27 / 49
エピローグ ―フェリシュのつぶやき―
1
しおりを挟む
夜が明け、空がうっすらと金色に染まり始めた頃。工房の窓辺に、小さな羽音がひとつ響いた。
私――精霊フェリシュは真琴の肩に降り立ち、そっと寝顔をのぞき込む。頬には淡い赤みが残っていて、唇の端にかすかな笑みの跡があった。
隣では、リオンが静かに眠っている。金色の髪が窓から差す朝日を受けてやわらかく揺れ、指先は真琴の手とやさしく絡んでいた。
「ふふ……やっと、ひとつの形になったのだわぁ」
ふたりのまわりに、金色の光がほのかに揺れる。それは《パーフェクト・スイートセンス》――互いの心が共鳴し合う波長の証。
“甘さ”はもう、ひとりだけのものではない。心と心が寄り添うことで生まれる、世界でたったひとつの香り。
私はその香りを胸いっぱいに吸い込んで、ほんの少し目を細めた。
「ねえ、真琴。あなたがこの世界に来たとき、泣きそうな顔をしていたの、ちゃんと覚えてるわよ」
あの頃の彼は誰も知らない土地で、心の奥まで冷えていた。でも今はリオンの傍で、あたたかく笑っている。
チョコの香りが、朝の風に乗って流れていく。この香りを嗅ぐたびに、人々が少しでもやさしい気持ちになれますように。
それが、私にできる小さな祈り。手のひらをひらりと掲げ、小さな光の粒をひとつ放つ。それはふたりの頭上で弧を描き、淡い光の輪となって消えた。
「どうかこの甘さが、永遠に続きますように――」
背中で結んだリボンの羽音を残して、私はまた空へと舞い上がった。
王都の朝の光が、一面に広がっていく。屋根の上から見える人々の笑顔、焼き菓子の香り、鐘の音。そのどれもが、ひとつの“幸福”に繋がっている。
ああ、本当に不思議。“甘さ”って、こんなにも世界をやさしく変えるものなのね。
だから今日も私は、大きなリボンを揺らして見守る。チョコレートと恋の香りが溶け合う――そんな世界の朝が、今日も静かに始まっていくのだから。
☆このあと、番外編がはじまります。マジメな話からリオンの想いの重さに右往左往する騎士団、ふたりの結婚式(サイトによっては挿絵を挿入してお祝いします!)など盛りだくさん用意しますので、お楽しみください。
私――精霊フェリシュは真琴の肩に降り立ち、そっと寝顔をのぞき込む。頬には淡い赤みが残っていて、唇の端にかすかな笑みの跡があった。
隣では、リオンが静かに眠っている。金色の髪が窓から差す朝日を受けてやわらかく揺れ、指先は真琴の手とやさしく絡んでいた。
「ふふ……やっと、ひとつの形になったのだわぁ」
ふたりのまわりに、金色の光がほのかに揺れる。それは《パーフェクト・スイートセンス》――互いの心が共鳴し合う波長の証。
“甘さ”はもう、ひとりだけのものではない。心と心が寄り添うことで生まれる、世界でたったひとつの香り。
私はその香りを胸いっぱいに吸い込んで、ほんの少し目を細めた。
「ねえ、真琴。あなたがこの世界に来たとき、泣きそうな顔をしていたの、ちゃんと覚えてるわよ」
あの頃の彼は誰も知らない土地で、心の奥まで冷えていた。でも今はリオンの傍で、あたたかく笑っている。
チョコの香りが、朝の風に乗って流れていく。この香りを嗅ぐたびに、人々が少しでもやさしい気持ちになれますように。
それが、私にできる小さな祈り。手のひらをひらりと掲げ、小さな光の粒をひとつ放つ。それはふたりの頭上で弧を描き、淡い光の輪となって消えた。
「どうかこの甘さが、永遠に続きますように――」
背中で結んだリボンの羽音を残して、私はまた空へと舞い上がった。
王都の朝の光が、一面に広がっていく。屋根の上から見える人々の笑顔、焼き菓子の香り、鐘の音。そのどれもが、ひとつの“幸福”に繋がっている。
ああ、本当に不思議。“甘さ”って、こんなにも世界をやさしく変えるものなのね。
だから今日も私は、大きなリボンを揺らして見守る。チョコレートと恋の香りが溶け合う――そんな世界の朝が、今日も静かに始まっていくのだから。
☆このあと、番外編がはじまります。マジメな話からリオンの想いの重さに右往左往する騎士団、ふたりの結婚式(サイトによっては挿絵を挿入してお祝いします!)など盛りだくさん用意しますので、お楽しみください。
10
あなたにおすすめの小説
村娘あがりの娼婦ですが、身請けされて幸せです
春月もも
恋愛
村を飛び出して王都に来たリリアは、いまは高級娼婦として生きている。
ここは通過点のはずだった。
誰かに選ばれて終わる物語なんて、わたしには関係ないと思っていたのに。
触れない客。
身体ではなく、わたしの話を聞きに来るだけの商人。
「君と話す時間を、金で買うのが嫌になった」
突然の身請け話。
値札のついた自分と向き合う三日間。
選ばれるのではなく選ぶと決めたとき、
通過点は終わりになる。
これは救いではなく対等な恋の話。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
君を選ぶ理由 〜花の香りと幼なじみのΩ〜
なの
BL
幼い頃から、桐生湊は桜庭凪のそばにいると、花が咲いたような香りを感じていた。
祖父同士が幼馴染という縁もあり、二人は物心つく前からいつも一緒だった。
第二性の検査で湊はα、凪はΩと判明。
祖父たちは「完璧な番」と大喜びし、将来の結婚話まで持ち上がる。
――これはαとΩだから?
――家のため?
そう疑う湊。一方、凪は「選ばれる側」としての不安を胸に、静かに距離を取ろうとする。
湊の兄・颯の存在も、二人のすれ違いを加速させる。
花の香りの奥に隠れた本当の気持ち。
役割や運命ではなく、「君だから」と選び直す、
幼馴染オメガバースBL
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
琥珀の檻
万里
BL
砂漠の王国の離宮「琥珀の間」で、王・ジャファルは、異母弟であるアザルを強引に抱き、自らの所有物であることを誇示していた。踊り子の息子として蔑まれ、日陰の存在として生きてきたアザルにとって、兄は憎悪と恐怖の対象でしかなかった。 しかし、その密事を見つめる影があった。ジャファルの息子であり、次期王位継承者のサリムである。サリムは叔父であるアザルに対し、憧憬を超えた歪な独占欲を抱いていた。 父から子へ。親子二人の狂おしい執着の視線に晒されたアザルは、砂漠の夜よりも深い愛憎の檻に囚われていく。
定時後、指先が覚えている
こさ
BL
職場で長く反目し合ってきた二人。
それでも定時後の時間だけは、少しずつ重なっていく。
触れるはずのなかった指先。
逸らさなかった視線。
何も始まっていないのに、
もう偶然とは呼べなくなった距離。
静かなオフィスでゆっくりと近づいていく、
等身大の社会人BL。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる