放課後はダンジョンに行って憂さ晴らしのつもりがいつの間にか学園最強になってたことに気が付かなかった

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第百三十一話 海辺の筏でやきそば

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筏の端に寝転びながらジョニーは昔を思い出していた。
潮風が心地よく、人魚達の会話もうるさくもなく心地よく響くくらいだった。
セイレーンの種族だからだろうか。

ゴンザールにも海はあった。
ジョニーはそのゴンザールの海で釣りをしたことがある。

ゴンザールに着いたばかりの頃、やっと気持ちも落ち着き、安心して滞在できる場所なんだと実感し始めた頃。
海が気になっていた。
ゴーミからゴンザールに入る時は海の近くを通ったが、遠くに見ただけだった。とにかく早くゴンザールに入りたかったのだから。
そして入ったら入ったで、なるたけ早く国境から離れたかった。純粋にゴンザールだけの場所に行きたかった。

そう、当時、冒険者にとって、ゴンザールと言えば、あの森の中の城塞に囲まれた街のことだった。(第五十四話)
後々にジョニーがユータとドーラと出会った街だ。
そこに向かおうと、南へ歩いていた。馬車に乗るカネもあったが、もうゴンザールは良いところだと判ってきていたので、のんびり行きたかった。

街道は海辺に出たり入ったりしている。
ある海べりに近い街道の端で、粗末な釣り竿を売っている掘っ立て小屋があった。
粗末なだけあって安かった。
それまで川でしか釣りをしたことがなかったジョニー。そこの親父から海での釣り方を聞き、竿を持って岩場に行く。餌を付け、ひょーん、とと放り込む。浮きなんか糸の途中で縛った木切れなだけだ。餌もそこらの石をひっくり返して見つけた虫。

何度か餌を付けたり付け替えたりし、干し肉を食いながらのんびり糸を垂れる。
やっと当たりがわかり始め、3匹ほど釣れたときにはもう日も落ちる寸前だった。

他に見えていた釣り人たちももうおらず、ジョニーは少し戻って枯れ枝を集め、風を遮る岩場の陰で火を起こす。
さばいた魚を枝に差し、焚き火の外の地面に突き刺し、待つ。
あー、やっと来たんだなぁ、、、、このとき、はじめて自分はゴンザールにいるんだ、となんか実感した。
安心してのんびり出来たなんて、はじめてじゃなかろうか。
こんなに、心が無防備な自分を今まで感じたことはなかった。

もちろんここにも物盗りとかいるだろう。が、それでも、全ての人間が味方になることは在り得なかった他の土地とかとは違う。官吏の気分で冤罪を着せられ、すべての者たちがそちら側に付く、なんて危険は無いのだ。
ここの人びとは、善悪を知っている。そして皆善を求める。そして正邪も知っている。そして皆、邪を正すことに協力する。
ここは他の土地の真逆なのだ。

他の土地の人びとは上っ面いい人ぶるけど、何か有れば必ず強い方に付く。もしくは見てみないふりという消極的加担をする。だから悪が力を握ったままだった。
よそ者や冒険者は、まっさきに標的にされる者の代表だった。


人魚達の柔らかな笑い声が遠くから聞こえる。
起きているのか寝ているのか、狭間の時が心地よい。

そう言えば、北の森の街の防衛の時の傭兵狩りも面白かったなぁ、、(第八十二話)
あれはドーラやユータの力を借りず、俺らだけでやったからなー、、、

ゴンザールに来る迄は、傭兵は権力者や騎士達の手駒となって凶悪なことばかりしていた。冒険者にとってもっとも鬼門だった。
なので、あの、冒険者たちを狩っていた傭兵どもを狩るのは気持ちよかった。
なにせ、向こうに居る時に傭兵を傷つけようなものなら、国中に追っ手がかかるほどだったのだ。
それを正々堂々と対峙し、狩ることができる、ということ自体が、気持ち良いものだった。

なんか、今思えば、苦労と思えることばかりだったんだなぁ、、ゴンザールに来る迄は。
その時は苦労なんざとは思っていなかった。必死だったからな。一つ一つどうにか突破し、其の結果、ゴンザールに辿り着いていた、たどり着けたのだ。

どっかで諦めていたら、今、俺がここにいることは在り得なかった。
よかった、、あきらめないで、、

諦めようと思ったこともあった。ジョニーも超人ではない。もうだめだ、奴等の手駒になるしか生き残る道はない、と思ったことも何度もあった。が、「やっぱ嫌だ」と、すぐに思い直し、どうにか突破してきた。

・・・・
くんくん、、、
やきそば、、、、

うーーーん、、と伸びをしてジョニーは目を覚ます。
上体を起こし、ぼーーと目の前の海を見渡す。遠浅なので波が弱い。

「ジョニー、メシだぞー」ドーラの呼ぶ声

「おー」
筏の上に立ち上がり、見回すと、周囲の人魚達は皆もう焼きそばを食い始めている。

ドーラとユータのいるちゃぶ台に座り、大盛りの焼きそばに向き合う。
これも、こっちに来てからはじめて食ったんだったな、、最初はわけわからん味だと思ったが、、今は好きだ。

「「「いっただっきまーーっす!」」」
がつがつがつがつがつがつがつ
「ここは、まかない付きなんだぜ!」ドーラ
「全員かい?」
「ああ来ている者全員だ」

ドーラの国らしい、とっても。

「え”ーーー」
という声が向こうから聞こえた。
多分、焼きそばを食べるのがはじめての人魚なんだろう。
最初は、この味は、今いちわけわからん。食えるけど、、、

「でもね、慣れると好きになるわよ」
と言う声が向こうから聞こえた。


「ドーラとユータが持ってくる新種の食事って、こんな感じのが多いよなー」
「・・ああ、そうだな、、皆最初は、え”ー、とか言うけど、2-3度食うと気に入るもんなー、、なぜだろ?」ドーラ
「僕も知りたい」ユータ

なぜなんだろうねぇ、、
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