[完]異世界銭湯

三園 七詩

文字の大きさ
33 / 50
2章

33

しおりを挟む
この世界に銭湯と家ごと転移して1ヶ月がたった。

私達もここでの生活に少しづつ慣れてきた時の事、上手くいく事もあれば問題もたくさん出てきていた。

「はぁ、やっぱりフルーツ牛乳にコーヒー牛乳はここでは無理なのかな…」

今一番の問題はそれだった。

コーヒー牛乳は自宅のコーヒーを使って作ろうと思っていたがそれも在庫はどんどん無くなりあと少しとなっていた。
コーヒーはこの世界にあるがやはり高価で今の値段で提供するのは無理があった。

「コーヒー牛乳の値段をあげる?」

私がそう言ったがおじいちゃんをはじめお父さんお母さんもそんな事をするぐらいなら出すのはやめようと言っていた。

フルーツ牛乳の方も果実はやはり高価でなかなかフルーツ牛乳に合う果実も見つからない。

銭湯自体は好評でコーヒー牛乳とフルーツ牛乳も話題になっているだけに無くなるのはいたい。

「どうしたもんかなー」

番台に座り頬杖をつきながらため息をついた。

「マキちゃん、すごいため息だね。はい大人一人子供一人ね」

「まるちゃん、ふくちゃんまたきたよー」

「「にゃー」」

「いらっしゃい、マルコスさんにジョアンくん」

仲良く親子でよく来る二人に挨拶をするとチケットとお金を受け取る。

「いやね…マルコスさんはいつもジョアンくんと最後にフルーツ牛乳買うじゃないですか?あれがなくなったらどうします?」

「えー!フルーツ牛乳無くなるの!?」

マルコスさんの大きな声に脱衣場のお客さんの注目が集まる。

「しー!違います!違いますよー!」

慌てて訂正するとみんなほっとして服を脱ぎ出した。

「ちょっとマルコスさん声が大きい!聞いただけなんですから!」

「ごめんよ、いやだってそれが楽しみでもあるからね」

「ですよね。じゃあ値段が高くなるのはどうですか?」

「うーん、まぁ仕方ないよね。あれだけ美味いもんだからな、でも飲む回数は減っちゃうかな」

マルコスさんは値段が上がっても買ってくれると言うが…確かに毎回飲むわけにはいかなくなるだろう。

おじいちゃん達はそんなお客さん達の気持ちをわかっていたんだろう。

「どうしたもんかな」

また振り出しに戻ってしまった。

すると…

「おい!今からここは貸し切りにしてもらう!客を全て出せ!」

「はい?」

いきなりやってきた兵士が眉を釣り上げながら怒鳴りつけてきた。

「おたくどちら?ここは貸し切りなんてしてませんよ」

私はぷいっと横を向いて腕を組んだ。

「こいつ!女の分際で…」

兵士と思われる人はライリーさん達の服とは違った装いだった。
まぁライリーさん達なら顔見知りだからこんな無礼な人は見たことがない。

「おい、まだ入れないのか?」

すると後ろからまた新規の人が入ってきた。

「あっすみません、ちょっとおたく入らないなら帰ってください」

兵士をシッシッと手で払うと後ろの客に笑いかける。

「旦那様!すみません、この女が言うことを聞かないもので」

「げっ」

どうもこの兵士と後ろの客はセットだったようだ。
無駄に笑顔を振りまいて損をした。

「旦那様って事はあなたが貸し切りにしようとしたんですか?ここはみんなが仲良く一緒に入る銭湯ですからそれができないなら申し訳ないですがおかえりください」

「この!こちらの方をどなたと心得る!ブルード伯爵様だぞ!」

「はあ、ブルードさんはどうされますか?貸し切りじゃないと入れないのかしら?」

「当たり前だろ!一度庶民が入った湯などすぐに流して新しいものをお入れしろ!」

「はぁ!?」

このお湯をはるのにおじいちゃんとお父さんがどれだけ大変なのかわかっているのか!

私は思わず立ち上がると高い位置から兵士を見下ろし睨みつけた。

「なんだ!」

兵士達は数人いたようでブルード伯爵を囲むと私を睨みつけた。

こちとらずっと荒くれ者の多い下町で育った。
ちょっとした脅しなど通用しない!

「文句あるなら外で話を聞きますよ!ここだとお客さんに迷惑ですからね!」

私は大きな声で兵士達を一喝した。

「こいつ!」

兵士達は武器こそ持ってないが拳を握りしめた。

私は番台に置いてある防犯用の金属バットを握りしめる。

するとお客さん達が騒ぎに集まってきてしまった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...