35 / 50
2章
35
しおりを挟む
「パパ!マキさん」
ジョアンくんは伯爵様達が去った後ライリーさん達を連れて戻ってきた。
「あれ?」
そして何事もない銭湯をみて首を傾げた。
「マキさん、大丈夫ですか!」
「あっはい、皆さんのおかげで何事もなく帰って頂きました」
「それならいいのですが…」
ライリーさん達が心配そうな顔を向ける。
「大丈夫ですよ、ここでは喧嘩や揉め事はダメって領主様が言ってくれてるんですよね?」
「そ、それは…」
ライリーさんが言いにくそうに目を逸らした。
「え?もしかしてダメになったんですか?」
強気に出たのにまさかダメだったとか不安になる。
「いえ!領主様が王都に申請を出してまして必ず受理されるはずですが、まだ王都からの返答が届いてないので…」
その前に揉め事を起こすとよろしくないみたいだ。
「すみません、でもあの人達横暴すぎますよ!受理されてなくても入って欲しくないわ」
「みんな領主様のような貴族ばかりではないので、むしろブルード伯爵のような人の方が多いですから気をつけてください」
「はい…」
「しばらくはやはり護衛をつけますね」
「よろしくお願いします」
私はライリーさんに頭を下げた。
それからしばらくは貴族など来ることもなく平和で忙しい毎日を送っていた。
「んー、今日はなんかお客さんの出入りが少ないなー」
番台に立ってお客さんの数を数えた。
ここに来てからお客さんは増える一方だったのに最近なんだか減ってきたような気がする。
「みんな飽きちゃったのかな?」
銭湯の良さにみんなが気がついてくれていたのかと思っていただけに少し悲しかった。
「マキちゃん」
「あっマルコスさんこんにちは、あれ?ジョアンくんは?」
いつも一緒に来るのに今日はマルコスさん一人だった。
「いや、今日は入りに来たんじゃないんだ…」
マルコスさんは眉を下げて申し訳なさそうな顔をする。
「どうしたんですか?ジョアンくんに何か?」
「いや、元気だよ。今日もここに来たいって言ってたんだが…」
ならどうして?
「それが、上司からの命令でまるふくの湯に行っては行けないと言われて、もし行ったら仕事を辞めてもらうしかないと言われたんだ」
「えー!なにそれ!パワハラじゃないですか!」
「ぱわ?」
マルコスさんは聞きなれない言葉に首を傾げる。
「まだ小さいジョアンもいるし仕事を辞める訳には行かないんだ…すまない」
「マルコスさん…そんな気にしないでください!また上司の機嫌が戻ったらいつでも来てくださいね!」
マルコスさんは悲しそうに笑うが返事をしないでまた頭を下げて帰っていった。
「なんだ?今日はやけに空いてるな」
「あっゲンさんいらっしゃいませ」
「ん、なんか元気ないなどうした?」
ゲンさんがお金を出しながら私の顔を見つめてきた。
「なんでもないですよ!それよりも空いてますからゆっくり長湯しててってくださいね」
「おう!」
ゲンさんの様子はいつもと変わらない。
他にもまだお客さんは来ているからマルコスさんの上司という人がたまたまそんな事を言っただけなのかな…
でもなんか嫌な予感がする。
言いようのない不安はこの後的中することになった。
ジョアンくんは伯爵様達が去った後ライリーさん達を連れて戻ってきた。
「あれ?」
そして何事もない銭湯をみて首を傾げた。
「マキさん、大丈夫ですか!」
「あっはい、皆さんのおかげで何事もなく帰って頂きました」
「それならいいのですが…」
ライリーさん達が心配そうな顔を向ける。
「大丈夫ですよ、ここでは喧嘩や揉め事はダメって領主様が言ってくれてるんですよね?」
「そ、それは…」
ライリーさんが言いにくそうに目を逸らした。
「え?もしかしてダメになったんですか?」
強気に出たのにまさかダメだったとか不安になる。
「いえ!領主様が王都に申請を出してまして必ず受理されるはずですが、まだ王都からの返答が届いてないので…」
その前に揉め事を起こすとよろしくないみたいだ。
「すみません、でもあの人達横暴すぎますよ!受理されてなくても入って欲しくないわ」
「みんな領主様のような貴族ばかりではないので、むしろブルード伯爵のような人の方が多いですから気をつけてください」
「はい…」
「しばらくはやはり護衛をつけますね」
「よろしくお願いします」
私はライリーさんに頭を下げた。
それからしばらくは貴族など来ることもなく平和で忙しい毎日を送っていた。
「んー、今日はなんかお客さんの出入りが少ないなー」
番台に立ってお客さんの数を数えた。
ここに来てからお客さんは増える一方だったのに最近なんだか減ってきたような気がする。
「みんな飽きちゃったのかな?」
銭湯の良さにみんなが気がついてくれていたのかと思っていただけに少し悲しかった。
「マキちゃん」
「あっマルコスさんこんにちは、あれ?ジョアンくんは?」
いつも一緒に来るのに今日はマルコスさん一人だった。
「いや、今日は入りに来たんじゃないんだ…」
マルコスさんは眉を下げて申し訳なさそうな顔をする。
「どうしたんですか?ジョアンくんに何か?」
「いや、元気だよ。今日もここに来たいって言ってたんだが…」
ならどうして?
「それが、上司からの命令でまるふくの湯に行っては行けないと言われて、もし行ったら仕事を辞めてもらうしかないと言われたんだ」
「えー!なにそれ!パワハラじゃないですか!」
「ぱわ?」
マルコスさんは聞きなれない言葉に首を傾げる。
「まだ小さいジョアンもいるし仕事を辞める訳には行かないんだ…すまない」
「マルコスさん…そんな気にしないでください!また上司の機嫌が戻ったらいつでも来てくださいね!」
マルコスさんは悲しそうに笑うが返事をしないでまた頭を下げて帰っていった。
「なんだ?今日はやけに空いてるな」
「あっゲンさんいらっしゃいませ」
「ん、なんか元気ないなどうした?」
ゲンさんがお金を出しながら私の顔を見つめてきた。
「なんでもないですよ!それよりも空いてますからゆっくり長湯しててってくださいね」
「おう!」
ゲンさんの様子はいつもと変わらない。
他にもまだお客さんは来ているからマルコスさんの上司という人がたまたまそんな事を言っただけなのかな…
でもなんか嫌な予感がする。
言いようのない不安はこの後的中することになった。
1
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる