが男の腹に入り、男はすっ飛んでいった。
それは小柄な女だった。
襲ってくる脅威が無くなると、急に現実味が増した。
ちょっと前に会ったばかりのダムドに、何でこんな事にという感情と突然訪れた別れに、ぐちゃぐちゃになった。
鮮血の赤が酷く残酷に見えた。
ダムドは薄く笑っていて、震える手でノートパソコンを突き出した。
それを受け取る。ダムドが微かな声で話す。
実際には、音は鳴ってないのかも知れない。
口の動きで解った。
「生きろ」










涙が溢れそうになった。
知り合ったばかりの友人の死に。
パンッ⁉︎
涙が止まった。痛い。
平手打ちを食らっていた。
ダムドの横に金髪の女が立っていた。
「泣いてる暇はない!」
ショートカットの女の目も潤んでいたのだが。
「第2秘書のハーロイーンだ。すぐに立ち去る。行くぞ」
展開が早すぎる。
見ると、先程のローリングソバット女は警戒する様子で身構えていた。仲間だ。
ダムドの言っていた近衛兵なんだろう。
腕を引かれて走り出す。
「済まない、遅くなった。もう少し早く来られたら…」
言葉が詰まった。
僕たちは走り続けた。











人気のない広場。僕たちは肩で息をした。汗が止まらない。
ハーロイーンと名乗った女性がひざまづいた。最敬礼。
「先程は失礼致しました。無礼は承知です。申し訳ございませんでした」
頭を深々と下げるので恐縮してしまう。
「いいよ。気が動転するのも解るし、僕だってどうしていいか分からなかった。正気に戻してくれてありがとう」
涙目で見上げてくる。
女性にそんな風にされると、更に恐縮してしまう。
「もういいから立ってよ」
ハーロイーンが立つのを待ってから訊いた。
「君は分かり易い性格だから、遠慮なく質問する。竹を割ったような性格だから。なるべく、答えてほしい。そして、僕にも解るように答えてほしいんだ」
ハーロイーンは、小さく何度も頷いた。
「ひとつ、僕は何者なんだい?
「東京王です!」
即答。
いや分かりやすいけど、それって一番わかりづらいかも。
「東京を守る、守護神とでも言いましょうか」
すかさず補足が入った。
「そこなんだ!」僕の疑問。
「僕がそんな立場なら、政府と連絡や連携を取らなきゃ駄目だろうし、東京都知事にだって会わなきゃならないと」
そこまで言ったところで、何も分かってないという雰囲気で、ハーロイーンは被りを降った。
「非公認ですから!」
あっけらかんと言うから、度肝を抜かれてしまった。
「そうなんだ…」











「そうなると、僕、東京王の後ろには誰がついてるの?」
「誰?」ハーロイーンは怪訝そうな顔つきだ。
「組織ですか?」
「まぁ、そう、だね」
僕に判るわけがない。
「誰もついていませんが」
またも即答です。
「ダムドさんが言っていた、地震の研究チームってあるでしょ?」
ハーロイーンは歯切れがいい。
「はい、ありますよ」
続けざま。
「それも非公認ですからね。誰が運営しているとか、どんな規模なのかとか我々秘書には関係ありませんから。と言うか、知らされる権利がない。知るべきでは無い?
まぁ、知らないんです」
そういうものなのか?
僕は一体、誰に任命されて何をさせられようとしているのか、とんと見当がつかなかった。
一拍置いて、ハーロイーンが告げた。
「ただ、ルールはあります。簡単に言えば、ゲームオーバーです。
これから、色々な事が起こるでしょう、東京にです。それを未然にクリアしなくてはなりません。王が死亡したらゲームオーバーです。当たり前ですけど。それを私たち秘書は全力でサポートし、達成に向かわせます。あとコレ大事なんですけど」
ハーロイーンの真顔が怖い。
「私達、3人の秘書が全滅してもゲームオーバーです。先に進む案内者がいなくなってしまうので」
なんて事を、サラッと言うのか。
もう1人亡くなってるんですけどね。











もう一つ気になっている事を訊いてみた。
「ダムドが言ってたんだけど、僕の前任者が地震止めるのに失敗したって。躊躇いが生まれて暗殺されたと。その辺の事何か知ってるかい?」
ハーロイーンはその事か、と表情が言っている。分かり易い女性である。
「その時はまだ、私は正式な秘書として活動してませんでした。その時の藤堂王は優しいお方で、色々な事に憂慮されてました、と聞いております。当時ダムドは第3秘書で、既に2人の秘書が亡くなっていたので後がなかったのです。時も迫ってましたし」
感慨深そうに話が続く。
「ダムドは必死でした。王さえレーザーのボタンを押してくれてさえいれば、地震は止められましたので。しかし、ボタンは押されず暗殺されてしまいました………。
ゲームオーバーです。ダムドは秘書の任を解かれ、時間をおいて新たな王が選定されて貴方様の所へ行ったのです」
「それは、いつ頃の事だい?」
「えーと、3日前です」
事態は理解できたが、事態の収拾は全く進んでない!僕の負担の重さが浸透した。沈む。









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