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8章

440.ラーメン

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ようやく夕方になるとミヅキが用意していたどんぶりを取り出す。

「じゃあまずこの醤油ダレと味噌ダレのどっちか選んでもらってどんぶりに入れるでしょ。そしたらこの煮込んだスープを濾しながらおたま一杯入れてね」

ミヅキがどんぶりに醤油ダレを垂らしてスープを流し入れる。

「そしたら茹でた中華麺を入れてチャーシューとメンマ、半分に切ったゆで卵を乗せて完成!醤油ラーメンです!」

「もう美味そうだ!そのチャーシューってのをもっと入れてくれ!」

ベイカーがチャーシューを指さす。

【ミヅキ!俺もだ!チャーシューで麺を隠してくれ!】

シルバがヨダレを垂らしながらお願いする。

【はいはい!ちょっと待ってね】

テリーさんに麺を茹でてもらい、ライラ達に順番にタレとスープ、具を乗せるのを手伝ってもらうとどんどんラーメンを作っていく。

「味噌の方には大豆で作ったモヤシを茹でたのとコーンとチャーシューを乗せて…味噌ラーメン!」

「ミヅキ!そっちも食べるぞ」

ベイカーが声をかけると

「ベイカーさんは醤油ラーメン食べてるでしょ」

「もう食べ終わった!」

【俺もだ!】

ベイカーとシルバが空になったどんぶりをもってくる…

「ちょっと…二人ともゆっくり食べてよ」

ミヅキは苦笑しながら二人分の味噌ラーメンを作った…

【ミヅキ!ミヅキ!さっきのチャーシュー沢山入れてくれ!】

シルバが覗き込みながらお願いをすると、

【はい、はい。どう?このくらいで】

ミヅキがドサッとチャーシューを盛ると

「シルバ!狡いぞ!ミヅキ俺もシルバと同じように頼む」

「ベイカーさんも?」

ミヅキは同じ様な大盛りを作っていると…

「な!なんだそれ!」

驚きを含んだ叫び声が聞こえる…

「あの声は…」

「アランさんだな…」

ベイカー達が振り返らないでいると

「なに無視してんだよ!」

アランがベイカーの肩をグイと掴んで振り向かせる!

