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闇-67
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発泡酒をちびちびと飲みながらトルガー国王の顔はにまにま…からにやにやとなり、アレックスの隣のツキヨの胸元に視線が向くようになってきたのにツキヨは気がついた。
ちらりとトルガーを見ると目が合ってしまい、にやにやと余計見られてしまい困惑する…が逃げの一手で少し手持無沙汰な様子のアリシア王妃に勇気を持って声をかけた。
王妃は30代半ばくらいで金髪の入り混じる薄茶色の髪を彩る金の王冠が眩しい。スラッとして背が高くコルセットで補正されていたとしても黒のレースを襟元に使ったドレスを着こなしている立ち姿が美しい。
「アリシア王妃陛下…は、初めまして…私はツキヨ・ドゥ・カトレアと申します。このたびは、このような盛大な舞踏会でお会いできて光栄でございます」
少し、ツンとしながらトルガーを見ていたアリシアは大人しそうなツキヨが声をかけてきたことに驚いた顔でグラスを持ち近寄って来た。
「お声をかけていただきありがとうございます。アリシア・ドゥ・ラフレシア・リリィ・エストシテでございます。主催の皇帝陛下に置かれてはお忙しい中、毎年この舞踏会にお心遣いをいただいて恙無く盛大に開催をしております。舞踏会は王妃という立場ではありますがわたくし個人的にも毎年楽しみにしています…ましてや今年は皇帝陛下とお二人でいらしていただき、僥倖にめぐりあえたと思っております」
アリシアがすっとグラスを前に出すとツキヨもチンとグラスを合わせた。
「ありがとうございます。私も舞踏会は初めてで王家の皆様にお会いできることを楽しみにしておりました。広間もとても煌びやかで…周りも美しい美術品に囲まれて思わず見とれてしまいました」
「美術品は先代王の趣味で素敵な絵画が他にもございますのでお時間がありましたらご是非、案内をさせていただきますわ。
ところで…わたくしは失礼ながらもツキヨ様のそのドレスに実は見とれてしまいまして…これは絹でお作りになられたドレスでございますか?月のように不思議なお色ですわ…」
「あ…これは…最近帝国内で開発された最新の生地でございます。絹ではないので量産ができずこれから生産体制を整えて流通予定でございます」
ツキヨが胸下のドレープ部分を少し持ち上げるとアリシアも興味深く布を見つめる。
「まぁ…そうでしたか。では、わたくしの元でドレスになるには今しばらく時間が必要な状態ですわね。…あの不躾でございますが触れてもよろしいですか?」
「はい、是非触り心地もお確かめください。きっと気に入っていただけます」
白くほっそりとした指先でツキヨの持つドレープ部分にそっと触れる…
「絹…とは確かに違いますわね…繊細で…色は染めてこの不思議な色に?」
「これは繊維そのものの色でございます。染めずに布にするだけで今夜の月のような色になります」
「素晴らしい…これは流通した暁にはわたくしも是非ドレスに仕立てて着たいと思うのが女心でございますわ。帝国ではツキヨ様のドレスのような形が一般的でいらっしゃいますの?失礼ですがコルセットは…」
「これは帝国一の仕立屋に仕立ててもらいました。ドレスの形はこれが帝国の成人女性の正装でございますので初めて着た際は大変恥ずかしかったのですが着心地は楽でございました」
ツキヨは照れ臭そうに笑う。
「いつかはこちらの布で同じようなドレスを仕立ててみたいですわ」
今までの王妃らしい表情だったが女性らしい笑みになる。
「失礼いたします…」
へらへらと国王の美辞麗句で飾り立てた意味のないの話に顔が死んでいたアレックスにレオが声をかけた。
「そろそろ、ツキヨ様と舞踏会のファーストダンスのご用意をと取次がございました」
「そうか。それではトルガー国王、一度失礼をする」
すっと立ち上がるとトルガーより頭1つ分背が高く、見目も美丈夫でもあるため立ち上がるだけで壇上に男女問わず視線が集まる。
「ツキヨ…あぁ…王妃陛下と話を?」
「はい…このドレスを気に入っていただきました」
「皇帝陛下…恐れながらツキヨ様よりこのドレスのことを伺い…ツキヨ様にも是非量産の暁にはわたくしもドレスとして着用ができたらと甘えさせていただきました」
