仕事猫ニャゴロー

どてかぼちゃ

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第150話 吾輩は職務放棄などしてないのである③

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 毛もそこそこ伸び、漸くハチワレカラーがクッキリとしてきた我輩。
 それでも寒さには勝てず、まだまだ着ぐるみが手放せない毎日。

 「あら猫ちゃん! 家のニャちゃんと同じね! ウフフ」

 病院のミセスにはすっかりお世話となっている我輩。
 いつかお返しをせねばとシミジミ思う。
 ゴミ虫には違う意味でのお返しをせねばなるまいがな。

 さてと、いつまでも仕事をサボる訳にもいかない。
 今日も商店街へ営業に行くとするか。

 「明日もちゃーんと家へ寄るのよ猫ちゃん。じゃあ行ってらっしゃいねー!」

 ミセスは最近我輩の行動を先読みするようになった。
 そんなに行動パターンが単純なのだろうか?
 だからといって別に危害を加える訳では無いから良しとしよう。
 
 そして病院を出た我輩。
 真っすぐ魚屋へ足を運ぶ。


 「らっしぁーらっしゃあぁぃっ!」

 威勢のいい掛け声で客を必死で呼び込む魚屋の主人。
 コイツは脳みそが空っぽなのか?
 真昼間から買い物に来る人間などそうそういないだろう?
 ここで体力全開の大声を張り上げてどうする?

 「らっしゃあぁぁーーうがっ……ゴホッゴホッ!」

 ほら見た事か!
 喉がパーになってしまったのと違うか?
 一番客入りの多い夕方にはもうその喉も役に立たないだろう。
 
 仕方がない、我輩が一肌脱いでやるとするか。
 だからと言ってこの着ぐるみは脱がないけどな!

 店の前で丸くなる我輩。
 知らないうちに夢うつつ。
 そして……眠ってしまった。


 どれほど時間が過ぎたのだろう。
 背中にかかる心地の良い重みで目覚める。

 「やだー! 何この猫カワイー! これ魚屋さんの猫ちゃん!?」

 「いやぁ。知らない猫でさぁ。服を着てるって事はきっとどこかの飼い猫じゃないんですかねぇ? はじめはウチの魚を狙っていると思ってビクビクしていたけど、どうやらそうでないらしいんでさぁね。何が目的なんだろ?」

 「イヤ~ン! 超ラブリーッ!」

 気付くと周りには人だかりが!
 次々と我輩を撫でまくる通りすがりの人や買い物途中の奥様達。
 タマ駅長ならぬニャゴローフィッシャーマンズワーフ代表ってとこか?

 そして魚屋は大繁盛!
 この仕事っぷりに我輩も大満足!
 
 ― 数十分後 ―

 どうやら波は去った模様。
 客足が緩むと我輩も帰宅の為に腰を上げた。
 ここで魚屋の主人が我輩の前へ。

 「よー、今日はお前のおかげで大繁盛だぜ! これはお礼だ。今が旬のサバの刺し身だ。高級なんだぜ? だから今すぐ食べな。時間が経つと痛むかもしれないしな」

 鯖?
 かすれ声で何を喋っているか分からない。
 これが鯖という魚の身で、食べていけと言っているのはなんとなーく理解。
 言われた通り刺し身へと口を近づけると……

 「ニギャッ!」

 「あっ! テメーコノヤローっ!」

 一瞬で分からなかったが、何者かに刺し身を皿ごと全部奪われた!
 たしか猫だったような?

 「あのヤロー……シャムネコみたいなガラだったな? 今のお前みたいだけど、もう少し汚かった。今度捕まえて酷い目に合わせてやる!」

 先程の刺し身はもうないようで、違うモノを数切れ頂いた。
 我輩にはどれも同じようなモノだけどな。
 今晩はこれで一杯やるとするか。


 次の日、公園で腹を下してヨレヨレの猫が複数発見される事となる。
 特にニャン太郎が激しい腹痛を訴え、死ぬ一歩手前だったそうな。
 この時野良猫仲間の間でまことしやかに囁かれた言葉、それは……

 〝生の鯖には近づくな〟
 
 他猫の身を以て危険な魚もいるもんだなと学習したニャゴローだったとさ。
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