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12.悪あがき(マーガレット視点)
しおりを挟む私は男爵家の娘。
マーガレット。
顔もスタイルも悪くないと思う。
それなりに裕福な家で、それなりに過ごしてきた。
が、ちょっと失敗してしまった。
男爵家を出入りしている商人デニスの子どもを孕ってしまったのだ。
お互い、真剣に交際していたわけではないが、デニスにもしかしたら妊娠したかも…。と、伝えると慌てた顔で出て行ってしまった。きっともう顔を見せないだろう。
そもそも私もデニスと結婚して平民になるなんて、まっぴらごめんだ。
この容姿を生かして上流貴族の妻となるのだ。
お父様に気付かれたら大変だ。
きっと家から追い出されてしまうだろう。
(さぁ…どうしよう。早くしないと…。)
今日は多くの貴族が集まる夜会が開かれる。
(これはチャンスだわ。絶対今日、ウブな跡取り息子を捕まえて見せる…!!)
いつもより気合いを入れたドレスを選び、夜会に参戦する。
(デニスは金髪碧眼だから、同じような色の髪の毛と瞳の色で…。ウブそうな男で…。できれば奥様や婚約者とあまり仲良くなさそうな…。あっ!アレなんて良いんじゃない~!?)
そうしてゴードンに狙いを決め、睡眠薬を入れた酒を飲ませ、部屋に連れ込み、起きそうになったら服を脱がし、自分も脱いだ。
起きたゴードンは異様に喜んでいて少し怖かったが、上手くいった。
その日からゴードンは毎日のように会いに来た。
あまりにも盲目的なので、少し早いとは思ったが言ってみた。疑われたら、勘違いかもしれないと言えば良い。
「私、妊娠しているようなのです…!!」
(これで少しずつ私が侯爵家の跡取りの妻になってみせるわ…!!)
そう思ったが、なんとゴードンは、すぐに妻のフィオナに伝え、すぐに離婚し、すぐにフィオナを追い出したのだ…。
「先日の夜会で私は運命の出逢いをした…!!子どもも産めないお前は出て行け!!!」
そしてフィオナは出て行く時に言った。
「それは…ゴードン様の子どもなのですか…?」
……。きっとフィオナは気付いている。お腹の子がゴードンの子では無い事に。それもそのはず。先日の夜会から10日程しか経っていないのだから…。
しかし、気付きながらも負けを認めたのか、黙って侯爵家を出て行った。
(まぁ、私が侯爵家の跡取りの妻になれるならどうでも良いわ。ふふふふふ!!!)
次の日から侯爵家に住む事になり、使用人も思う所はあるようだが、身重と言うこともあり丁寧に扱われている。
ある日、侯爵家の次男であるニケ様が王宮から帰ってきてすぐに私とゴードンの元へやってきた。
私は一目見て、心奪われた。
こっちにしておけば良かった…!!
そう後悔するが、もう仕方がない。隙があれば取り入ろうとしたが、ゴードンよりは賢いようだ。中々乗ってこない。
そして、そうこうしている間になんとニケ様がフィオナと結婚したと言うのだ…。
私の誘いを断っておいてありえない…。
私に対する嫌がらせ…!?
ありえないありえないニケ様……。
(うっ…!お腹が痛い…!!)
陣痛が始まる。
(ううううぅこんなに痛いなんて聞いてないいいい!!)
そうして命からがら出産をして我が子を見る。
「く、、黒髪…!?」
(まさか…デニスの子じゃ…無い!!他に思い当たるのは……。仮面舞踏会に参加した時の男の方…!?)
ゴードンの顔を見ると、馬鹿なゴードンでも流石に戸惑っている。
(まずいまずいまずい…!!)
とりあえず、産後気が触れたフリをした。
時間稼ぎにしかならない事は分かっている。
子どもも、もう3ヶ月になってしまった。
そろそろどうにかしないといけない…。
そんなある日、使用人が話しているのを耳にする。
「神殿長御一行が、巡業の為に神殿を離れておられるようですね…。」
「あら、では聖女がお生まれになってもすぐに検証されないのでは??」
「たしかに…。」
(神殿長が聖女かどうかの確認をするのよね…。神殿長がいない…。聖女の検証がされない…。)
「これだわ…!!」
急いでペンを取るのだった。
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