7 / 11
七:鍵
しおりを挟む
沙華が俺の本を読んでいる姿を、しばらく黙って眺めていた。
眼鏡一つで、これほどまでに印象が変わるものか。
あれほど焦点の合わなかった赤い瞳が、紙の上の文字を追うたびにわずかに揺れ、感情の気配を帯びる。
長い睫毛が硝子越しに影を落とし、頬の線をひどく幼く見せている。
無防備だ。俺という客がいることを完全に忘れている。
だが今、その無防備さがどうしようもなく胸に刺さった。
この少年はいつも、静かで、淡々としていて、まるで人の形を借りただけの白蛇の化生のようだったのに。
今は、ただの『生きた人間』だった。
頁をめくる指が、微かに震えている。
読み慣れていないせいか、感情が動いているせいか、それはわからない。
ただ、その仕草がどうしようもなく愛おしく見えてしまう。
声をかけないまま見ていたが、視線に気付いたのか沙華がふっと顔を上げた。
眼鏡の奥で、以前よりよく光を捉える瞳が真っ直ぐにこちらを射抜く。
目が合った。刹那、胸の奥が跳ねる。
その一瞬で、無防備だった沙華の表情が僅かに変わった。
読みかけの本をぱたんと閉じ、膝に置いたそれを静かに撫でてから、こちらへ体を向けた。
そんな動作だけで、何故か喉がひどく乾く。
沙華は立ち上がり、ゆっくりと歩み寄ってきた。
どこか存在が希薄に思える軽い足音なのに、俺の耳にはいやに響いて聞こえた。
「……我妻さん」
至近距離で声をかけられて、呼吸が止まりそうになるのを必死に隠した。
眼鏡越しの紅は、今までのどの沙華よりも鮮やかな色彩で、俺を捕らえて離さない。
「すみません、本が面白くて仕事を忘れていました……俺、こんなに読めるのが、本当に嬉しくて……」
申し訳無さそうに言われたが、声色には喜びが滲んでいる。
その無自覚な甘さが、どんな美辞麗句よりも胸をざわつかせた。
「そんなことは気にしなくていい」と言ってやろうとしたが、その前に沙華が俺の顔を覗き込んで告げた。
「俺は、あなたに恩が出来ました。そして、まだ読みかけではありますが……あの本に書いてあったあなたの『嗜好』を……多分、理解しました」
「…………え?」
夢のように浮ついていた気持ちが一気に現実に引き戻される。
嗜好?俺の嗜好って何だ?
情報を処理しきれていないうちに、沙華は更に続けた。
「今まで俺の知らなかった分野ですが、あれが『耽美』というものなのでしょう? 『支配と陶酔』、『献身』、『服従』……それが我妻さんの求めているものなのだと、読み取れました」
思わず、絶句した。
違う。断じて違う。俺が書いているのは美学と思想であって、己の性的嗜好ではない。
いや、違わないのか?そもそも俺が沙華に興味を持ったのは、その在り方に『耽美と退廃』の気配を感じたからではないのか?
対立する思考が混線している俺の顔を見て、沙華がふ、と微笑んだ。
「……ふふ。我妻さんて、こんなに百面相をしていたんですね。大丈夫ですよ、俺自身が『耽美』を理解したいと思っているんです。あなたにちゃんと『返礼』をするために、最適な形を取るだけですよ」
「……沙華、お前が?耽美に?興味があるのか……?」
その美しい微笑みと言っている内容が噛み合わずに、作家だというのに意味の無い垂れ流しのような言葉しか返せない。
しかし、ふと思い出す。この少年が、支配される悦びの中でしか自分を解放できないということを。
それならば、この提案は、沙華の嗜好を満たすということにもなるのではないか?
これは利と利が噛み合った、嗜好の相互補完と言っていい。……いや、もはや宿命かもしれない。
「……沙華、お前の気持ちはわかった。ならば俺に、お前の解釈した『耽美』を見せてくれ……」
沙華の両肩を掴んで、真っ直ぐ目を見て言った。
そして沙華も、至極神妙な面持ちで頷いた。
そうして完成したのが、再び俺のネクタイを使い、両手首を後ろ手に縛られて跪く沙華の姿だった。
美しい。美しいが、なんだ、これは?
手伝っておいて呆然とする俺をよそに、沙華は大真面目な顔でうんうん頷いている。
「ありがとうございます、これで完璧です。では、我妻さん……俺の『返礼』を、受け取ってください……」
沙華は跪いたまま口でつい、と俺の着物の袖を引き、座るように促した。
されるがままに座り込むと、沙華がゆっくりと体を密着させてきて、その顔が俺の首筋に埋まる。
そして、濡れた舌の感触が、鎖骨から喉仏に走った。
「……っ!」
思わず息が詰まった。
同じような愛撫は何度も受けているが、状況はここまで倒錯していなかった。
バランスが取り難いのか不安定に揺れる体と、赤く小さな舌が、いやに扇情的に見えた。
首筋、耳朶、肩口。手が使えないというのに口だけで器用に俺の襟をはだけさせて、唇を這わせて口付ける。
「あなたに服従します」などと言われた訳ではないのに、その艶態だけで言葉以上にそれを表してみせる沙華に、情欲以上に創作意欲を刺激された。
沙華の唇はゆっくりと、俺の体の下へ下へと降りていく。
そして腰の前で止まり、ズボンのファスナーを口で咥えて下げ、昂りを露出させた。
「……ああ、眼鏡のおかげでよく見えますね。これが、俺の内部に入って……ぐちゃぐちゃに、掻き回していたんだ……」
どこか陶酔したような吐息と共に呟いて、そのまま口腔内に含まれた。生温かく濡れた粘膜に包まれ、ぞくりとするような快感が腰から背へ上ってくる。
両手を拘束されたまま、白く儚げな顔貌が、その薄い唇に男のものを咥えている。
その光景は、背徳と猥雑が極まった美の顕現に他ならなかった。
「んぅ……っ、あがつま、さん……気持ちいい、ですか……?」
「……ッ、待て沙華、これ以上は……悦すぎて、我慢が……」
視覚と触覚の暴力に脳の中枢を殴られて、震える情けない声で静止するしかなかった。
沙華は微笑み、つ、と唾液の糸を引きながら口を離した。
「……ふふ。悦くなってる我妻さんの顔も、よく見えます。では、このまま俺が、上に乗って動きますね……」
上体を起こして膝立ちになった沙華が、腹の上に跨った。
腰を揺らしながら俺のものを秘部にあてがい、ゆっくりとその体内に飲み込んでいく。
「……は、ぁ……っ、あ……ッ!」
内部を犯す熱にその細い体全てを支配されながら、尚も献身を尽くそうと息を乱し、肢体を震わせる。
目に映る姿はひどく被虐的なのに、その『耽美』に圧倒され精神を侵されているのは、俺の方だった。
「……っあ、んん……ッ、きもち、いい……っ」
沙華が主体となり動いていることで、自然と己の快楽を得やすい箇所も擦れるのか、眼鏡越しに見えるその赤い瞳は情欲に濡れていた。
腰を激しく上下させて、欲を貪るように喰らう沙華の嬌容は劣情を煽り立て、見ているだけで絶頂に達しそうだった。
「はっ、ぁ、ぅあぁ……っ!」
沙華の声が一際高く上擦り、白い喉を仰け反らせながら達した時、俺もその内部に精を放っていた。
上体を支えられなくなり、俺の胸に倒れ込む沙華を受け止めて、その手の拘束を解いてやる。
いくら拘束具が柔らかくても、無理な体勢で動き続けたせいで、手首には赤い痕がくっきり残っていた。
その痛ましい痕跡すら、美しく体現された芸術の残滓に見えた。
「……沙華。お前の『耽美』は、圧倒的だった……自覚は無いようだが、芸術を理解する才能があるのではないか?」
「……そうですか?我妻さんの書いていた内容を、俺に出来る解釈でやってみただけですが……気に入ってもらえたなら、良かったです」
抑えられない感嘆を事もなげに返されて、不遜どころか末恐ろしさすら感じた。
理解したつもりになる度に、この少年の底は深淵のさらに奥なのだと思い知らされる。
沙華は乱れた髪を手櫛で整え、眼鏡を掛け直しながら淡々と言った。
「……視界が鮮明になったので、観察にそこまで神経を割かなくてもよくなりましたね。これなら目隠しをしないでも、あなたの望みに沿えそうです」