「…うむ。時間はかかるが布ができた日には王妃に届けさせていただこう」
「まぁ!誠にありがとうございます!」
「是非、王国内で素晴らしいドレスとして着用をしてほしい」
「ありがたき幸せでございます…その際はまた皇帝陛下とツキヨ様にも舞踏会にお誘いができればと思いますので、お許しがあれば陛下とツキヨ様にお手紙をお送りさせていただき、また両国の交流になればと考えます」
【身にならない国王のつまんねぇ話より女ならではの交流を広げる王妃のほうが頼もしいじゃねぇか】
「一考しよう」
「ありがとうございます」
「陛下、ツキヨ様…そろそろ…」
「国王陛下、王妃陛下…一度失礼いたします」
ツキヨはエスコートをするアレックスの左肘を手に取り、レオの先導で壇上からダンスのためのスペースの空いた広間中央へ降りる。
レオは視線でツキヨに【がんばれー】と応援をするがそれに気がついたアレックスがこっちの壁の絵画がきれいだと言ったのかツキヨの視線が違う方向へ向いてしまった。
【大人気ない…大人ってこういうことか!!】
壇上から降りた雅やかな2人が広間の中央に立ち、お互いに手を肩や腕にかけてダンスの準備をする―――楽団の指揮者が確認をする―――とファーストダンスに踊られる定番のワルツが奏でられる。
身長差があるので少し屈むアレックスだがそんなものは苦にもならない…小声でもやっとそばで話せることのほうが重要だった。
「どうだ?少しは楽しいか?可愛いツキヨが着るドレスを褒めるやつが多くて俺は嫉妬をしているぜ」
「そ、そんな。王妃様も素晴らしいと褒めていただいて…ア、アレックス様もたくさん女性が見ていると思います」
くるくると回るとツキヨのドレスのドレープが羽のように広がり、上品なステップに花を添える。
「珍しいな…ツキヨがヤキモチか?俺はツキヨとアホな国王しか見てなかったから他の女なんて知らねぇなぁ…あぁ…ツキヨが可愛過ぎて俺は辛い。さっさと宿に帰ってツキヨを眺めていたい…もちろん…」
「わぁ!そ、それ以上はだめです!だめです!人が見てます、聞いてます!」
「んー…そうだな…首飾りはそのままで…あとは…」
「しー!!!しー!!聞こえてしまいます!」
美しい2人をうっとり眺める人はこんな話をしているとは思ってはいない。
ツキヨの細い腰に回しているアレックスの腕…の手がツキヨの少し柔らかいところをむにゅりと掴む。
「な!何をしてるんですか?!!!」
「さぁ…俺はワルツに夢中だぜ…」
優雅なワルツはどこへ行ったのか。
***
マリアンナは壇上にいる美しいドレスと宝飾品で着飾り、ゴドリバー帝国皇帝の隣にいる黒髪に黒い瞳の娘に驚愕をした。
そして、魔族の皇帝の自ら「婚約者のツキヨ・ドゥ・カトレア男爵家令嬢」と紹介された。
「まさか…」
「お、お母様…あの壇上にいるのは…ツキヨ?」
「信じられないですぅ!!」
帝国の皇帝陛下と仲睦まじく国王陛下より高い位置の壇上へ上がり豪奢な椅子に座り、王妃陛下とも談笑をしている…あれは一体誰なのか…マリアンナは脂汗が出てきた。
笑顔で上品な黄金色のドレスに身を包むツキヨにメリーアンは「あの子…あのドン臭いあのツキヨが生きていたの?!だって…お母様が…」とわなわなと震える。
ボロを纏い、庭仕事をして馬の世話をして泥だらけで役立たずのツキヨが壇上で人一倍輝いていることがミリアンには不愉快だった。
あのツキヨが今や帝国皇帝陛下の婚約者という身分で広間の人全てから注目を浴びて、光り輝いている。
「しょ…所詮、魔族の王よ。人でもないんだから。きっとあの子も魔物の力で誑かしたのよ」
「お姉様、きっとそうですわぁ!所詮は魔物同士ですわ!もしかしから魔族の王も騙しているのかもしれませんわぁ!」
「ドレスもあんなふしだらな形で最低だわ…ミリアンの言うようにふしだらなことをして魔王を騙して婚約者になったのかもしれないわ!」
どろどろとした女の嫉妬が姉妹の心を蝕む。
マリアンナも嫉妬をしつつもツキヨが皇帝の婚約者であるということに着目をして隣で優雅にグラスを傾けるウィリアムに話しかける。
「ウィリアム…あの子あんな生意気な立場になってお高く気取っているようだけど、所詮は馬番の下働き。それでも私はその継母でもあるのだから…いうなれば魔族の王の義母にもなるのよ。不愉快だけど!
でも、考えようによっては…ツキヨからいろいろと…奪えるかもしれないわね…」
脳内の算盤を弾いたあと思わずにんまりと笑う。
「さすが、私の麗しい貴婦人だ!素晴らしい計画だね」
「ツキヨに上手く近づいてまずは仲良く話をしないとねぇ…」
扇子であおぎながら上手いこと話せる機会がないかマリアンナは舞踏会の進行内容を振り返っていた。
壇上から降りた2人はワルツを優雅に踊り始めた。
***
アレックスの悪戯に困惑をしながらなんとか恥をかかずにワルツを踊り終えた。
盛大な拍手の中、周囲に一礼をすると今度は国王夫妻と王太子夫妻が降りてくるとまた拍手や歓声が上がり、進行通り三組でセカンドダンスが始まった。
ファーストダンスより明るい曲調のワルツが奏でられると三組の上品で楽しげなステップが周囲を魅了する。
年若い王太子夫妻が笑顔で楽しそうに踊る姿はつい思わずつられて笑顔になってしまう。
アレックスもツキヨもこの日のために練習をして正確なステップを踏みつつも仲睦まじい雰囲気に王太子夫妻が2人に対して思わず笑顔を送ってしまうとツキヨは恥ずかしく俯いてしまった。
「こら…ちゃんと踊れよ…踊らないとお仕置きするぜ」
「は、はい…ちゃんと踊ります…」
大衆の面前でアレックスが言う言葉に余計恥ずかしくなるもお仕置きは勘弁してほしいのでなんとか持ち直した。
舞踏会はまだ続くのかとツキヨは胃が痛くなった。
ちらりとトルガーを見ると目が合ってしまい、にやにやと余計見られてしまい困惑する…が逃げの一手で少し手持無沙汰な様子のアリシア王妃に勇気を持って声をかけた。
王妃は30代半ばくらいで金髪の入り混じる薄茶色の髪を彩る金の王冠が眩しい。スラッとして背が高くコルセットで補正されていたとしても黒のレースを襟元に使ったドレスを着こなしている立ち姿が美しい。
「アリシア王妃陛下…は、初めまして…私はツキヨ・ドゥ・カトレアと申します。このたびは、このような盛大な舞踏会でお会いできて光栄でございます」
少し、ツンとしながらトルガーを見ていたアリシアは大人しそうなツキヨが声をかけてきたことに驚いた顔でグラスを持ち近寄って来た。
「お声をかけていただきありがとうございます。アリシア・ドゥ・ラフレシア・リリィ・エストシテでございます。主催の皇帝陛下に置かれてはお忙しい中、毎年この舞踏会にお心遣いをいただいて恙無く盛大に開催をしております。舞踏会は王妃という立場ではありますがわたくし個人的にも毎年楽しみにしています…ましてや今年は皇帝陛下とお二人でいらしていただき、僥倖にめぐりあえたと思っております」
アリシアがすっとグラスを前に出すとツキヨもチンとグラスを合わせた。
「ありがとうございます。私も舞踏会は初めてで王家の皆様にお会いできることを楽しみにしておりました。広間もとても煌びやかで…周りも美しい美術品に囲まれて思わず見とれてしまいました」
「美術品は先代王の趣味で素敵な絵画が他にもございますのでお時間がありましたらご是非、案内をさせていただきますわ。
ところで…わたくしは失礼ながらもツキヨ様のそのドレスに実は見とれてしまいまして…これは絹でお作りになられたドレスでございますか?月のように不思議なお色ですわ…」
「あ…これは…最近帝国内で開発された最新の生地でございます。絹ではないので量産ができずこれから生産体制を整えて流通予定でございます」
ツキヨが胸下のドレープ部分を少し持ち上げるとアリシアも興味深く布を見つめる。
「まぁ…そうでしたか。では、わたくしの元でドレスになるには今しばらく時間が必要な状態ですわね。…あの不躾でございますが触れてもよろしいですか?」
「はい、是非触り心地もお確かめください。きっと気に入っていただけます」
