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番外編
自立するために6
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「学くんは、これからどうするの?」
「まずは経営の勉強と英会話をどうにかしなきゃならないからさ、父さんの知り合いに習いにアメリカに行くことになった」
「アメリカ……」
離れることが想像ついていたのに、海外という思ったよりも距離のある場所のせいで、寂しさが胸の中を駆け巡る。
「一年勉強したあとに、取引先のタイの会社に二年くらい勤めてあげてから、凱旋帰国した暁には、父さんの会社で雇ってもらうことになってる。まぁタイの会社の業績をどれだけ上昇させることができるのかが、実際のところカギになってるんだけど」
(あわせて三年、学くんと離ればなれになるんだ――)
「本音を言えば、美羽を連れて行きたい。だけどそれじゃあいつまで経っても、俺は一人前になれそうもない気がする。こうして甘えてしまうから」
切なげな顔した学くんは、私の体に縋りつくように、ぎゅっと抱きついた。
「美羽が待っていられないのなら、ここで一旦別れようと思う」
「え?」
別れるというセリフで、体が嫌な感じで強ばる。嫌だと返事をしなきゃいけないのに、それすらもできない。
「寂しい思いをさせることがわかってるし、なにかあってもすぐに駆けつけることのできない距離は、美羽に負担をかけてしまうと考えた。だけど別れたとしても」
「うん……」
「俺は美羽を必ず迎えに行く。ずっと好きだったって告白して、結婚を申し込む」
私は体の隙間をあけるために、両腕で学くんの上半身を押した。
「私が誰かと結婚していても?」
そして、ありえないことを口にしてみる。彼以外とは、結婚なんてできそうもないのに。
「それは困るな。美羽には不幸になってほしくない。だって不倫させたくないし」
「なにを言って……」
「俺は全部わかってるから。どうすれば美羽が俺になびくかって。奪う自信あるよ」
少しだけ首を傾げて私を見下ろす学くんは、いつも以上に大人びて見えた。昔のキョドってる雰囲気を一切出さず、自信満々に振る舞う様子は、宣言どおりにやってのけそうな感じだった。
「俺なら絶対に美羽を幸せにする。だから三年だけ、待つことはできない?」
「別れるって言ったり、待てと言ったり、学くんはどうしたいの?」
「美羽次第だよ。俺の気持ちはブレない、ずっと美羽を愛してる」
低い声で告げたあと、触れるだけのキスをして、すぐに顔を離す。
「美羽の不安を少しでも解消するために、冴木美羽になるっていうのも、ひとつの手だと思うけどね」
「学くん?」
学くんは私に触れていた片腕を外し、上着の内ポケットに手を入れて、綺麗に畳まれた紙片を取り出した。そしてそれを私の手に押しつける。
「はい、どうぞ」
ひょいと渡された紙片を見るために畳まれたそれを展開したら、学くんは私の体から手を放し、なぜかそっぽを向く。
「学くんっ、学くんこれコレっ!!」
「美羽、声がデカい」
「声がデカくなるに決まってるでしょ! なんなのコレ!」
それを大きく広げて、そっぽを向く学くんの目の前に突きつけた。
「なんで俺、怒られなきゃならないんだよ」
「怒ってないわよ、驚いてるの!」
「驚いた顔じゃないって、マジで目が怒ってる」
訝しげには私を見た学くんは、私が広げた婚姻届を手にした。それは学くんの書くところがすべて埋められたもので、しっかり印鑑まで押印されたものだった。
「美羽、嫌だった? 俺が夫になること」
「次々と手を替え品を替えられる、私の身にもなってよ……」
副編集長さんは学くんのことについて、決断力がついたと仰っていたけど、ここまでいくと暴走に近いものにしか思えない。すべてが性急すぎて、考えがまわらなかった。
「まずは経営の勉強と英会話をどうにかしなきゃならないからさ、父さんの知り合いに習いにアメリカに行くことになった」
「アメリカ……」
離れることが想像ついていたのに、海外という思ったよりも距離のある場所のせいで、寂しさが胸の中を駆け巡る。
「一年勉強したあとに、取引先のタイの会社に二年くらい勤めてあげてから、凱旋帰国した暁には、父さんの会社で雇ってもらうことになってる。まぁタイの会社の業績をどれだけ上昇させることができるのかが、実際のところカギになってるんだけど」
(あわせて三年、学くんと離ればなれになるんだ――)
「本音を言えば、美羽を連れて行きたい。だけどそれじゃあいつまで経っても、俺は一人前になれそうもない気がする。こうして甘えてしまうから」
切なげな顔した学くんは、私の体に縋りつくように、ぎゅっと抱きついた。
「美羽が待っていられないのなら、ここで一旦別れようと思う」
「え?」
別れるというセリフで、体が嫌な感じで強ばる。嫌だと返事をしなきゃいけないのに、それすらもできない。
「寂しい思いをさせることがわかってるし、なにかあってもすぐに駆けつけることのできない距離は、美羽に負担をかけてしまうと考えた。だけど別れたとしても」
「うん……」
「俺は美羽を必ず迎えに行く。ずっと好きだったって告白して、結婚を申し込む」
私は体の隙間をあけるために、両腕で学くんの上半身を押した。
「私が誰かと結婚していても?」
そして、ありえないことを口にしてみる。彼以外とは、結婚なんてできそうもないのに。
「それは困るな。美羽には不幸になってほしくない。だって不倫させたくないし」
「なにを言って……」
「俺は全部わかってるから。どうすれば美羽が俺になびくかって。奪う自信あるよ」
少しだけ首を傾げて私を見下ろす学くんは、いつも以上に大人びて見えた。昔のキョドってる雰囲気を一切出さず、自信満々に振る舞う様子は、宣言どおりにやってのけそうな感じだった。
「俺なら絶対に美羽を幸せにする。だから三年だけ、待つことはできない?」
「別れるって言ったり、待てと言ったり、学くんはどうしたいの?」
「美羽次第だよ。俺の気持ちはブレない、ずっと美羽を愛してる」
低い声で告げたあと、触れるだけのキスをして、すぐに顔を離す。
「美羽の不安を少しでも解消するために、冴木美羽になるっていうのも、ひとつの手だと思うけどね」
「学くん?」
学くんは私に触れていた片腕を外し、上着の内ポケットに手を入れて、綺麗に畳まれた紙片を取り出した。そしてそれを私の手に押しつける。
「はい、どうぞ」
ひょいと渡された紙片を見るために畳まれたそれを展開したら、学くんは私の体から手を放し、なぜかそっぽを向く。
「学くんっ、学くんこれコレっ!!」
「美羽、声がデカい」
「声がデカくなるに決まってるでしょ! なんなのコレ!」
それを大きく広げて、そっぽを向く学くんの目の前に突きつけた。
「なんで俺、怒られなきゃならないんだよ」
「怒ってないわよ、驚いてるの!」
「驚いた顔じゃないって、マジで目が怒ってる」
訝しげには私を見た学くんは、私が広げた婚姻届を手にした。それは学くんの書くところがすべて埋められたもので、しっかり印鑑まで押印されたものだった。
「美羽、嫌だった? 俺が夫になること」
「次々と手を替え品を替えられる、私の身にもなってよ……」
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