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10章

548.お約束

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恥ずかしがるコジローさんと対照的な堂々としたアランさんの体も洗うとみんなで湯船に浸かる。

「ふぅー!働いたあとのお風呂は最高だね!」

ちょっと深いのでベイカーさんの膝の上に乗せてもらって足を伸ばす。

「それにしてもこのままでいいんですかね?怒られないかな」

コジローさんが開放的になったお風呂場を見つめていると

「だって壊したのここの神木様だろ?俺達悪くないだろ」

【失礼ね、壊してないわよ。少し広くしただけじゃない】

「ふふふ、そうだね~でも怒られる前に直しておこうか?私の魔法でも直せそうだよね」

「そうか木魔法で直せるのか…ミヅキは疲れてるだろ?コハクとかに頼めないのか?」

【ぼく?どう直すの?】

呼ばれてコハクが犬かきをしながら近づいてくると

【ここの壁を元に直して欲しいんだよね】

【わかった!】

コハクは壁の木に魔力を流すと元あったように壁を作る。

「おお!上手いもんだな」

ベイカーさんやアランさんに褒められてコハクが嬉しそうに尻尾を振っている。

「じゃあそろそろ出るか!」

ザバッ!と風呂から上がると…

「ベイカーさん…俺達何処からか出ればいいんですかね?」

コジローさんが閉じた壁を見つめ、不安そうに振り返る。

「「あっ…」」

ガラッ!

扉が開いてエヴァさんが顔を出すと

「ミヅキ、そろそろ出てきな」

声をかけてきた、エヴァさんはキチンと服を着ていてベイカーさん達をみると

「あれ?水着なんてさっき着てたっけ?」

思い出そうと首を傾げた…

「いや…忘れて下さい」

ベイカーさんがやめてくれと謝ると

「こっちで着替えちゃいなよ、誰もいないですよね?」

エヴァさんに聞くと頷くのでベイカー達はしょうがなくミヅキ達と女性の脱衣場に向かった…

「体だけ拭かせて貰ったら向こうに行くよ、服はあっちだからな」

ベイカー達が急いで体の水分を拭き取っていると

「別にそんなに急がなくたって大丈夫だろ?何を急いでいるんだ、別に見られたって減るもんでもないし」

エヴァさんが苦笑しながら気することなく私の体を拭きながら喋っていると…

「えっ…見たの?」

私が思わずエヴァさんを凝視すると

「そりゃ裸で立ってたからな、別に見たってどうって事ないだろ?」

エヴァさんが三人に聞くと

「あっ、うっ…なんか違う物が減る気がする…」

ベイカーさんがなんともいえない表情をしていると、コジローさんは無言で俯く。

「まぁ俺も見たしお互い様だよな!」

アランさんは気にすることなく笑っていた。

「アランさんは凄いですね」

コジローさんが尊敬するような眼差しでアランさんを見ているが…あまり参考にはして欲しくないな…

三人は体を拭き終えてそそくさと部屋を移ろうと廊下に出ると…

「あなた達…今何処から出てきたのですか…」

セバスさんとアルフノーヴァさんとばったり出くわした。

「あっ…セバス…」

「こ、これには深い訳が!!」

アランとベイカーがちょっと待てと手を出すと

「まさかその年で覗きですか?しかも…そちらは女性用…今はエヴァさんとミヅキさんが入ってますよね?」

「だから待てって!確かに見たけどそれは不可抗力で!」

アランさんが声をかけると

「見た?何を見たの?」

アルフノーヴァさんが興味津々で聞いてくる。

「あっ違う…見たというか見せたと言うか…」

「お前…またその汚い物をミヅキさんに見せたのか!?」

セバスさんからプチッと何かが切れる音がすると同時にアランの頭上から雷が落ちてきた…

ズドンッ!

音と共にアランさんがピクピクしながら床に這いつくばっていると

「コジローさんまで…こんな人達といたから毒されてしまったのですね…」

セバスさんが哀れんだ瞳でコジローさんを見つめると

「ち、違います!これは神木様が浴槽をひとつにしてしまって…それで俺達向こうから出れなくなってしまって…」

「あーなるほど神木様の悪戯か、セバス駄目だよちゃんと人の話は最後まで聞かないと」

「そ、そうだぞ…俺は悪くない…」

アランさんがヨタヨタと立ち上がると

「でもアランさんは見せたし見ただろ?ミヅキの前で堂々と」

ベイカーさんがとばっちりを避けるためにアランさんを差し出す。

「アラン…」

セバスさんがギロっと睨むと

「大丈夫!何か凄い音がしたよ!?」

ミヅキとエヴァさんが様子を見に廊下に出てきた。

「あっセバスさん、アルフノーヴァさんお話終わったんですか?」

ミヅキ達をみるとコロッと表情を変えて笑顔で返す。

「はい、エルフの方たちは快く理解して下さいました。これからは我々の町を介して少しづつ交流していくことになりましたよ」

「快くねぇ」

アルフノーヴァさんが後ろで苦笑していると

「それよりも!ミヅキさんなぜこの人達が女性用の脱衣場から出てきたのですか?」

「あっ…それは…」

アランさんとベイカーさんをみると必死な顔で上手く言えと合図を送ってくる。

「えっと…神木様が壁を壊しちゃって…そしたらアランさん達が真っ裸で立ってて…だから水着貸して一緒にお風呂に入りました!エヴァさんはすぐに出てったから多分大丈夫!」

「そうだな、アランにだけ見られたようだ」

エヴァさんが笑うと

「エ、エヴァ!」

アランさんがそれを今言うか!と頭を抱えると

「アラン…帰る前に少し真剣で撃ち合いでもしましょうか?」

セバスさんが笑いかけると

「間に合ってるので大丈夫です」

アランは着替えを取りに脱衣場へと走った!

「何を気にしている?別に見られても困るものなどないから大丈夫だよ」

エヴァさんが笑うと

「エヴァさんはお綺麗な女性なのですから、もう少し危機感を持った方がよろしいですよ。皆がこのベイカーやコジローのようにヘタレなわけではありませんから…」

「ヘタレなわけじゃねぇよ!紳士なんだよ!」

「紳士~?」

私が思わず笑うと

「なんだ?ミヅキ」

ベイカーさんがじろっと睨む。

「なんでもなーい!じゃあセバスさん達はゆっくり入ってね!ちゃんと浴室コハクが元に戻しておいたので」

「あれ?ミヅキさんはもう入らないのですか?」

アルフノーヴァさんが聞くと

「もう入ったから」

「それは残念です…セバスから一緒に入った事があると聞いていたので楽しみにしていたのに」

あからさまにガッカリしているアルフさんに申し訳なくなると…

「で、でもほら男湯だしね」

「あれ?アラン達とは水着で入ったんですよね?」

セバスさんがニコッと笑って聞くと

「じゃあちょっとだけ…」

私はまた水着に着替えるとアルフさんとセバスさんの背中を流す為にお風呂へと戻っていった…

二人と二度目となる湯船に浸かると…

「ふぅー」

ため息をつく。

「お疲れ様、ありがとうね。背中を流して貰うのは初めてで楽しかったよ」

アルフさんの膝に乗りながら後ろから声をかけられる。

「あまり浸かってはのぼせますからね、そろそろ出ますか?」

セバスさんが心配そうに声をかけるとミヅキを抱き上げる。

「うん、でもみんなと入れて楽しかった」

私が笑うとセバスさんも嬉しそうに優しく抱きしめる。

「いきなりエルフ達に誘拐されましたが思わぬ小旅行の様になりましたね。私も師匠とゆっくり出来ましたし、ミヅキさんとこうしてお風呂にも入れました」

「いつでもお背中流しますよ」

「ふふふ、ありがとう。その時はよろしくお願いしますね」

お風呂から上がると自分で出来ると断るが優しく体を拭かれて着替えまでしっかりとお世話になってしまった…

まぁセバスさんのご機嫌な様子に私も嬉しくなり好意に甘える事にした。

髪までしっかりと乾かして貰うとベイカーさん達が待つ部屋へと戻っていった。

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