白くほっそりとした指先でツキヨの持つドレープ部分にそっと触れる…
「絹…とは確かに違いますわね…繊細で…色は染めてこの不思議な色に?」
「これは繊維そのものの色でございます。染めずに布にするだけで今夜の月のような色になります」
「素晴らしい…これは流通した暁にはわたくしも是非ドレスに仕立てて着たいと思うのが女心でございますわ。帝国ではツキヨ様のドレスのような形が一般的でいらっしゃいますの?失礼ですがコルセットは…」
「これは帝国一の仕立屋に仕立ててもらいました。ドレスの形はこれが帝国の成人女性の正装でございますので初めて着た際は大変恥ずかしかったのですが着心地は楽でございました」
ツキヨは照れ臭そうに笑う。
「いつかはこちらの布で同じようなドレスを仕立ててみたいですわ」
今までの王妃らしい表情だったが女性らしい笑みになる。
「失礼いたします…」
へらへらと国王の美辞麗句で飾り立てた意味のないの話に顔が死んでいたアレックスにレオが声をかけた。
「そろそろ、ツキヨ様と舞踏会のファーストダンスのご用意をと取次がございました」
「そうか。それではトルガー国王、一度失礼をする」
すっと立ち上がるとトルガーより頭1つ分背が高く、見目も美丈夫でもあるため立ち上がるだけで壇上に男女問わず視線が集まる。
「ツキヨ…あぁ…王妃陛下と話を?」
「はい…このドレスを気に入っていただきました」
「皇帝陛下…恐れながらツキヨ様よりこのドレスのことを伺い…ツキヨ様にも是非量産の暁にはわたくしもドレスとして着用ができたらと甘えさせていただきました」
「…うむ。時間はかかるが布ができた日には王妃に届けさせていただこう」
「まぁ!誠にありがとうございます!」
「是非、王国内で素晴らしいドレスとして着用をしてほしい」
「ありがたき幸せでございます…その際はまた皇帝陛下とツキヨ様にも舞踏会にお誘いができればと思いますので、お許しがあれば陛下とツキヨ様にお手紙をお送りさせていただき、また両国の交流になればと考えます」
【身にならない国王のつまんねぇ話より女ならではの交流を広げる王妃のほうが頼もしいじゃねぇか】
「一考しよう」
「ありがとうございます」
「陛下、ツキヨ様…そろそろ…」
「国王陛下、王妃陛下…一度失礼いたします」
ツキヨはエスコートをするアレックスの左肘を手に取り、レオの先導で壇上からダンスのためのスペースの空いた広間中央へ降りる。
レオは視線でツキヨに【がんばれー】と応援をするがそれに気がついたアレックスがこっちの壁の絵画がきれいだと言ったのかツキヨの視線が違う方向へ向いてしまった。
【大人気ない…大人ってこういうことか!!】
壇上から降りた雅やかな2人が広間の中央に立ち、お互いに手を肩や腕にかけてダンスの準備をする―――楽団の指揮者が確認をする―――とファーストダンスに踊られる定番のワルツが奏でられる。
身長差があるので少し屈むアレックスだがそんなものは苦にもならない…小声でもやっとそばで話せることのほうが重要だった。
「どうだ?少しは楽しいか?可愛いツキヨが着るドレスを褒めるやつが多くて俺は嫉妬をしているぜ」
「そ、そんな。王妃様も素晴らしいと褒めていただいて…ア、アレックス様もたくさん女性が見ていると思います」
くるくると回るとツキヨのドレスのドレープが羽のように広がり、上品なステップに花を添える。
「珍しいな…ツキヨがヤキモチか?俺はツキヨとアホな国王しか見てなかったから他の女なんて知らねぇなぁ…あぁ…ツキヨが可愛過ぎて俺は辛い。さっさと宿に帰ってツキヨを眺めていたい…もちろん…」
「わぁ!そ、それ以上はだめです!だめです!人が見てます、聞いてます!」
