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9 みんなでファミレスに行った
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ファミレスは正月とあって、親子連れや学生の集団で混みあっていた。
結局、大人数になったため、俺たちは3つのテーブルに分かれた。
俺と澪と健斗は、みんなのテーブルと少し離れた場所にあるテーブルに座った。混んでいて、そこしか空いてなかったためだ。
澪と澪の友達の支払いは俺がするから、好きなものを頼んでいい、と澪に言うと、澪がみんなに伝えに行って、キャーと歓声が上がった。
澪にはいつも世話になっているし、澪の友達には澪が世話になっているからな。
戻ってきた澪は、さっきから健斗と話し込んでいる。
「へー、じゃあ、澪ちゃんは志望校に受かったら、寮に入るんだ?」
「うん。それが親から言われた東京に残る条件なの」
「落ちたらどうするの?」
お、健斗、さらっと聞くな。
「落ちたら、アメリカに行って親と同居だよ。嫌だなー。日本にいたいよう」
「そっか、エイの両親はアメリカにいるのか。エイはどうすんの?」
「どうするって?」
「今の話だと、澪ちゃん、どっちにしてもいなくなるじゃん? エイは一人暮らし?」
健斗の目が、キラリと光った。
「そうなるな」
「お兄ちゃん、一人で大丈夫かな。心配だよ」
澪が眉毛を下げて俺を見た。俺はしっかりものだから大丈夫なのに、澪はいつもこうやって俺のことを心配する。
両親も心配して、俺をアメリカに連れていきたがっているが、芸能事務所の女社長が、
「私がちゃんと監視しますから! 英君は任せてください!」と、粘ったんだ。
社長に言わせると、肩書欲しさに登録しているモデルや、売れないモデルはすごく遊びまわるらしい。だけど、売れっ子モデルは、驚くほどストイックな生活を送っているそうだ。
「薬物はもちろんのこと、喫煙や飲酒もさせません。女性関係にも目を光らせます。英君はうちの事務所期待の新人なんです。絶対に私が芸能界の天下を取らせますから!」
天下なんていらねーよ! と思ったが、東京に残るためには、社長の押しの強さは有難かった。社長は渋る両親に押し勝って、俺は無事に残れることになったんだ。
始めたばかりのモデルの仕事は楽しかったし、日本の大学に行く予定の俺が、アメリカの高校なんて嫌だった。
「澪ちゃん、大丈夫だ。エイのことは俺に任せてくれ。ところで、2年からエイはどのコースを選ぶんだ? 理系? 文系? 芸術系?」
矢継ぎ早の質問だ。なんか、健斗がさっきから面接官みたいになっているぞ。
「俺は、文系クラス希望だ。健斗は?」
「文系かー。俺は理系クラスに行くから、2年から別クラスだな。悲しい」
「健斗君、理系なの?」
「おう。父親の病院を継ぐ予定なんで、医者になんなきゃなんだ。あー、継ぐのやめようかな。俺も文系クラスに行きてー」
「いや、そんなこと言うな」
健斗は医者になるのか。外科医なんて似合いそうだな。
「えー! 健斗君のうち、もしかして山下病院なの? まさか、あの駅裏のおっきい病院?」
「たぶん、それだ」
「健斗君、金持ちの息子なんだあ」
「あー、親は金持ちかもな。息子の小遣いは少ねーけど」
澪はゲラゲラ笑った。
「うちは親が企業内弁護士だから、お兄ちゃんも弁護士を目指しているんだよ。やっぱ、息子って親に影響を受けるんだね!」
「澪! 勝手にべらべらしゃべるな!」
澪がペロッと舌を出した。
「ごめーん! 健斗君にお兄ちゃんのことを知ってもらいたいんだよお。お兄ちゃん、自分のこと、言わなさそうだし」
「澪ちゃん、そのとおりだぜ。気が利くなあ」
健斗がサムズアップした。二人とも満足気な表情だ。
「じゃあ、もうひとついいこと教えてあげる」
澪は目を光らせて、身を乗り出した。何を言う気だ?
「なになに?」
健斗も期待に溢れた顔で、身を乗り出した。
澪はちょいちょいと人差し指を振って、 “耳を貸せ” と合図する。
嫌な予感しかしない。
健斗は黙って澪の口元に耳を寄せた。
「うちのお父さん、お母さんを攫って、駆け落ちしたんだよ」
「え? 駆け落ち?」
健斗の目が丸くなった。内緒話の体だが、聞こえてるぞ!
「うちの家系の男はね、一見クールに見えて、すごく情熱的なんだあ。きっと、お兄ちゃんも……父親似だから……」
「情…熱…的…」
健斗は口を押さえて固まっている。してやったり顔の澪。澪――――!
絶対、こいつは変な妄想してるぞ!
「じゃあ、私、向こうに行ってくる!」
澪は友達のいるテーブルに走り去っていった。あいつ、なんか勘付いているな!
「女の子ってすごいな。全部バレバレじゃん」
うわー! だよな?
「やっぱ、そう思うか?」
健斗が嬉しそうに頷いた。待て、お前はどうして嬉しそうなんだ!
俺は健斗の隣の席から、妹が座っていた席に移動した。
「そっかー、俺たちの仲、妹ちゃん公認かあ。俺は親父に報告したし、ますます外堀が埋まってきたな」
「うわあ!」
俺はひっくり返りそうになった。
「エイが嫌がるだろうから、学校では内緒にする」
当り前だろー! お前は俺が嫌がらなかったら、公表するのか?
ちらっと健斗に視線を向けた。にこにこ笑顔だった。こいつなら、平気で公表しそうだな。
「エイに至近距離で見詰められたら、きつい」
照れた顔で健斗が妙なことを言い出した。
「は?」
「そんな目で見られたら、もう駄目だ。 高校男子の性欲を甘くみんなよ」
ますます妙なことを言い出したぞ。
「ええっ? せ、性欲? 俺に?」
「おうっ。でも、あの夜、親父に言われたんだ。身体が出来上がるまでは、エイ君に突っ込んだら駄目だぞって。成長途中の高校生じゃ、身体に負担がかかるらしいんだ。医者の言うことは聞かなきゃな」
お前、親子でどういう会話してるんだ? しかも、二人の間では俺が突っ込まれる方に決まってんの?
「他におじさん何か言ってた?」
「うーん。エイ君の嫌がることはしたらだめだぞ、とか? 必ず同意を得ろよ、とか? 俺、そんな強引なことしねーし」
おじさん……。
際どい話をしたからか、猛烈に性的なことを意識し始めた。健斗の顔が恥ずかしくて見られない。
俺も、健全な高校男子だ。興奮してきたかも。
「エイ。キスしたい。ダメ?」
健斗がボディバックのファスナーを開けて、歯ブラシセットを見せた。
「え?」
俺は、ごくんと唾を飲み込んだ。なんだろう、胸に渦巻く、謎の期待感。俺はおかしくなったのか?
「俺もしたくなった」
正直に言った。
「澪はしばらくここにいそうだし、今からうちに来る?」
「よし、決まりだ」
健斗は席を立った。
俺は流されやすい性格だったんだと、この時初めて知った。
結局、大人数になったため、俺たちは3つのテーブルに分かれた。
俺と澪と健斗は、みんなのテーブルと少し離れた場所にあるテーブルに座った。混んでいて、そこしか空いてなかったためだ。
澪と澪の友達の支払いは俺がするから、好きなものを頼んでいい、と澪に言うと、澪がみんなに伝えに行って、キャーと歓声が上がった。
澪にはいつも世話になっているし、澪の友達には澪が世話になっているからな。
戻ってきた澪は、さっきから健斗と話し込んでいる。
「へー、じゃあ、澪ちゃんは志望校に受かったら、寮に入るんだ?」
「うん。それが親から言われた東京に残る条件なの」
「落ちたらどうするの?」
お、健斗、さらっと聞くな。
「落ちたら、アメリカに行って親と同居だよ。嫌だなー。日本にいたいよう」
「そっか、エイの両親はアメリカにいるのか。エイはどうすんの?」
「どうするって?」
「今の話だと、澪ちゃん、どっちにしてもいなくなるじゃん? エイは一人暮らし?」
健斗の目が、キラリと光った。
「そうなるな」
「お兄ちゃん、一人で大丈夫かな。心配だよ」
澪が眉毛を下げて俺を見た。俺はしっかりものだから大丈夫なのに、澪はいつもこうやって俺のことを心配する。
両親も心配して、俺をアメリカに連れていきたがっているが、芸能事務所の女社長が、
「私がちゃんと監視しますから! 英君は任せてください!」と、粘ったんだ。
社長に言わせると、肩書欲しさに登録しているモデルや、売れないモデルはすごく遊びまわるらしい。だけど、売れっ子モデルは、驚くほどストイックな生活を送っているそうだ。
「薬物はもちろんのこと、喫煙や飲酒もさせません。女性関係にも目を光らせます。英君はうちの事務所期待の新人なんです。絶対に私が芸能界の天下を取らせますから!」
天下なんていらねーよ! と思ったが、東京に残るためには、社長の押しの強さは有難かった。社長は渋る両親に押し勝って、俺は無事に残れることになったんだ。
始めたばかりのモデルの仕事は楽しかったし、日本の大学に行く予定の俺が、アメリカの高校なんて嫌だった。
