ガラスペンと魔法のインク

堺目 色

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不思議なインク

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 ——明日のサイちゃんとの約束、楽しみだな。

 友人であるサイちゃんとは、小学校に入学した時からの付き合いだ。興味を持つものや面白いと思えることが似ていて、一緒にいると楽しさが倍になる。この間ノラ猫が塀を渡っている時にうっかりと足を踏み外したてアワアワしている瞬間を二人だけが目撃していた。ノラ猫はギリギリ塀から落ちることはなかったけど、二人の視線に気づくとハッとして『何でもないですけど?』みたいな顔をして毛繕いを初めて、その後で去っていった。『今の見た!?』と同時に声が合わさって、吹き出した事が思い出された。サイちゃんと一緒にいると、世葉は安心する。
 目を開けて、ガラスペンにインクを浸した。そのペン先で直線を引く。
 空のような水色の線が現れた。
 サイちゃんのことを思い出したら、水色になるんだ。
 まだ確かではないけれど、このインクは世葉が考えた物を色にしてくれるのだろう。もっと試してみよう、他に何の色になるのかな?
 ガラスペンでまた描こうとした世葉の耳に玄関が開く音が聞こえてきた。

「ただいま」

 おばあちゃの声だった。世葉はすぐに部屋を出た。

「お、お、おばあちゃん!」
「なんだい? どうかしたのかい?」
「あのインクの事っ……何だけどっ!」

 突然ダッシュしたから世葉の呼吸は乱れていて、しかも頭は言いたいことがたくさんあってそのせいでスラスラと言葉が出て来なかった。

「インク……? あぁ、アレだね?」

 対照的に落ち着いているおばあちゃんの顔には、ははぁと理解したような不適な笑みが浮かんだ。

「そうだよ! ソレの事! 本当に、本当だったんだね!」
「やっっっっとわかったのかい? あのインク、幾つ色が出たんだい?」
「え? 幾つって。オレンジとグレーが混じった深緑と灰色と水色の4色だよ」
「グレーが混じった深緑、多分それはオリーブ色だね」

 おばあちゃんは、世葉が知らなかった色の名前を教えてくれる。インクの作成者が言うのだからそれが正しい色名なのだろう。

「全部で何色あるの?」
「全部でいくつかって? それは少し難しいね。ばあちゃんが使ってみた時は、もう少したくさんの色が出たよ。この短期間で4色も出せたのは上出来だけど、まだまだたくさんだよ」
「たくさんの色があるのね? うん。もっと色を出すよ。おばあちゃん、凄いね。色がたくさん出るインクなんてコスパもいいよね! だって一色ずつ買わなくてもいいし!」

 世葉は目をキラキラと輝かせながらインクを絶賛した。

「こすぱ? 何だいそれは? とにかくもっと試してごらん。4色だけじゃ、おばあちゃんも発明した甲斐がないってもんさ」
「うん、もっともっとたくさんの色を出すね。おばあちゃんが出したよりもたくさん!」

 世葉はやる気に満ちた表情でそう言う。おばあちゃんにそういうとすぐに部屋に戻り、再び机に向かった。
 もっとたくさんの色を出そう。おばあちゃんが出したのよりももっとたくさん。おばあちゃんを驚かせるくらいに。

 世葉は夢中になって、ガラスペンと紙に向かい続けた—————。
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