元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

高遠すばる

文字の大きさ
59 / 67
第八章

サファイアの導き2(ユリウス視点)

「君たち、拾っているものを見せてくれるかい」
「わ! びっくりした! うん、いいよ」

 ユリウスが声をかけると、子供たちは一瞬不思議そうな顔をしたが、素直に見せてくれた。

「これは――」

 子供の手のひらにきらきらと輝くそれは、小さくともひとつひとつが繊細な雫の形をしている青い宝石で、少なくとも、王城の付近に小石のように落ちているものではない。

 それに、ユリウスはこの石に見覚えがあった。よくよく見れば見るほど、間違いはない。
 これは、ユリウスがレインに贈ったネックレスのサファイアだ。

「……ベン、ダンゼントを呼べ。騎士団を動かす。イリスレインの捜索だと言えば反対はされないだろう。公爵家の私兵も呼び出せ。このサファイアの続いている方向へ向かう」

 ユリウスは目線を下げて子供たちに尋ねた。

「この青い石はどこへ続いていた?」
「あっち。貴族の屋敷がある一等地のほう。こういうきらきらしたのが馬車道に落ちててさ、貴族の落とし物拾ったらお礼がもらえるかなって、みんなで集めてたんだ」

 ユリウスはサファイアを差し出してくれた少年の頭を撫でて微笑んだ。

「そうか、それは私の婚約者のものなんだ。それを集めておいてくれないか? 必ずお礼をする。アンダーサン公爵と言えば使用人が私のもとへ連れてきてくれるはずだ」
「わかった!」

 嬉しそうに頷く少年の頭をもう一度撫でて、ユリウスは立ち上がる。
 駆けながらやってきたダンゼントと、馬を連れてきたベンジャミンに向かって声を張り上げる。

「こっちだ!」
「ユリウス様!」

 ダンゼントが馬から降りてユリウスに並ぶ。ユリウスはダンゼントの背後の騎士団員たちを見やり、ダンゼントに静かに尋ねた。

「ダンゼント騎士団長、エウルア副団長はいるか?」
「それが、昨日のパーティーから姿が見えず……」

「そうか、彼はオリバーに手を貸している可能性がある」
 思い出すのは、昨日レインをあざけるように見ていたエウルア副団長の姿。
 もっと警戒しておく必要があったのに、それを怠った自分に心底失望する。

 ユリウスの言葉に、ダンゼントがギッと顔を引き締める。

「――承知しました」

 短い返答を聞き、ユリウスは用意された馬に乗った。煌めく青い光を道しるべに、馬を走らせる。朝日に照り映えるサファイアは、小さくともまぶしい光を放っている。
 向かう先は、サファイアの導くところ。

 ――最愛のひとを、もう一度救うために。
感想 4

あなたにおすすめの小説

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~

糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」 「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」 第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。 皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する! 規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

モブ令嬢、当て馬の恋を応援する

みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。

悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました

ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。 王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている―― そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。 婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。 けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。 距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。 両思いなのに、想いはすれ違っていく。 けれど彼は知っている。 五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、 そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。 ――我儘でいい。 そう決めたのは、ずっと昔のことだった。 悪役令嬢だと勘違いしている少女と、 溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。 ※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり

【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~

ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、 夜会当日── 婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、 迎えに来ることはなかった。 そして王宮で彼女が目にしたのは、 婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。 領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、 感情に流されることもなく、 淡々と婚約破棄の算段を立て始める。 目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、 頭の中で、今後の算段を考えていると 別の修羅場が始まって──!? その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、 エヴァンジェリンの評価と人生は、 思いもよらぬ方向へ転がり始める── 2月11日 第一章完結 2月15日 第二章スタート予定