「んー…そうだな…首飾りはそのままで…あとは…」
「しー!!!しー!!聞こえてしまいます!」
美しい2人をうっとり眺める人はこんな話をしているとは思ってはいない。
ツキヨの細い腰に回しているアレックスの腕…の手がツキヨの少し柔らかいところをむにゅりと掴む。
「な!何をしてるんですか?!!!」
「さぁ…俺はワルツに夢中だぜ…」
優雅なワルツはどこへ行ったのか。
***
マリアンナは壇上にいる美しいドレスと宝飾品で着飾り、ゴドリバー帝国皇帝の隣にいる黒髪に黒い瞳の娘に驚愕をした。
そして、魔族の皇帝の自ら「婚約者のツキヨ・ドゥ・カトレア男爵家令嬢」と紹介された。
「まさか…」
「お、お母様…あの壇上にいるのは…ツキヨ?」
「信じられないですぅ!!」
帝国の皇帝陛下と仲睦まじく国王陛下より高い位置の壇上へ上がり豪奢な椅子に座り、王妃陛下とも談笑をしている…あれは一体誰なのか…マリアンナは脂汗が出てきた。
笑顔で上品な黄金色のドレスに身を包むツキヨにメリーアンは「あの子…あのドン臭いあのツキヨが生きていたの?!だって…お母様が…」とわなわなと震える。
ボロを纏い、庭仕事をして馬の世話をして泥だらけで役立たずのツキヨが壇上で人一倍輝いていることがミリアンには不愉快だった。
あのツキヨが今や帝国皇帝陛下の婚約者という身分で広間の人全てから注目を浴びて、光り輝いている。
「しょ…所詮、魔族の王よ。人でもないんだから。きっとあの子も魔物の力で誑かしたのよ」
「お姉様、きっとそうですわぁ!所詮は魔物同士ですわ!もしかしから魔族の王も騙しているのかもしれませんわぁ!」
「ドレスもあんなふしだらな形で最低だわ…ミリアンの言うようにふしだらなことをして魔王を騙して婚約者になったのかもしれないわ!」
どろどろとした女の嫉妬が姉妹の心を蝕む。
マリアンナも嫉妬をしつつもツキヨが皇帝の婚約者であるということに着目をして隣で優雅にグラスを傾けるウィリアムに話しかける。
「ウィリアム…あの子あんな生意気な立場になってお高く気取っているようだけど、所詮は馬番の下働き。それでも私はその継母でもあるのだから…いうなれば魔族の王の義母にもなるのよ。不愉快だけど!
でも、考えようによっては…ツキヨからいろいろと…奪えるかもしれないわね…」
脳内の算盤を弾いたあと思わずにんまりと笑う。
「さすが、私の麗しい貴婦人だ!素晴らしい計画だね」
「ツキヨに上手く近づいてまずは仲良く話をしないとねぇ…」
扇子であおぎながら上手いこと話せる機会がないかマリアンナは舞踏会の進行内容を振り返っていた。
壇上から降りた2人はワルツを優雅に踊り始めた。
***
アレックスの悪戯に困惑をしながらなんとか恥をかかずにワルツを踊り終えた。
盛大な拍手の中、周囲に一礼をすると今度は国王夫妻と王太子夫妻が降りてくるとまた拍手や歓声が上がり、進行通り三組でセカンドダンスが始まった。
ファーストダンスより明るい曲調のワルツが奏でられると三組の上品で楽しげなステップが周囲を魅了する。
年若い王太子夫妻が笑顔で楽しそうに踊る姿はつい思わずつられて笑顔になってしまう。
アレックスもツキヨもこの日のために練習をして正確なステップを踏みつつも仲睦まじい雰囲気に王太子夫妻が2人に対して思わず笑顔を送ってしまうとツキヨは恥ずかしく俯いてしまった。
「こら…ちゃんと踊れよ…踊らないとお仕置きするぜ」
「は、はい…ちゃんと踊ります…」
大衆の面前でアレックスが言う言葉に余計恥ずかしくなるもお仕置きは勘弁してほしいのでなんとか持ち直した。
舞踏会はまだ続くのかとツキヨは胃が痛くなった。
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