妖精巫女と海の国

もも野はち助

文字の大きさ
4 / 50

4.解消された婚約

しおりを挟む
「アズ、帰りは私と一緒に馬車で帰るかい?」

 アレクシスの執務室を出た際、父にそう尋ねられ、アズリエールが首を振る。

「僕はちょっと空の散歩もしたいから、巫女力で帰るよ」
「そうか……。あまり遅くならないようにな?」
「だからお父様、今日の事は先にユリーに話しておいてね?」

 ニッコリそう告げてきた娘に父が苦笑する。

「分かった。お前が質問責めにされないように基本情報は話しておくよ」
「ごめんね? 嫌な役を押し付けて」
「その後のお前の方がもっと大変だろ?」

 お互いに困った様な笑みを浮かべた親子は、そこで別れる。
 父は王城の入り口へ、そしてアズリエールは城内にある屋上の庭園へ。
 そうしてアズリエールは、父親とは逆の方向に歩き出した。

 アズリエールが巫女力を発動させる為には、高い場所から落下する必要がある。
 サンライズの巫女達は、その力を発動させる為に巫女それぞれが独自の方法で発動させるのだ。
 例えばフィーネリアは『祈る』事で。
 エリアテールとアイリスは『歌う』事で。
 他には躍りや舞い、楽器を演奏する事で力を発動する巫女もいる。
 巫女力を失う前のアズリエールの母と姉のユリアエールは、バイオリンを演奏する事で力を発動させていた。

 そしてアズリエールの場合は、高い場所から身を投げるような行動で力を発動させる。
 まるで舞うように落下する事で巫女力が発動し、自身の体に風をまとわせ、その風力で自由に空を飛ぶことが出来るのだ。
 その為、サンライズから自宅に帰宅する際は、よく城内の屋上庭園を利用する。
 以前うっかりその辺のバルコニーから飛び降りてしまって、アズリエールの事を知らない城内の新人使用人達を驚かしてしまった事があったからだ。
 傍から見ればアズリエールの巫女力の発動方法は、投身自殺にしか見えない。
 以来、アズリエールが巫女力を使う場所は、屋上庭園が定番となった。

 その庭園に向かう為、城内の階段をリズミカルに上り、現れた大きな扉を思いっきり開く。
 すると手入れをしていた初老の庭師が、アズリエールに気付いた。

「アズリエール様、本日はもうお帰りですかな?」
「うん。トムじいもお庭のお手入れご苦労様!」

 そういってアズリエールは、屋上庭園の塀にヒョイっと飛び乗る。

「それじゃ、トムじい、またね!」
「お気を付けてお帰り下さいませ」

 庭師に手を振ると、アズリエールは塀の外側の青空に頭から飛び込む。
 そのまま落下しながら体を捻じるように回転させると遠心力で両手が広がり、その軌道から風の気流が生み出された。
 その気流は、まるで風の膜のようにアズリエールの全身を包み込み、そして彼女の体をグイっと上へ持ち上げる。
 その気流をコントロールしながら、まるで風に乗って舞うようにアズリエールは、空を自由に駆け巡り始めた。

 この前代未聞の便利な風巫女の力は、もうアズリエールの生活の一部だ。
 その為、自分に妻としての役割を望む婚約者はアズリエールにとって好ましくない相手となる。
 当然、跡継ぎである子を望む相手に嫁げば、処女性を失うの事は必須だ。
 そうなればこの素晴らしい巫女力を失う事になってしまう。
 その辺りの事情から、アズリエールはオルクティスの婚約を嬉々として受け入れたのだ。

 しかし、この理想的好条件の婚約を脅かす存在がいる。
 それが自分と瓜二つの顔を持つ双子の姉ユリアエールだ……。

 アズリエールとほぼ同じ顔立ちと体型のユリアエールだが、まとっている雰囲気は真逆だ。
 天真爛漫で幼さを感じさせる元気の塊のようなアズリエールと違い、姉のユリアエールは、6歳くらいまで病弱だった所為か、色白で儚なげな印象をまとい、内向的な性格でもあった為、全力で守りたくなるような印象だった。

 そんなエアリズム家の双子の姉妹は、どちらも幼少期から美少女姉妹と言われていたが、子供らしい愛らしさが全開のアズリエールとは違い、姉のユリアエールは、大人の男性すらドキリとさせてしまうような艶やかな雰囲気を静かにまとっているような少女だった。

 しかしその艶っぽさは、本人が意図して醸し出していたものではない。
 だが男性からすると年齢に関わらず、思わず目を引いてしまう程だった。
 そんなユリアエールは、現在その自身が持ってしまった危うい魅力に危機感を抱き、極力社交関係に参加しない姿勢を貫き通している。
 その為、早婚を推奨される風巫女の一族の長女であっても未だに決まった婚約者を持たず、屋敷に引きこもりがちな生活をしていた。

 世間では、そんなユリアエールを奥ゆかしい深窓の令嬢と評しているいるが……彼女達の父親と王太子のアレクシスは、そうは思っていない。
 そして二人がそう感じてしまう切っ掛けとなったある出来事が6年前にあり、それからアズリエールは、ずっと婚約者が決まらない状態が続いていた。
 ある出来事……それは幼馴染だった婚約者の伯爵令息から、アズリエールが婚約解消されてしまった事だ。

 アズリエールと婚約していたのは、サンライズ国内では中堅クラスの伯爵家の次男で名前はリックス・アウスタッドと言う二つ年上の少年だった。
 そのアウスタッド家は、エアリズム家の隣に領地を持っていたので家同士の付き合いが深く、その関係でアズリエールは物心ついた頃からリックスと遊んでいた。
 そういう関係もあり二人の婚約話が出て、交わされたのだ。

 そしてそのアズリエールの遊び仲間には、リックスの遠縁にあたる家の令息が二人ほどいた。
 彼らはよくアウスタッド家に遊びに来ていた為、自然とアズリエールとも親しくなり、幼少期のアズリエールは婚約者のリックスだけでなく、その二人の令息ともよく遊んでいたのだ。

 一人はアズリエールと同じ年齢で、ノリスという少年。
 ノリスの家は、同じ伯爵家でもエアリズム家よりもやや格上の家柄だった。
 もう一人はアズリエールよりも3つ年上のエリックと言う少年。
 こちらは子爵家の令息で、三人の中では一番穏やかな性格をしていた。
 アズリエールは、その三人の男の子の中に混ざってよく遊んでいたのだ。

 だがその中には、姉のユリアエールは入っていなかった……。
 幼少期の頃、アズリエール程ではないが巫女力が強かった姉は体が弱かった事もあり、その力に当てられ体調不良を起こして、ベッドの中で過ごす事が多かったのだ。
 その為、いつも窓から元気に遊ぶアズリエール達の姿を羨ましそうに見ていた。
 それを知っていたアズリエールは、彼らを姉に紹介した。
 しかし、寝たきりだった姉は外で一緒に遊ぶ事は出来ず、かなり寂しい思いをしていたのだろう。

 だが6歳を過ぎると巫女力が安定してくるので、その関係でユリアエールの体質が変わり、すっかり健康体となる。
 それに喜んだ両親は二人が7歳の頃、サンライズ城で開かれたある一般的なお茶会に初めて二人を参加させたのだ。

 しかし、そこで二人の心に大きな傷を残すある事件が起きてしまう……。
 その事件は、人を傷付ける力はないとされていた巫女の力でも、傷付けられる可能性が存在している事を見事に立証してしまうような出来事だった。
 その所為でアズリエールは、三ヶ月ほど巫女力の使用を禁止され、その間サンライズ城内にある王妃セラフィナの別邸に滞在させられ、巫女力の使用法についての特別な指導を徹底的に受けさせられた。

 そしてその事件は、姉ユリアエールの心に大きな傷を残した。
 アズリエールが登城させられる原因となったその事件で、姉は酷く成人男性を恐れるようになり、しばらく自室から出られなくなってしまったのだ……。
 それは父親からでさえ、触れられる事に恐怖してしまう程のトラウマとなり、その時期のユリアエールは精神的にかなり不安定な状態に陥っていた⋅⋅⋅⋅⋅⋅。

 同時に姉は三ヶ月とは言え、ずっと一緒だった双子の妹アズリエールと引き離される事に激しく抵抗し、アズリエールが登城する際は、発狂するように泣き叫んで、それを拒んだ。
 しかしサンライズ王家は、周りから危険視されてしまったアズリエールの異質な巫女力の名誉回復の方に力を注ぐ判断を下す。
 その結果、一対の翼のようにずっと寄り添っていた双子の姉妹が、その三ヶ月間だけは一時的に引き離されてしまった。

 そしてその三ヶ月間、サンライズ城で巫女力の使用法について徹底した指導を受けさせられていたアズリエールは、その時に王妃教育でセラフィナの別邸に通っていたアレクシスの婚約者でもある雨巫女アイリスと親しくなる。
 同時に他の巫女達とも交流が得られたので、家族と離れ離れになっていてもアズリエールの方は、そこまで寂しい思いをする事は無かった。
 逆にその時は、姉のユリアエールの事を心配していたくらいだ。

 ユリアエールは内向的な性格だった事もあり、心に傷を抱える前から常にアズリエールにベッタリだったのだ。
 その為、自分が三ヶ月間も不在な状況では、更に姉の心が病んでしまうのではないかと、幼いながらも懸念していたアズリエール。
 しかし三ヶ月後に家に帰ると、そこにはまるで自分の代わりのようにアズリエールの婚約者であるリックス達と楽しそうに遊ぶ姉の姿があった。

 その状況に初めは喜んでいたアズリエール。
 しかし一年後、アズリエールは相手から婚約解消の話を持ち出されてしまう。
 その表向きの理由は、アウスタッド家内での男装をするようになってしまったアズリエールを迎え入れる事に親戚間で異議が出てしまったという事だったが⋅⋅⋅⋅⋅⋅。
 その後、婚約者のリックスから告げられた本当の理由は、リックスが姉ユリアエールに好意を抱いてしまい、婚約相手をユリアエールに変更して欲しいと打診したとの事だった。

 この時のリックスは、大人の男性に恐怖心を抱く様になってしまった姉を守りたいという庇護欲を強く抱いた。
 その話を聞いたアズリエールは、姉ユリアエールにリックスの事をどう思っているのか、さり気なく確認する。
 すると姉の方もリックスへ好意的な感情を持っているような返答をしてきた。

 だが妹の婚約者でもあった為、気持ちを押し殺しているような素振りをアズリエールに見せ、その事に気づいたアズリエールは、リックスからの婚約解消の話を受け入れる事にしたのだ。
 そもそもまだ8歳だったアズリエールは、リックスに対して友人的な感情しか抱いていなかった。
 ならば自分は、早々に婚約者の座を退き、惹かれ合う二人が婚約をすればいいと思ったのだ。

 こうしてアズリエールは自ら身を引き、婚約者を失った。
 そして婚約が解消になってしまった娘の将来を心配した父は、早々に新しい婚約者を得られるよう王太子のアレクシスに良縁そうな縁談話がないか、熱心に相談するようになる。
 そんなアズリエールの次の婚約者候補に挙がっていたのが、同じく一緒に遊んでいた二人の伯爵令息のノリスと、子爵令息のエリックだった。

 しかしノリスの方は、男装し一人称が『僕』となってしまったアズリエールを婚約者にする事を強く拒んだ。
 同時にユリアエールが男性を怖がる原因が、アズリエールの軽率な行動で起こってしまった事を何故か知っており、その事でアズリエールを責め、冷たい態度を取るようになってしまっていたのだ。
 そんな態度を急変させた幼馴染の仕打ちにもアズリエールは、気分を害する態度を見せず、素直にその拒絶を受け入れた。
 そんなノリスも実は、ユリアエールとの婚約を希望していたのだ。

 その状況に父が自分を不憫に感じてくれている事にもアズリエールは、何となく感じ取る。
 そしてもう一人の婚約者候補でもあるエリックにも父は話を持って行ったのだが、やはり同じくユリアエールへの想いを理由に婚約を断られてしまう。
 しかしエリックに関しては、アズリエールは初めから断られる結果を何となく予想していた。
 エリックは、以前からユリアエールを気遣う言動が多かったからだ。

 他の二人とは違い、エリックだけは初めからユリアエールを慕っていた事にアズリエールは、何となく気づいていた。
 三人の中では一番誠実な断り方をしてきたエリック。
 しかしその時、何故かアズリエールに謎の言葉を告げてくる。

『ユリエルの事、許してあげてね……』

 その時は、その言葉の意味がよく分からなかったアズリエール。
 しかし、この6年間でエリックが言っていた言葉の意味を理解する。
 何故ならその後、アズリエールの元にくる縁談がユリアエールが原因で、全て破談となってしまっていたからだ。
 その殆どがアズリエールの縁談中に何故かユリアエールが突然現れ、その縁談相手が姉にすぐ好意を抱いてしまうような状況が続いた……。

 その状況に初めは、たまたまだと思っていた父が、徐々に長女が故意に次女の縁談を邪魔しているのではないかという事に気付く。
 同時にアズリエールの方も姉のその行動に疑問を抱き始めた。
 しかしユリアエール自身は、心の底から妹の将来を心配して、その縁談相手を自分が見極める為に縁談の席に現れていたと主張する。

 その姉の言い分は、本当にアズリエールの事を心配している様子で……。
 アズリエールは母親と共に変な誤解を抱きかけている父に姉のその主張を信じてあげて欲しい弁護した。
 その時は、本当に姉は自分の事を心配してくれているだけだと思っていたのだ。

 しかし半年前、そうでは無かった事が発覚する。
 元婚約者でもあるリックスから、ある苦情が来たのだ。
 以前、リックスとの婚約に前向きだったユリアエールだが、婚約したい件を打診すると妹に申し訳ないという理由で、受け入れてくれないと言うのだ。
 リックスの方から、その件はすでにアズリエールも納得してくれていると説明したそうなのだが……。
 姉からの返答では、未だにアズリエールがリックスとの婚約に未練があると言われ、それを理由に婚約は受け入れられないという内容だったらしい。

 その事を告げられたアズリエールは、すぐに姉に元婚約者には初めから恋心等なかったので、気にせず婚約を受け入れて欲しいと訴えた。
 しかし、姉はアズリエールに申し訳ないの一点張りで、その婚約を受け入れる気配を一切見せない。
 そしてもう一人、同じく姉に熱を上げていたノリスも同じような対応で、姉に婚約を断られ続けたらしい……。
 ノリスの場合、姉のその頑なな態度に早々に見切りを付け、今から一年前に別の令嬢と婚約してしまったという噂が、アズリエールの耳にも入って来た。

 そんな事が立て続けに発覚し、アズリエールの中では姉に対するある疑惑が生まれてしまう。
 姉は自分が男性に対して恐怖心を抱く原因を作ってしまったアズリエールの事が許せず、あえてその妹の縁談を壊す行動をしているのではないかと……。

 だが普段の姉は、幼少期の頃から変わらず、アズリエールに対して過剰と言っていいほどベッタリしてくる所がある。
 そういう部分からでは、自分が姉に憎まれているという感じは一切ない。
 その姉の矛盾した行動から、アズリエールは無意識に姉の希望を常に優先する癖が付いてしまっていた……。

 そしてそんな複雑な関係になってしまった自分達の事を父と王太子のアレクシスは、かなり心配してくれている。
 特にこのユリアエールの行動に関しては、父もアレクシスもアズリエールと同じ疑念を抱いているのだ。
 姉ユリアエールは、故意に妹アズリエールの縁談を邪魔しているのではないかと……。
 そんな経緯があり、先程の父達の会話では頻繁にユリアエールを警戒するような言葉が、かなり交わされていたのだ。

 風を切るように空を駆けながら、そのやり取りを思い出したアズリエールは、ギュッと唇を噛む。
 全ての元凶は、自分達が7歳の頃に初めて参加したお茶会でのあの事件が原因だ。
 そしてその事件は、アズリエールの人を信じすぎてしまう危機感の無さが招いてしまった事なのだ……。

 振り切ろうとしても鮮明に蘇ってきてしまうその忌々しい記憶を自分への戒めだ言い聞かせ、アズリエールは7歳の頃に起こってしまったその出来事を思い返し始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

クズ王子から婚約を盾に迫られ全力で逃げたら、その先には別な婚約の罠が待っていました?

gacchi(がっち)
恋愛
隣国からの留学生のリアージュは、お婆様から婚約者を探すように言われていた。リアージュとしては義妹のいない平和な学園で静かに勉強したかっただけ。それなのに、「おとなしく可愛がられるなら婚約してやろう」って…そんな王子はお断り!なんとか逃げた先で出会ったのは、ものすごい美形の公爵令息で。「俺が守ってやろうか?」1年間の婚約期間で結婚するかどうか決めることになっちゃった?恋愛初心者な令嬢と愛に飢えた令息のあまり隠しもしない攻防。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

嘘コクのゆくえ

キムラましゅろう
恋愛
アニーは奨学金とバイトで稼いだお金で魔法学校に通う苦学生。 生活は困窮、他の学生みたいに愛だの恋だのに現を抜かしている暇などない生活を送っていた。 そんな中、とある教授の研究室で何らかの罰としてアニー=メイスンに告白して来いと教授が学生に命じているのを偶然耳にしてしまう。 アニーとは自分のこと、そして告白するように言われていた学生は密かに思いを寄せる同級生のロンド=ハミルトンで…… 次の日、さっそくその命令に従ってアニーに嘘の告白、嘘コクをしてきたロンドにアニーは…… 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 誤字脱字が罠のように点在するお話です。菩薩の如き広いお心でお読みいただけますと幸いです。 作者は元サヤハピエン主義を掲げております。 アンチ元サヤの方は回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

【完結】懸命に働いた結果、無実の罪で魔王への生贄にされた聖女。でも、その『氷華の魔王』様に溺愛され、誰よりも幸福な人生を手に入れました。

小平ニコ
恋愛
主人公マリエラは懸命に聖女の役割を果たしてきたのに、婚約者である王太子ウィルハルドは、お気に入りの宮女のデタラメを真に受けて婚約破棄。そしてマリエラを恐るべき『氷華の魔王』レオナールへの生贄にしてしまう。 だが、冷徹で残忍と噂されるレオナールは、マリエラに対して深い愛情と優しさを注ぎ、マリエラを侮辱したウィルハルドの顎を氷漬けにして黙らせ、衆目の前で大恥をかかせた。 そして、レオナールと共に魔王国グレスウェアに移り住むマリエラ。レオナールの居城での新しい生活は、甘く幸福なものだった。互いに『運命の相手』と認め合い、愛を育み、信頼を深めていくマリエラとレオナール。 しかしレオナールは、生まれついての絶大な魔力ゆえの呪いとして、長く生きられない体だった。ショックに打ちひしがれるマリエラ。だがある日、封印された禁術を使えば、自らの寿命が大幅に減るものの、レオナールに命を分けることができると知るのだった。 その頃、王太子ウィルハルドは自分に恥をかかせた魔王レオナールへの憎しみを滾らせ、魔王国の反王政派と結託してレオナールの暗殺を企てる。 しかしそれは、あまりにも愚かな選択だった。レオナールのマリエラに対する態度があまりにも優しかったから、ウィルハルドは彼を侮り、忘れていたのである。『氷華の魔王』が恐るべき存在であることを……

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

処理中です...