【完結】ひとつのアイスを二人でかじりながら、駅前を歩きたい

ノエル

文字の大きさ
9 / 45

9 みんなでファミレスに行った

しおりを挟む
ファミレスは正月とあって、親子連れや学生の集団で混みあっていた。

結局、大人数になったため、俺たちは3つのテーブルに分かれた。
俺とみおと健斗は、みんなのテーブルと少し離れた場所にあるテーブルに座った。混んでいて、そこしか空いてなかったためだ。

澪と澪の友達の支払いは俺がするから、好きなものを頼んでいい、と澪に言うと、澪がみんなに伝えに行って、キャーと歓声が上がった。
澪にはいつも世話になっているし、澪の友達には澪が世話になっているからな。


戻ってきた澪は、さっきから健斗と話し込んでいる。

「へー、じゃあ、澪ちゃんは志望校に受かったら、寮に入るんだ?」
「うん。それが親から言われた東京に残る条件なの」
「落ちたらどうするの?」

お、健斗、さらっと聞くな。

「落ちたら、アメリカに行って親と同居だよ。嫌だなー。日本にいたいよう」
「そっか、エイの両親はアメリカにいるのか。エイはどうすんの?」
「どうするって?」
「今の話だと、澪ちゃん、どっちにしてもいなくなるじゃん? エイは一人暮らし?」

健斗の目が、キラリと光った。

「そうなるな」
「お兄ちゃん、一人で大丈夫かな。心配だよ」

澪が眉毛を下げて俺を見た。俺はしっかりものだから大丈夫なのに、澪はいつもこうやって俺のことを心配する。

両親も心配して、俺をアメリカに連れていきたがっているが、芸能事務所の女社長が、
「私がちゃんと監視しますから! 英君は任せてください!」と、粘ったんだ。

社長に言わせると、肩書欲しさに登録しているモデルや、売れないモデルはすごく遊びまわるらしい。だけど、売れっ子モデルは、驚くほどストイックな生活を送っているそうだ。

「薬物はもちろんのこと、喫煙や飲酒もさせません。女性関係にも目を光らせます。英君はうちの事務所期待の新人なんです。絶対に私が芸能界の天下を取らせますから!」

天下なんていらねーよ! と思ったが、東京に残るためには、社長の押しの強さは有難かった。社長は渋る両親に押し勝って、俺は無事に残れることになったんだ。

始めたばかりのモデルの仕事は楽しかったし、日本の大学に行く予定の俺が、アメリカの高校なんて嫌だった。


「澪ちゃん、大丈夫だ。エイのことは俺に任せてくれ。ところで、2年からエイはどのコースを選ぶんだ? 理系? 文系? 芸術系?」

矢継ぎ早の質問だ。なんか、健斗がさっきから面接官みたいになっているぞ。

「俺は、文系クラス希望だ。健斗は?」
「文系かー。俺は理系クラスに行くから、2年から別クラスだな。悲しい」
「健斗君、理系なの?」
「おう。父親の病院を継ぐ予定なんで、医者になんなきゃなんだ。あー、継ぐのやめようかな。俺も文系クラスに行きてー」
「いや、そんなこと言うな」

健斗は医者になるのか。外科医なんて似合いそうだな。

「えー! 健斗君のうち、もしかして山下病院なの? まさか、あの駅裏のおっきい病院?」
「たぶん、それだ」
「健斗君、金持ちの息子なんだあ」
「あー、親は金持ちかもな。息子の小遣いは少ねーけど」

澪はゲラゲラ笑った。

「うちは親が企業内弁護士だから、お兄ちゃんも弁護士を目指しているんだよ。やっぱ、息子って親に影響を受けるんだね!」
「澪! 勝手にべらべらしゃべるな!」

澪がペロッと舌を出した。

「ごめーん! 健斗君にお兄ちゃんのことを知ってもらいたいんだよお。お兄ちゃん、自分のこと、言わなさそうだし」
「澪ちゃん、そのとおりだぜ。気が利くなあ」

健斗がサムズアップした。二人とも満足気な表情だ。

「じゃあ、もうひとついいこと教えてあげる」

澪は目を光らせて、身を乗り出した。何を言う気だ?

「なになに?」

健斗も期待に溢れた顔で、身を乗り出した。
澪はちょいちょいと人差し指を振って、 “耳を貸せ” と合図する。

嫌な予感しかしない。
健斗は黙って澪の口元に耳を寄せた。

「うちのお父さん、お母さんを攫って、駆け落ちしたんだよ」
「え? 駆け落ち?」

健斗の目が丸くなった。内緒話の体だが、聞こえてるぞ!

「うちの家系の男はね、一見クールに見えて、すごく情熱的なんだあ。きっと、お兄ちゃんも……父親似だから……」
「情…熱…的…」

健斗は口を押さえて固まっている。してやったり顔の澪。澪――――! 
絶対、こいつは変な妄想してるぞ!

「じゃあ、私、向こうに行ってくる!」

澪は友達のいるテーブルに走り去っていった。あいつ、なんか勘付いているな!

「女の子ってすごいな。全部バレバレじゃん」

うわー! だよな?

「やっぱ、そう思うか?」

健斗が嬉しそうに頷いた。待て、お前はどうして嬉しそうなんだ!

俺は健斗の隣の席から、妹が座っていた席に移動した。

「そっかー、俺たちの仲、妹ちゃん公認かあ。俺は親父に報告したし、ますます外堀が埋まってきたな」
「うわあ!」

俺はひっくり返りそうになった。

「エイが嫌がるだろうから、学校では内緒にする」

当り前だろー! お前は俺が嫌がらなかったら、公表するのか?

ちらっと健斗に視線を向けた。にこにこ笑顔だった。こいつなら、平気で公表しそうだな。

「エイに至近距離で見詰められたら、きつい」

照れた顔で健斗が妙なことを言い出した。

「は?」
「そんな目で見られたら、もう駄目だ。 高校男子の性欲を甘くみんなよ」

ますます妙なことを言い出したぞ。

「ええっ? せ、性欲? 俺に?」
「おうっ。でも、あの夜、親父に言われたんだ。身体が出来上がるまでは、エイ君に突っ込んだら駄目だぞって。成長途中の高校生じゃ、身体に負担がかかるらしいんだ。医者の言うことは聞かなきゃな」

お前、親子でどういう会話してるんだ? しかも、二人の間では俺が突っ込まれる方に決まってんの?

「他におじさん何か言ってた?」
「うーん。エイ君の嫌がることはしたらだめだぞ、とか? 必ず同意を得ろよ、とか? 俺、そんな強引なことしねーし」

おじさん……。

際どい話をしたからか、猛烈に性的なことを意識し始めた。健斗の顔が恥ずかしくて見られない。
俺も、健全な高校男子だ。興奮してきたかも。

「エイ。キスしたい。ダメ?」

健斗がボディバックのファスナーを開けて、歯ブラシセットを見せた。

「え?」

俺は、ごくんと唾を飲み込んだ。なんだろう、胸に渦巻く、謎の期待感。俺はおかしくなったのか?

「俺もしたくなった」

正直に言った。

「澪はしばらくここにいそうだし、今からうちに来る?」
「よし、決まりだ」

健斗は席を立った。

俺は流されやすい性格だったんだと、この時初めて知った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。

夏笆(なつは)
BL
 公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。  ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。  そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。  初めての発情期を迎えようかという年齢になった。  これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。  しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。  男性しか存在しない、オメガバースの世界です。     改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。 ※蔑視する内容を含みます。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

処理中です...