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第三章 北の砦と試される信頼
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一方その頃、王都では。
「……ねぇフェリシュ、リオン様は今ごろどうしてるかな。ケガしてないといいけど」
リオン様の無事を祈りながら、夜更けの厨房で静かにカカオを練っていた。木べらの先がチョコ生地に沈むたびに、くぐもった粘つく音が響き、手に伝わるねっとりとした抵抗感が心地よい。
棚の上の銅鍋がわずかに揺れ、テンパリングされたカカオの香ばしい甘さが、あたたかい湯気とともに鼻をくすぐった。
窓の外では冷たい風が唸り、ガラスを細かく震わせる音が混ざる。遠い北の空には、鋭く光る星がひとつ瞬いていた――まるで、リオン様の剣の輝きのように。
「真琴、リオンの心配をするのですか?」
「うん。でも信じてる。《スイートセンス》は、想いを届ける力だから」
そう言いながら、不意に手を止めた。木べらの先からチョコの雫がぽたりと落ち、テーブルの木目に染み込む。その瞬間、届けたい相手の顔が浮かぶ――けれど、名前は口にしない。
信じたい人は、決めている。
そのまま、何も言わずにカカオを練り続けた。木べらの回転が速くなるにつれ、チョコの表面が滑らかに光り始め、かすかな空気の泡立つ音が耳に落ちる。
フェリシュが大きなリボンをぱたぱたと揺らし、粉砂糖が入ってる袋の上に座る。袋の紙が軽くしわくちゃになり、甘い粉の香りが軽く舞いあがる。
「真琴のスイートセンスは、“つながる力”なのです。リオンの心が、真琴の香りを求めてる限り、絶対に届くのだわぁ」
「ありがとう、フェリシュ」
お礼を言って優しく微笑むと、練っていたチョコがほのかに金色を帯びた。生地の奥から淡い光が漏れ、指先にあたたかな振動が伝わる――まるで祈りが形を取ったように。
一方その頃、王都では。
「……ねぇフェリシュ、リオン様は今ごろどうしてるかな。ケガしてないといいけど」
リオン様の無事を祈りながら、夜更けの厨房で静かにカカオを練っていた。木べらの先がチョコ生地に沈むたびに、くぐもった粘つく音が響き、手に伝わるねっとりとした抵抗感が心地よい。
棚の上の銅鍋がわずかに揺れ、テンパリングされたカカオの香ばしい甘さが、あたたかい湯気とともに鼻をくすぐった。
窓の外では冷たい風が唸り、ガラスを細かく震わせる音が混ざる。遠い北の空には、鋭く光る星がひとつ瞬いていた――まるで、リオン様の剣の輝きのように。
「真琴、リオンの心配をするのですか?」
「うん。でも信じてる。《スイートセンス》は、想いを届ける力だから」
そう言いながら、不意に手を止めた。木べらの先からチョコの雫がぽたりと落ち、テーブルの木目に染み込む。その瞬間、届けたい相手の顔が浮かぶ――けれど、名前は口にしない。
信じたい人は、決めている。
そのまま、何も言わずにカカオを練り続けた。木べらの回転が速くなるにつれ、チョコの表面が滑らかに光り始め、かすかな空気の泡立つ音が耳に落ちる。
フェリシュが大きなリボンをぱたぱたと揺らし、粉砂糖が入ってる袋の上に座る。袋の紙が軽くしわくちゃになり、甘い粉の香りが軽く舞いあがる。
「真琴のスイートセンスは、“つながる力”なのです。リオンの心が、真琴の香りを求めてる限り、絶対に届くのだわぁ」
「ありがとう、フェリシュ」
お礼を言って優しく微笑むと、練っていたチョコがほのかに金色を帯びた。生地の奥から淡い光が漏れ、指先にあたたかな振動が伝わる――まるで祈りが形を取ったように。
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