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第9話 宇宙の神秘
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「とりあえずあたしは、あんたとは口聞かないから!」
俺がこの部屋がこんなになった理由を話してしばらくしてから、弥生ちゃんは無表情で机をバンと叩き、立ち上がった。
それは困る。僕の毎日の楽しみは、弥生ちゃんに挨拶して、あのぶっきらぼうな返事をしてもらうことだったのに。あ、もちろんエキゾチックショートヘア的顔つきで。
毎朝、ニヤけた顔を隠すために苦笑しているような表情にすることは苦労したが、あの顔が見られると思うと、なんということもない。
「あの、深澤さん、ちょっと待って!」
「待たない!申し訳ないけど、あたし、あんたのことずっと前から嫌いだったの」
そのまま怒ったように、ずんずんと歩いて部屋を出ていってしまった。
嫌い、という言葉が頭の中でループする。
肩をガックリ落としていると、金之助さんが俺の背中をぽんと叩いた。
「少年よ、大義であった。ただ、俺もこの部屋はかなり気持ち悪いと思う」
「まさか見つかるとは思ってなかったんです」
「まぁいいさ。だが、同じ屋根の下に住んでいるんだから、ちょっとは写真減らしたらいいんじゃないかと俺は思う」
確かに、それが正しいんだろう。写真なんか撮らなくても、彼女はずっとあの表情をしている。だけど……
「ここにある写真は、学校の購買で買った行事の写真を一時間、いや、ときには三時間くらいかけて加工したものなんだ。手放すことなんてできない」
「ごめん引いた」
金之助さんは、大袈裟にゴミを見るような顔で俺を見た。前から思ってたけど、この人もそうとう変わってるよな。
今日着てるタンクトップだって、『おもしれー女』だかなんだか書いてあるし。この前は、『目が! 目がぁ!』だった。
どっちにしろ、クソダサいことには変わりない。
「ていうか、そんな可愛いかね。あの顔」
「あれは、宇宙の神秘を表してるんですよ」
「少年、変わってるね」
「金之助さんに言われたくないです」
「きっと、家事分担のときには、『一緒に洗濯物洗わないで!』なんて言ってくると思うね」
「そんな思春期の娘みたいなこと」
「分からないよォ」
金之助さんはニヤつくと、ゆっくりと部屋から出ていった。
俺がこの部屋がこんなになった理由を話してしばらくしてから、弥生ちゃんは無表情で机をバンと叩き、立ち上がった。
それは困る。僕の毎日の楽しみは、弥生ちゃんに挨拶して、あのぶっきらぼうな返事をしてもらうことだったのに。あ、もちろんエキゾチックショートヘア的顔つきで。
毎朝、ニヤけた顔を隠すために苦笑しているような表情にすることは苦労したが、あの顔が見られると思うと、なんということもない。
「あの、深澤さん、ちょっと待って!」
「待たない!申し訳ないけど、あたし、あんたのことずっと前から嫌いだったの」
そのまま怒ったように、ずんずんと歩いて部屋を出ていってしまった。
嫌い、という言葉が頭の中でループする。
肩をガックリ落としていると、金之助さんが俺の背中をぽんと叩いた。
「少年よ、大義であった。ただ、俺もこの部屋はかなり気持ち悪いと思う」
「まさか見つかるとは思ってなかったんです」
「まぁいいさ。だが、同じ屋根の下に住んでいるんだから、ちょっとは写真減らしたらいいんじゃないかと俺は思う」
確かに、それが正しいんだろう。写真なんか撮らなくても、彼女はずっとあの表情をしている。だけど……
「ここにある写真は、学校の購買で買った行事の写真を一時間、いや、ときには三時間くらいかけて加工したものなんだ。手放すことなんてできない」
「ごめん引いた」
金之助さんは、大袈裟にゴミを見るような顔で俺を見た。前から思ってたけど、この人もそうとう変わってるよな。
今日着てるタンクトップだって、『おもしれー女』だかなんだか書いてあるし。この前は、『目が! 目がぁ!』だった。
どっちにしろ、クソダサいことには変わりない。
「ていうか、そんな可愛いかね。あの顔」
「あれは、宇宙の神秘を表してるんですよ」
「少年、変わってるね」
「金之助さんに言われたくないです」
「きっと、家事分担のときには、『一緒に洗濯物洗わないで!』なんて言ってくると思うね」
「そんな思春期の娘みたいなこと」
「分からないよォ」
金之助さんはニヤつくと、ゆっくりと部屋から出ていった。
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