俺にはその言葉の後半部分しか理解できなかったが、沙華の満足気な表情に衝動が湧き起こり、気付けば頭を撫でていた。
眼鏡一つで、これほどまでに印象が変わるものか。
あれほど焦点の合わなかった赤い瞳が、紙の上の文字を追うたびにわずかに揺れ、感情の気配を帯びる。
長い睫毛が硝子越しに影を落とし、頬の線をひどく幼く見せている。
無防備だ。俺という客がいることを完全に忘れている。
だが今、その無防備さがどうしようもなく胸に刺さった。
この少年はいつも、静かで、淡々としていて、まるで人の形を借りただけの白蛇の化生のようだったのに。
今は、ただの『生きた人間』だった。
頁をめくる指が、微かに震えている。
読み慣れていないせいか、感情が動いているせいか、それはわからない。
ただ、その仕草がどうしようもなく愛おしく見えてしまう。
声をかけないまま見ていたが、視線に気付いたのか沙華がふっと顔を上げた。
眼鏡の奥で、以前よりよく光を捉える瞳が真っ直ぐにこちらを射抜く。
目が合った。刹那、胸の奥が跳ねる。
その一瞬で、無防備だった沙華の表情が僅かに変わった。
読みかけの本をぱたんと閉じ、膝に置いたそれを静かに撫でてから、こちらへ体を向けた。
そんな動作だけで、何故か喉がひどく乾く。
沙華は立ち上がり、ゆっくりと歩み寄ってきた。
どこか存在が希薄に思える軽い足音なのに、俺の耳にはいやに響いて聞こえた。
「……我妻さん」
至近距離で声をかけられて、呼吸が止まりそうになるのを必死に隠した。
眼鏡越しの紅は、今までのどの沙華よりも鮮やかな色彩で、俺を捕らえて離さない。
「すみません、本が面白くて仕事を忘れていました……俺、こんなに読めるのが、本当に嬉しくて……」
申し訳無さそうに言われたが、声色には喜びが滲んでいる。
その無自覚な甘さが、どんな美辞麗句よりも胸をざわつかせた。
「そんなことは気にしなくていい」と言ってやろうとしたが、その前に沙華が俺の顔を覗き込んで告げた。
「俺は、あなたに恩が出来ました。そして、まだ読みかけではありますが……あの本に書いてあったあなたの『嗜好』を……多分、理解しました」
「…………え?」
夢のように浮ついていた気持ちが一気に現実に引き戻される。
嗜好?俺の嗜好って何だ?
情報を処理しきれていないうちに、沙華は更に続けた。
「今まで俺の知らなかった分野ですが、あれが『耽美』というものなのでしょう? 『支配と陶酔』、『献身』、『服従』……それが我妻さんの求めているものなのだと、読み取れました」
思わず、絶句した。
違う。断じて違う。俺が書いているのは美学と思想であって、己の性的嗜好ではない。
いや、違わないのか?そもそも俺が沙華に興味を持ったのは、その在り方に『耽美と退廃』の気配を感じたからではないのか?
対立する思考が混線している俺の顔を見て、沙華がふ、と微笑んだ。
「……ふふ。我妻さんて、こんなに百面相をしていたんですね。大丈夫ですよ、俺自身が『耽美』を理解したいと思っているんです。あなたにちゃんと『返礼』をするために、最適な形を取るだけですよ」
「……沙華、お前が?耽美に?興味があるのか……?」
その美しい微笑みと言っている内容が噛み合わずに、作家だというのに意味の無い垂れ流しのような言葉しか返せない。
しかし、ふと思い出す。この少年が、支配される悦びの中でしか自分を解放できないということを。
それならば、この提案は、沙華の嗜好を満たすということにもなるのではないか?
これは利と利が噛み合った、嗜好の相互補完と言っていい。……いや、もはや宿命かもしれない。
「……沙華、お前の気持ちはわかった。ならば俺に、お前の解釈した『耽美』を見せてくれ……」
沙華の両肩を掴んで、真っ直ぐ目を見て言った。
そして沙華も、至極神妙な面持ちで頷いた。
そうして完成したのが、再び俺のネクタイを使い、両手首を後ろ手に縛られて跪く沙華の姿だった。
美しい。美しいが、なんだ、これは?
