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8章

466.予感

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「ギースさん、学校で何かあったらマルコさんと相談してヒポ達に手紙持たせてね」

「えっ…てことはもう行くのか?」

私からの言葉にギースさんの顔色が曇る。

「ここは私が居なくても大丈夫でしょ?それにまた来るから」

笑って言うと

「そうか…子供達には会っていかないのか?」

「みんなとはいっぱい遊んだし、次のリバーシの大会までには一度来るよ」

笑って伝えるがみんなの顔は晴れない……その様子に苦笑すると

「もうみんなは自分の場所が出来たから大丈夫だよ」

そう言うと私はベイカーさん達とポルクスさんの元に向かった。


まだ開いていないドラゴン亭の裏に回ると扉を叩いて声をかける。

「おはよぉ~!」

ガチャ!

鍵を開けてゴウが顔を出した。

「ミヅキ!おはよう!朝から珍しいね!」

ゴウが中へと入れてくれる。

「あれ?ゴウは学校行かなかったの?」

この時間にいることに疑問を持って聞くと

「うん!僕は料理の事を勉強してる方がいいから!それに字とか数字も最低限レアルさん達が教えてくれたし」

そう言って後ろを歩くレアルとデボットを見る。

「ここの子達は皆最初にある程度教えておきましたからね」

レアルが言うと

「でもイチカ姉以外のみんなは学校に行ってるよ」

「そうなんだ。じゃあ料理頑張ってるゴウにはこの小さめ包丁セットと新しい料理レシピだよ」

ゴウに新しく出来た包丁セットとこれまで作ってきた料理のレシピを渡す。

「え!僕の包丁本当に出来たの!?」

ゴウが受け取ると

「前のは少し大きかったでしょ?これならピッタリだと思うよ」

ゴウは早速包丁セットを開けてみる、包丁を取り出して握りしめると

「本当だ!持ちやすくなってる!」

嬉しそうに自分の包丁を眺める。

「それで料理頑張ってね!」

「うん!でもレシピ持ってきたって事はもう王都出るの?」

嬉しそうな顔から寂しそうな顔に変わる。

「そうだね…ごめんねポルクスさんとイチカ連れて行っちゃって」

寂しそうにするゴウに謝ると

「大丈夫!僕も師匠とイチカ姉には楽しんで来て欲しいもん!それにまた来るんだろ?」

自分の事を聞かれると

「当たり前だよ!帰ってきたら今度はゴウの料理食べさせてね!」

「僕の料理?」

「楽しみだなぁゴウの料理!たくさん挑戦して頑張ってね」

「僕の料理をミヅキに……うん!ミヅキに美味しい料理プレゼントするから!」

ゴウは嬉しそうに包丁セットを抱きしめた。

ゴウにポルクスさん達を呼んできてもらうと…

「ミヅキ様ー!」

イチカが待っている部屋に飛び込んできた!

「ミヅキ様!ディアナ様のお姿になったんですよね!私は準備の為に見に行けなくて…今度また見せて頂けますか?」

イチカが目をうるませて真っ先にその事を頼んでくる。

「イチカ…うーん…王都では無理だから町に帰ったらでもいいかな?」

【コハクもその頃には元気になってる?】

コハクに聞いてみると

【いつでもだいじょうぶだよ!コハクうどんたべたから!】

コハクがいつのように元気な様子にホッとした。

イチカはそれでいいと嬉しそうに頷く!

「ミヅキ様と旅行楽しみです!」

「イチカ…私とじゃなくてポルクスさんと新婚旅行だよ?」

「あ、ああ!もちろんポルクスさんとも楽しみですよ!」

イチカの言葉にポルクスさんの様子を伺うが慣れているのか苦笑してイチカを見ていた。

私の視線に気がつくと

「いつもこんな感じだから大丈夫だよ。むしろミヅキの話をしていないイチカはイチカじゃ無いしな」

まぁポルクスさんがいいならいいが…私はポルクスさんにコイコイと手招きすると二人でコソコソと話し出す。

「例の件はどうなの?」

ポルクスさんに確認すると

「バッチリだ紹介してくれた店に行ってきた!」

ポルクスさんがグッと自信満々に親指を立てる。

「よかった!じゃもう王都を出ても平気?」

「何、もう出るのか?店の方は平気だが…じゃあこの後すぐに頼んだものを取りに行ってくるよ」

「了解!じゃあお昼すぎに王都の門に集合ね!」

ポルクスさんはわかったと頷いた。

「何を二人でコソコソ話してるんですか?」

イチカがぷぅと頬を膨らませて私とポルクスを見つめる。

「イチカ可愛い!焼きもちだ!」

「それはどっちにだ?」

ポルクスさんが苦笑して聞くと

「うー……私も二人の間に入れて下さい!」

イチカは私とポルクスさんの腕をギュッと組んだ。

そんなイチカ達と後で会う約束をして店を後にするとお世話になった人達に挨拶をして回る。

マルコさんの自宅に行ってロザンヌ様やエリーに挨拶をすると

「もう行っちゃうの?」

エリーが寂しそうに手を握りしめる。

「ミヅキともっと一緒に料理とかしたかったわ…」

エリーの寂しそうな顔に謝るしか無かった。

「ほら、エリーミヅキさんが困ってますよ、友達なら笑顔で送り出してあげないと…」

ロザンヌ様がエリーの肩に手を置く。

「ミヅキさん、主人と娘がいつもお世話になってて感謝しかないわ…町へ帰る道中気をつけて下さいね」

「ありがとうございます。エリーもまたね!カイルによろしくね」

会えなかったカイルに言伝を頼む。

「そう!カイルもレオンハルト王子にくっついて行っちゃうんだもん!私も行けば良かったかなぁ…」

「今度獣人の国と行き来出来るようになったら一緒に行こうよ!その時はカイルに案内してもらうね」

「それ凄くいい考え!楽しみだわ!」

エリーが笑う。

「じゃあそれまでに色々と勉強して準備しておくわ!それにリバーシ大会もあるもんね」

「そうだよ!その時は王都に戻ってくるからね」

先の楽しみが増えてエリーにも笑顔が戻った。

執事のエドモントさんやマリアさんマリーさんにも挨拶をしてマルコさんによろしくと屋敷を出ていった。

その後もお世話になった人に軽く挨拶をしているとお昼近くになってしまった。

「ミヅキ、もうポルクスさん達と約束の時間になるぞ」

ベイカーさんが声をかけると

「あれ?どうしよ…里に一回戻ろうと思ってたけど…まぁいいか。ギースさん達には一応朝言ったもんね」

「うわ…ギース達可哀想だな」

「絶対帰ってきた時に文句言われますね」

デボットさんとレアルさんがため息をつく。

そんな事を言われてるとは知らずに私は王都の門を目指した。
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