「いい匂いがすると思って来てみれば…何だこの騒ぎは!俺は聞いてないぞ!」

「えー?部隊兵達のみんなに言っといたけどなぁ~」

「どういう事だ!セシル!」

アランか後ろから着いてきていたセシルに聞くと

「隊長に言ったら仕事そっちのけで行くでしょ!それに言わなくてもこうやって嗅ぎつけて来てるじゃないですか?何か問題でも?」

セシルがしれっとしていると

「こいつ…最近全然隊長として敬わなくなってきやがった…」

アランが睨みつけるがセシルは平気な顔をしてミヅキからラーメンを受け取っている。

「あっ!俺より先には食べるんじゃねぇよ!ミヅキ!俺にもこいつらと同じように肉大盛りで!」

「分かってるよ~ほらベイカーさん達と同じチャーシュー大盛りだよ」

「おお!ところで…これなんだ?」

アランが受け取ったラーメンを見ると…

「何かわからないで食べようとしてたの?」

「そりゃそうだ!ミヅキが作ったんだろ?美味いに決まってるからな」

「も、もう~アラン隊長しょうがないなぁ~」

ミヅキは顔を緩めながらアラン隊長にラーメンを説明した…



みんなにラーメンをご馳走していると

「ミヅキ、お客さんが来てるぞ」

デボットさんが客を案内してきてくれた。

「あっ!副ギル!ウィードさん」

「よう!お呼ばれに来たぜ」

「私は…テオくんにお金を…」

副ギルが居心地悪そうにしているのを見て

「副ギルもせっかくだから食べていって下さいね!」

ミヅキがウィードさんと副ギルにラーメンをさしだす。

「昨日ウィードさんが捌いてくれたオーク肉のチャーシューだよ」

「俺が捌いた肉がこうなったのか!」

ウィードはラーメンを受け取って早速チャーシューを食べてみると…

「マジか…お前プリンも作ったって聞いたぞ…本当に子供なのか?」

「ま、まさか!一人で作るわけないじゃん!ほら…テリーさん!」

ミヅキが大声でテリーさんを呼ぶと…

「なんだ?」

テリーさんが麺を茹でていた手を止めて汗を拭いながらミヅキの元にくると

「ほら、この人がここの料理作ってる人だよ」

ミヅキがテリーを紹介する。

「ど、どうも?」

テリーがクエッションマークを付けながら挨拶をする。

「へぇ~結構普通の人なんだな…いや、あんたが作る飯最高だよ!」

「俺が作る?」

テリーが顔を顰めると、ミヅキがパチパチと両目でウインクする!

ミヅキのおかしな様子に…

「ああ…気に入って貰えて嬉しいよ、あっちに違う味もあるし、チャーシュー丼もあるからよかったら食ってくれ」

「「「【チャーシュー丼!】」」」

テリーの言葉に違う人が反応する…

「あ、ああ…チャーシューを余分に作ったから作ってみたんだ…」

テリーがミヅキをチラッと見ると…嬉しそうに頷いている。

「ここは最高だな!」

ウィードはラーメンをあっという間にたいらげてベイカー達の後を追った…。

「ウィード…まったくはしゃいで、まぁ気持ちもわかるが確かに凄く美味しいです」

副ギルも嬉しそうにラーメンを食べると

「よかったらチャーシュー丼おみやげに受付のお姉さん達に持っててあげてくださいよ、きっと喜ぶんじゃないですか?」

ミヅキが言うと

「いいですか!?いやぁ助かります!またこんな美味しいもの一人で食べたなんてバレたら怖いですからね…」

「今度は一人で全部食べちゃわないで下さいね」

ミヅキがウインクすると副ギルが気まずそうに苦笑した…

ベイカーさんがチャーシュー丼も大盛りによそって戻ってくると…

「では、テオくんにこれをお渡し下さい」

副ギルが昨日のプリン代をミヅキに渡す。

「はい、必ず渡しておきますね」

ミヅキが受け取ると

「それと昨日の依頼での件ですが、やはりあの男…元村長ですが依頼内容を誤魔化していた様でした…村人から集めた金をちょろまかそうと考えたようです」

「やはりな…」

ベイカーがチャーシュー丼を食べながら頷く。

「あの男は家を没収してそのお金を依頼料にあてます、そして奴隷落ちですね」

「えっ結構厳しいんですね」

「もちろんです、依頼内容を誤魔化すなど…下手すればパーティの全滅だって有り得ますからね。立派な犯罪です!」

「なるほど…」

ミヅキが納得すると…

「それと…あの男ミヅキさんを手篭めにしようとしたとか?」

「あー…なんか売り言葉に買い言葉で…使用人にしようとはしてましたが…」

「それを受付嬢達がテオくん達に聞いてたらしく…その…大変ご立腹で…」

副ギルがその様子を思い出したのか顔色が青くなる。

「な、なんかしたんですか?」

「は、はい…」

副ギルの顔色が更に悪くなると…ベイカーに向かってちょいちょいと手招きする。

ベイカーがチャーシュー丼を置いて近づくと副ギルがミヅキに聞こえないように耳打ちする。

ベイカーが副ギルから聞いた言葉に一瞬顔を青くするが…

「まぁ妥当だな、自業自得だ」

ベイカーが頷く。

「えー!なになに!なんて言ったの!」

ミヅキがベイカーの足を掴んで揺すると

「お前にはまだ早い…刑が執行されたとだけ言っておこう」

ベイカーと副ギルがうんうんと頷きあった…

「気になるなぁ…」

ミヅキがじっとベイカーと副ギルを睨むが二人に顔をそらされる。

(なんなのかなぁ~?)

ミヅキはかえって秘密にされた事で気になってしまった…
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