貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

82.追撃※

「スチュアートさんに任せておけば大丈夫、私は大人しく部屋に戻る」

自分に言い聞かせるように呟きながらとぼとぼと屋敷の方に向かって歩いていると、ツンッと火薬の様な匂いが風に乗って臭ってきた。

「これは……バルト？」

私は嫌な予感に足を止めてスチュアートさんが消えた森を見つめる。

「スチュアートさん……バルト……大丈夫だよね」

私はその場からしばらく足を動かせずにいた。

パーン……！

遠くの方から乾いた銃声のような音が響いた。

私は音が聞こえた瞬間、体が勝手に走り出していた。


「馬さん！  また乗せて！」

王子達と来た厩舎に向かうと馬に声をかけた。

以前乗せてくれた白馬を見つけると置いてる鞍を乗せて小屋から出して跨った。

「バルト、無事でいてよ！」

私は馬の腹を蹴ると火薬の臭いを追いかけた！



「執拗い野郎共だな……」

バルトはハンター達を見つけるとローズ達から離すようにハンター達を反対方向へと引きつける。

チラッと姿を見せながら逃げていると馬鹿なハンター共はまんまとバルトを追いかけてきた。

パーン！

ハンター達が銃を発砲してきた！

バルトは慣れたようにヒラっと弾を避ける。

はん、そんな物が当たるか！

バルトは挑発するように高い木にかけ登るとフンッ！  と鼻をあげてハンター達を見下ろす。

「あいつ、この前はかなり弱っていたはずなのにこの数日で回復したのか？」

「当たる気がしないぞ、なんだあの身のこなしは！」

「あんまり騒ぐと衛兵が来るぞ！  さっさと捕まえてずらかるぞ！」

「わかっているがすばしっこくて……」

ハンターがまたバルトに狙いを付けて引き金を引く！

パーン！

「ギャ！  ギャ！」

バルトが笑いながら弾を避けた！

「あの糞猫が！」

ハンター達が苛立つと懐を探るように触っている。

「おい、ここでは使いたくなかったがあれを出せ！」

「でも大丈夫か、後で契約違反だと言われるかも？」

「こんなところに俺達を招き入れてる時点であいつらも同罪だろ！」

「そ、そうだな！」

男達はどす黒い色の毒玉を取り出した。

「また毒か！」

バルトは嫌な予感に距離を取ろうとするが狙いをつけられている。

ヒュンッ！

すると何処からかナイフが飛んできて男の手に突き刺さった。

「うわっ！」

男が衝撃で毒玉を落とした。

「誰だ！」

ナイフが飛んできた方向をハンター達が睨みつけるとそこには気品ある執事が立っていた。

「それはこちらのセリフです。ここが王宮内の庭園と知ったうえでハントをしているのですか？」

そこにはナイフを持ったスチュアートが立っていた。

あいつ……

バルトは木の上に身を隠して様子をうかがっていた。

「許可書はお持ちですか？  それとも無断で？」

スチュアートが微笑みながらハンター達に近づいてくと、ハンター達はじわじわと後ろに下がっていく。

「クソッ！  逃げるぞ！」

ハンター達は捕まえるのを諦め逃げ出すように後ろに走り出した。

脇目も振らず走っていく。

「ここまで追い詰めたのに、出直して仕切り直しだ！」

「おう！」

「糞が！」

「ん？  あいつはどうした？」

ひとり声が聞こえない仲間にチラッと後ろを振り返るとすぐ後ろにスチュアートが迫っていた。

「逃がすわけ無いじゃ無いですか……」

スチュアートが顔色を変えずに凄い速さで追いかけて来ていた。片手には仲間がもう既にひとり捕まっている。