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後後273 峠の宿2
しおりを挟む良くなったゴラーテに安心し、翌朝の馬車に乗った。
ただ、飲食物はもう少しかかりそうだった。努力しているのはわかった。
今日の停まりはあの峠の宿のはずっつ!!あそこは美味いままだろう!(中18話)
ーー
「・・これ、登りじゃなかったら、次の町まで行けてたんじゃないすかね?」
「おう、まーな。良かっよ。俺、ここに泊まりたかったんだ」
「泉さんもですか。俺も期待していたんっすよ。」
その会話を聞いて嬉しそうになっているアニャータ。
俺らが良いと言ったとこって、だいたいアニャータにも良かったのかな?
ゴラーテからこの峠まで登りの街道。裏街道なのにかなり整備されていた。
我が国から農国へのメイン街道は武国王都からスタリッツア迄の北上ルートだ。今はかなり太い街道になっているだろう。
言うなればこっちの、ゴラーテから農国・・・
あれ?次のラフタス・・
「泉さん?ラスタフって、農国でしたっけ?」
「違うぞ?雰囲気全く農国だが、ありゃウチの国の街だ。ほれ、武国王宮から兵士達が来たろ?」(中22)
そーだった。
ゴラーテの半分もない街だが、村や町ではなく、しっかり自立した街だ。だがドワーフとか居て、エルフのいるサーカス?とかも来るくらいの街だった。
あそこが農国への入り口の街になるんだなー、と、今はじめて認識した。
「農国の最初の街は・・・プスコだったかな」
と泉さんは覚えていた。(中24話)
「その前に峠のちっさな村に泊まった記憶が在ったかな。その先が国境だったかな?」
と泉さん。
俺はそう言われておぼろげに思い出したくらいしか記憶がない。
何気に泉さんすごいね?剣豪だからかなー。
「まぁ俺もしっかりとは記憶していない。どうせ通るんだ。行けば思い出すだろ?」
そらそーだ。忘れてても問題ないしね!!♪
温泉もそのままだった。露天風呂さいこー。寒くなり始めなので丁度良い。のぼせないからね!
ゆったり浸かっても泉さんとアニャータはまだ上がっていなかった。
銭湯じゃないので部屋に帰っている。
基本3人一緒の部屋。別に俺もアニャータも泉さんも気にしない。
泉さんが気を使ってくれたが、まぁ、アニャータはねこ人なので「時期」があるそうです。と言うとわかったようだ。
異族間結婚って、おもしろいよね?!!
結婚する少し前に「子供何人ぐらいがいいの?」って訊いたら、3人かも少し?とか答え、
「あ、ガクさんはひと族なのでねこ族とは違いますね、ねこなので繁殖時期ありますので、そこのところお願いいたします。」
と正座してお願いされてしまいました!
何を?なのか把握はできませんでしたがっ!!
窓から外を眺めて秋の高原のうまい空気を堪能していたら、ほどなくアニャータと泉さん帰ってきて、
「飯行くぞ飯!!」
風呂入ると腹減るよねー、つーか、泉さんは酒だろうな本音は。
昼はともかくも、夕飯に来るのは宿の泊り客のみだ。
朝は前の村を夜明け前から出た馬車や馬が寄るらしい。山に入ると茶店は無いからね。
平地だと、農家がついでにやっていたりするのだ。
相変わらずの美味さだ。丁寧に料理されている。
「やっぱうまいな。」と酒を飲みながら泉さん。
「ホントですね。これは随分・・・」
アニャータもお代わりするくらい。
おかげで夜は早く寝た。
寝付いてすぐ、ハッと気がついた。
「いずみさん?」
「おう、起きてるぞ?」
「気がついたのですけどね、」
「ああ、言ってみ?」
「やっぱここの主人、よーせーっすかね?」
「じゃねーか?俺も布団で思ったわ。」
布団が、前回もそうだったが、天気がすごく良いあたたかな春の日に一日干していた感じになっているのだ。
「ですよねー、妖精?精霊の力を使ってなきゃムリですよねー」
「おう、下行って、おやじと一杯やるか?」
「精霊は寝ませんもんね♪」
「俺らは馬車の中で寝りゃいい」
どこでだって、どの世界だって、いつの時代だって、移動車両の中は寝る場所なのだ!
他の客はもう上がっていた。旅の途中の宿なのだ。皆明日は早いから寝るのも早い。
「おやじー、今からいいかー?」
「へぇ、だいじょうぬでやすが、いんですかい?明日は。」厨房の中から声が返ってきた。
「おう、馬車だからな、中で寝るわ。」
「酒ですかい?」
「おう、燗で2合もらえるか?あと、もしおやじがよけりゃ、いっぱいどうだ?」
「ええ、んじゃすぐ用意しまさぁ」
ーー
少し話すと話は早かった。
ガクと泉から妖精の匂いがするので、自分のこともわかってるんだろうなぁ、とは思っていたとのこと。
「ここでも匂いか・・・」
「俺らにはわからないですけどねー」
「うーん、微かだからなぁ」
「他の匂いに混じらないんスかね?」
「それはないな。独特で、いくら微かでも他の匂いには負けないね」
ふーん・・
「嗅いでみたいな?」
「そーですねぇ」
「こればっかりh・・・」
言いかけて、おやじは耳の上から小枝か爪楊枝みたいのを取り、俺らに振るった。
「お?」
「あ!」
「それが妖精臭」
言い方っつ!!!
「なんか・・いい匂い、なのか?」
「良し悪しというよりも、記憶が匂いになったとか言えばいいのか・・」
「お客さん、詩人だね?でも、まぁあながち間違いってわけでもねーのかな?」
そーなの?
「説明はむつかしくて俺にはできないけどね?」
そーですか・・・
で、今思うと、気づいたらここでもう宿を始めていた、とのこと。
やっぱ、気にしないんだな、記憶しておく必要ない事はもう記憶しておかないというか、引っ張り出せない?
「いやぁ、うちのおっかあ以外に妖精だって知って話をするなんて、3代前のおっかあの時いらいだわ。」
「・・・訊いていいっすか?」
「おう?何だい?」
「おこさん、何人いるんですか?」
「おっかぁ一人に一人なんで、12人?何気にきりがいいな?」
・・・
「みなさん、妖精でしょ?」
「いやぁ、男の子の場合はひとになることもあるんだよなーこれが。俺も最初はあれぇ?とか思っててな、で、老人になって逝くときにな、おっとうありがとう、おらひとで死ねる、ありがてぇ。ってな。堪えたね。」
「そういう、もんなのかな」俺
いずみさんは難しい顔している。
「どうなんだろうな、そういうのでもいいし、妖精で長ーく生きて、あるひ消えていく、ってものいいんだろうし。」
「どう生きたか、だろうかね?」泉さん
「どうだかなぁ、これだけはなぁ」
「こんなこと言っていいのかどうか知らんが、俺は一度死んでる。最後にな、なんか、やっと終える、ってふと思った。」
「苦労して、頑張って生きてきてたんだねぇ。」おやじ
「今思えば、そうかもな・・・、・・そうなんだろうな。」
「なんか、・・・」
「言えよ?」泉さん
「・・なんか、死ぬ間際になって、やっと自分の人生が見えるのかな?って・・・」
「まぁな、気づかないみたいだねぇ、自分じゃ。 でもなぁ、自分のこと、わかってるのも自分だけだと思うぞ?」おやじ
「どうすり・・・、おやじさんは、どう、生きるんですか?」
「俺かぁ?そうだなぁ、一生懸命やって、自分がホントに満足することを常にやってるかな?いつ消えても、ああよかった。って思えるように、かな?・・わかんね!そんときになってみないとな!」
「こんな長生きの生き物がわからんのだ、俺らどうこうしても・・」泉さん
「そりゃ違うんじゃないかなーと思うぞ? ずっと昔な、すんげー山に一人でトンネル掘った人間がいたんだ。もちろん魔法も発見されていない時代。バカにしないやつはいないくらいに周りにバカにされてな。できるわけねーって。妖精たちがな、食い物と健康に協力した。心がとても良い者だったから、俺らはそうせずにはいられなかった。で、向こうに到達して、数日で逝っちまったよ。人生それひとつ。でもな抜けてったあいつの魂が、これほどにないくらい澄んでいた。
・・・
どんだけの坊主が一生修行してもあそこまではムリだろう。あれっきり他には見たことねぇ。」
「傍から見たら、苦労だけの人生、って見る者も多いだろう」
「ああ、そうだ。」
「でも、おっちゃんたち妖精はわかった、知った。」
「死んだあとにはっきりわかった。」
「まぁ、俺はそこまでだいそれたことできないんで、ふつーに生きます、多分」
「俺も、まだ人間なんでな、どうなるかわからんが、今までのようにこれからも生きるだろう。」
「いんじゃねーか?俺だって、こーんな感じでこれからもずっとふつーの妖精だろう。」
・・・
「おやじ、付き合ってくれてありがとうな。俺はもう寝るわ。」
「おれも少し眠くなってきた・・おっちゃんありがとう!悪かったね、仕事あるのに。」
「いや、楽しかったわ。また来てくれな!」
「あ、俺ら、武国の東武領、小館村に住んでるんだ。他にもシューレって妖精いるんで、よかっt
「しゅーれぇええ??」
おや?
「あいつ、まだ消えてねーのか・・・」
おやおや?
「・・なんか・・?」
「いや、あんたらは無関係なんだけどな、ガキの頃いじめられててなぁ」
そういうことは覚えてるもんだよなぁ、特に子供の頃のはきっついもんなー。
「えっと、んじゃ、おっちゃんも大精霊クラスなんだ?」
「え?・・・まぁ、そうなるの、かな?気にしてねーけど?」
妖精って・・
「まぁ、わかった。気が向いたら仕返しにいくから!」
ぶっそうなっつ!!
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