手伝っておいて呆然とする俺をよそに、沙華は大真面目な顔でうんうん頷いている。
「ありがとうございます、これで完璧です。では、我妻さん……俺の『返礼』を、受け取ってください……」
沙華は跪いたまま口でつい、と俺の着物の袖を引き、座るように促した。
されるがままに座り込むと、沙華がゆっくりと体を密着させてきて、その顔が俺の首筋に埋まる。
そして、濡れた舌の感触が、鎖骨から喉仏に走った。
「……っ!」
思わず息が詰まった。
同じような愛撫は何度も受けているが、状況はここまで倒錯していなかった。
バランスが取り難いのか不安定に揺れる体と、赤く小さな舌が、いやに扇情的に見えた。
首筋、耳朶、肩口。手が使えないというのに口だけで器用に俺の襟をはだけさせて、唇を這わせて口付ける。
「あなたに服従します」などと言われた訳ではないのに、その艶態だけで言葉以上にそれを表してみせる沙華に、情欲以上に創作意欲を刺激された。
沙華の唇はゆっくりと、俺の体の下へ下へと降りていく。
そして腰の前で止まり、ズボンのファスナーを口で咥えて下げ、昂りを露出させた。
「……ああ、眼鏡のおかげでよく見えますね。これが、俺の内部に入って……ぐちゃぐちゃに、掻き回していたんだ……」
どこか陶酔したような吐息と共に呟いて、そのまま口腔内に含まれた。生温かく濡れた粘膜に包まれ、ぞくりとするような快感が腰から背へ上ってくる。
両手を拘束されたまま、白く儚げな顔貌が、その薄い唇に男のものを咥えている。
その光景は、背徳と猥雑が極まった美の顕現に他ならなかった。
「んぅ……っ、あがつま、さん……気持ちいい、ですか……?」
「……ッ、待て沙華、これ以上は……悦すぎて、我慢が……」
視覚と触覚の暴力に脳の中枢を殴られて、震える情けない声で静止するしかなかった。
沙華は微笑み、つ、と唾液の糸を引きながら口を離した。
「……ふふ。悦くなってる我妻さんの顔も、よく見えます。では、このまま俺が、上に乗って動きますね……」
上体を起こして膝立ちになった沙華が、腹の上に跨った。
腰を揺らしながら俺のものを秘部にあてがい、ゆっくりとその体内に飲み込んでいく。
「……は、ぁ……っ、あ……ッ!」
内部を犯す熱にその細い体全てを支配されながら、尚も献身を尽くそうと息を乱し、肢体を震わせる。
目に映る姿はひどく被虐的なのに、その『耽美』に圧倒され精神を侵されているのは、俺の方だった。
「……っあ、んん……ッ、きもち、いい……っ」
沙華が主体となり動いていることで、自然と己の快楽を得やすい箇所も擦れるのか、眼鏡越しに見えるその赤い瞳は情欲に濡れていた。
腰を激しく上下させて、欲を貪るように喰らう沙華の嬌容は劣情を煽り立て、見ているだけで絶頂に達しそうだった。
「はっ、ぁ、ぅあぁ……っ!」
沙華の声が一際高く上擦り、白い喉を仰け反らせながら達した時、俺もその内部に精を放っていた。
上体を支えられなくなり、俺の胸に倒れ込む沙華を受け止めて、その手の拘束を解いてやる。
いくら拘束具が柔らかくても、無理な体勢で動き続けたせいで、手首には赤い痕がくっきり残っていた。
その痛ましい痕跡すら、美しく体現された芸術の残滓に見えた。
「……沙華。お前の『耽美』は、圧倒的だった……自覚は無いようだが、芸術を理解する才能があるのではないか?」
「……そうですか?我妻さんの書いていた内容を、俺に出来る解釈でやってみただけですが……気に入ってもらえたなら、良かったです」
抑えられない感嘆を事もなげに返されて、不遜どころか末恐ろしさすら感じた。
理解したつもりになる度に、この少年の底は深淵のさらに奥なのだと思い知らされる。
沙華は乱れた髪を手櫛で整え、眼鏡を掛け直しながら淡々と言った。
「……視界が鮮明になったので、観察にそこまで神経を割かなくてもよくなりましたね。これなら目隠しをしないでも、あなたの望みに沿えそうです」
俺にはその言葉の後半部分しか理解できなかったが、沙華の満足気な表情に衝動が湧き起こり、気付けば頭を撫でていた。
1
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる