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おっさんとおっさんは仲良くなる。

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「乾杯!!」

 疲れた体、風呂上がり、喉が渇いた夜遅く。

 目の前には枝豆とキンキンに冷えたジョッキに入ったキンキンの生ビール。

 グビグビグビ……。

「カーーーー!!!」

 俺と大泉さんは思わず二人とも叫んでしまう。
一仕事終えたあとのこの一杯はもはや麻薬だ。
ガツンと喉に痛いぐらいの炭酸と、頭がちょっと痛くなるほどの冷たいビールを一気に入れる。

 ほろ酔いしながら塩気の聞いた枝豆を食べれば、はい、のんべぇのおっさんの完成だ。

「すみません、焼き鳥の盛り合わせください!」
「はいよ!」

 あれから俺はシルフィに明日また帰ってくると告げた。
シルフィはそのまま日本町近くで寝ていると言ったので、そのままだ。

 ビビヤンや伊集院先生とも別れたが、また会う気がするな。

 まぁそんなこんながあり、一旦帰ってお風呂に入って、今は夜9時。

 子供は寝て、おっさん達の時間。

 今の季節は夏の始まり、ビアガーデンが気持ちいい。

「いいところですね。屋上でビアガーデンですか」
「大石君、実は君と私は同い年なんだ、敬語はやめようじゃないか」
「あ、そうなんだ。じゃあ敬語なしでいくか!」

 おっさん二人でビアガーデン、酒が入れば立場など消える。
 
 仲良くなるにはそれほど時間はいらなかった。

……

「ははは! 信二、君は日本の柱になれ」
「信一郎がいるなら日本は安泰だな! 特域との交流でこの国の未来は明るい!」

 俺達はなぜか下の名前で呼ぶ関係にまで発展していた。

 お互いなぜか好きなロボットアニメの話で盛り上がった当たりだろうか、この年代のおっさんはロボットが好きなのだ。

 流行りの歌でまた再熱したな、なんて笑い合う。

 信一郎の懐に入るコミュ力なのか、一応商社で営業職をやっていた俺の親しみやすいと言われた性格なのかは知らないが。

「しかし、娘さんのために異世界配信者になるとは……だからかもしれないな。信二にその加護が与えられたのは」
「さぁな、でも最大限に使わせてもらう」

 すると信一郎が赤く火照った顔で俺を真っすぐとみる。

「そこでだ……君に頼みたいことがある」
「……一応聞く。でも優先順位は万能の霊薬を探すことだぞ?」

「ふふ、わかっているとも。君にエルフの森へと外交を頼みたい」
「エルフか……確かにいるらしいけど……」

 他の配信者の動画でエルフがいるという話は聞いたことがある。
しかし実態はみたことはないのだが、ほんとにいるのだろうか。

「いや、いる。しかしな……超が付くほどの排他的な種族だ。近づこうものなら即座に魔法の弓で攻撃してくる。今まで何人か挑んだが話も聞いてもらえず死んだ。そもそも言語が通じないがな。なのでアナザーでは危険区域として立ち入りを禁じている」
「そんなとこに行きたくないんだが……」
「ははは、そりゃそうだ。だが信二が求めているものがあるとしたら?」
「――!? まさか万能の霊薬か?」

 そういうと信一郎は、鞄からタブレットを取り出した。

「これは国秘だ。だが信二には見せておこう」
「いいのか?」
「ふふ、信頼の証。あとは先行投資と言った奴だな」

 そして信一郎が出したのは地図?

「これはアナザーの世界で今判明している部分を表した地図だ。簡易的だがね。ここが日本町、つまりゲートで最初に行く場所だ」

 地図の中心には日本町。

 そしてその周りはただひたすらと森?

「森ばっかりだな……あとこれあのバカデカい木、世界樹か」

「そう、今我々がいる場所は森の中の一部の開けた場所、我々はこれをエルフの大森林と呼んでいる。調査した結果だが、おそらくはここは誰のものでもない」

「エルフの森なのに?」

「エルフが生息しているというだけだな。そしてここ。西の帝国。エルフの大森林の左だな。ここに人間の国がある。まぁ人間はあの村のようにどこにでも小さな集落を作っているようだが」

「ちゃんと人間の文明もあるんだな」

「だが、文明レベルは良くて中世。貴族制が存在し、まぁ正直交流はうまくいってない。大森林の右は海が広がっている。この世界の全体像は今だ分からないが、つまり大森林は帝国に蓋をされる形ということだな」

 俺は再度地図を見る。

 俺達がいる場所はエルフの大森林、そしてその右が海で左が帝国。
その先に何があるかまでは距離がありすぎてわからないとのこと、あと帝国が通してくれない。

「だからな、まず我々はエルフと友好的な関係を結ばなくてはならない。日本町がある場所はエルフの領土でもあるが、森ではないので彼ら敵にはどうでもいい場所ということで放置されている。しかし、彼らと友好関係を結ばなくてはな。お隣さん同士仲良くしたいだろ?」

「そりゃそうだな、で。万能の霊薬は?」

「霊薬といえばエルフだろ?」

「はぁ、根拠なしか。なんか良い様に使われている気がするな」

「しかし手掛かりがないのも事実だろ? ということで、頼む。護衛としてビビヤンを経費で雇おう。仲がよさそうだしな」

「はぁ……まぁその通りだな。適当に探して見つかるようなもんじゃないし」

 その日俺と信一郎は飲み明かした。
お互い腹を割って話すには十分な量のお酒を飲んで。

 そして翌日。

「シルフィ! 約束のケーキ買ってきたぞ」

 ゲートを通ってシルフィが寝ているであろうアナザー自衛隊駐屯地へ向かってみる。
すると、自衛隊の人だかりができているので、俺はかき分けるように中に入る。

「……? この銀色の幼女は?」

「いや、それがさっぱり……」

 シルフィが眠っていた場所、そこには。

『むにゃむにゃ……あ、おはよう。シンジ』

 銀色の髪の美しい幼女が眠っていた。
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