「澪ちゃん、大丈夫だ。エイのことは俺に任せてくれ。ところで、2年からエイはどのコースを選ぶんだ? 理系? 文系? 芸術系?」
矢継ぎ早の質問だ。なんか、健斗がさっきから面接官みたいになっているぞ。
「俺は、文系クラス希望だ。健斗は?」
「文系かー。俺は理系クラスに行くから、2年から別クラスだな。悲しい」
「健斗君、理系なの?」
「おう。父親の病院を継ぐ予定なんで、医者になんなきゃなんだ。あー、継ぐのやめようかな。俺も文系クラスに行きてー」
「いや、そんなこと言うな」
健斗は医者になるのか。外科医なんて似合いそうだな。
「えー! 健斗君のうち、もしかして山下病院なの? まさか、あの駅裏のおっきい病院?」
「たぶん、それだ」
「健斗君、金持ちの息子なんだあ」
「あー、親は金持ちかもな。息子の小遣いは少ねーけど」
澪はゲラゲラ笑った。
「うちは親が企業内弁護士だから、お兄ちゃんも弁護士を目指しているんだよ。やっぱ、息子って親に影響を受けるんだね!」
「澪! 勝手にべらべらしゃべるな!」
澪がペロッと舌を出した。
「ごめーん! 健斗君にお兄ちゃんのことを知ってもらいたいんだよお。お兄ちゃん、自分のこと、言わなさそうだし」
「澪ちゃん、そのとおりだぜ。気が利くなあ」
健斗がサムズアップした。二人とも満足気な表情だ。
「じゃあ、もうひとついいこと教えてあげる」
澪は目を光らせて、身を乗り出した。何を言う気だ?
「なになに?」
健斗も期待に溢れた顔で、身を乗り出した。
澪はちょいちょいと人差し指を振って、 “耳を貸せ” と合図する。
嫌な予感しかしない。
健斗は黙って澪の口元に耳を寄せた。
「うちのお父さん、お母さんを攫って、駆け落ちしたんだよ」
「え? 駆け落ち?」
健斗の目が丸くなった。内緒話の体だが、聞こえてるぞ!
「うちの家系の男はね、一見クールに見えて、すごく情熱的なんだあ。きっと、お兄ちゃんも……父親似だから……」
「情…熱…的…」
健斗は口を押さえて固まっている。してやったり顔の澪。澪――――!
絶対、こいつは変な妄想してるぞ!
「じゃあ、私、向こうに行ってくる!」
澪は友達のいるテーブルに走り去っていった。あいつ、なんか勘付いているな!
「女の子ってすごいな。全部バレバレじゃん」
うわー! だよな?
「やっぱ、そう思うか?」
健斗が嬉しそうに頷いた。待て、お前はどうして嬉しそうなんだ!
俺は健斗の隣の席から、妹が座っていた席に移動した。
「そっかー、俺たちの仲、妹ちゃん公認かあ。俺は親父に報告したし、ますます外堀が埋まってきたな」
「うわあ!」
俺はひっくり返りそうになった。
「エイが嫌がるだろうから、学校では内緒にする」
当り前だろー! お前は俺が嫌がらなかったら、公表するのか?
ちらっと健斗に視線を向けた。にこにこ笑顔だった。こいつなら、平気で公表しそうだな。
「エイに至近距離で見詰められたら、きつい」
照れた顔で健斗が妙なことを言い出した。
「は?」
「そんな目で見られたら、もう駄目だ。 高校男子の性欲を甘くみんなよ」
ますます妙なことを言い出したぞ。
「ええっ? せ、性欲? 俺に?」
「おうっ。でも、あの夜、親父に言われたんだ。身体が出来上がるまでは、エイ君に突っ込んだら駄目だぞって。成長途中の高校生じゃ、身体に負担がかかるらしいんだ。医者の言うことは聞かなきゃな」
お前、親子でどういう会話してるんだ? しかも、二人の間では俺が突っ込まれる方に決まってんの?
「他におじさん何か言ってた?」
「うーん。エイ君の嫌がることはしたらだめだぞ、とか? 必ず同意を得ろよ、とか? 俺、そんな強引なことしねーし」
おじさん……。
際どい話をしたからか、猛烈に性的なことを意識し始めた。健斗の顔が恥ずかしくて見られない。
俺も、健全な高校男子だ。興奮してきたかも。
「エイ。キスしたい。ダメ?」
健斗がボディバックのファスナーを開けて、歯ブラシセットを見せた。
「え?」
俺は、ごくんと唾を飲み込んだ。なんだろう、胸に渦巻く、謎の期待感。俺はおかしくなったのか?
「俺もしたくなった」
正直に言った。
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