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13.急展開(ニケ視点)
しおりを挟むーーーニケ視点
マーガレットの子どもが産まれて3ヶ月、気が触れて引きこもっていたと思ったら、急展開があった。
なんと、産まれた子どもが聖女だと言い張っているらしいのだ。
聖女の額には、産まれた時から十字の印があるはずだ。
産まれた時にはそのような物があったとは報告されていない。
隣りで心配そうなフィオナに話す。
「あの女の子どもだが、聖女だというのは、俄には信じ難い。子どもを隠すようにしてあまり人に見せようとしないようだし、そもそもあの女から聖女が産まれる訳が無い。それに、聖女だったのなら産まれてすぐに報告があるだろう。」
「そうですわね…。」
「大方、産まれた子どもがゴードンに似ていなかったから、聖女だと嘘をつき、聖女ならば髪の色や目の色が両親と違っていても不思議では無いと言いたいのでは無いだろうか…。ゴードンも聖女を産んだとなればあの女を追い出す訳にはいかないからな…。」
「しかし、そんな聖女様を謳った嘘なんてついたら…。大逆罪ではありませんか。」
「そうだ…。さすがの愚兄でもその事には気付くと信じたいが…!!サンダーム侯爵家の嫡男が、我が子を聖女と偽ったなんて事になれば、侯爵家はタダでは済まないだろう…。ゴードンはどうでも良いが父が心配だ。とりあえず、私はすぐに侯爵家へ向かい、あの女を問い詰める。ゴードンが間違ってもあの女を信じて、子どもが聖女だと外に吹聴していなければ良いのだが…!!」
「そうですね…。私も共に参ります。」
「フィオナ。心配してくれてありがとう。しかし、フィオナはここにいてくれ。私はあの2人にフィオナを会わせたくない…。」
産まれた子が聖女と嘘をつくような女がフィオナに何をするかわからない。
そして、心無しかフィオナの体調が悪いように感じる。
「分かりました…。それならばお気をつけて…。」
侯爵家へ馬ですぐに向かう。
屋敷へ入ると、困惑した様子の使用人が声をかけてくる。
「ニケ様…!!大変な事になっております…!!マーガレット様が産まれた子どもを聖女だと言い、気にいらない者や、逆らった者を後々に酷い目に遭わしてやるなんて怒鳴ったりしているんです…!!私たち、もう耐えられません…!!」
「そのような権限があの女にあるわけないだろう!?」
「そうなのですが…。万が一お子様が聖女様だったら…。そう思うと強く出られず…。旦那様も体調が優れなくて…。」
「なんだと…!?ゴードンは何をしているんだ!」
あの女は嘘をついている上に、この侯爵家の使用人に感謝するどころか、蔑ろにしているらしい…。断じて許される事では無い。
そこに、ゴードンが現れた。
「おや?ニケでは無いか。」
「ゴードン…!!お前、この状況はどういう事だ…!!」
「おやおや?そのような口を聞いて良いのかな?」
「なんだと…!?どういう事だ…!?」
「聖女様の父親に向かってそのような口を聞いて良いのかって言っているんだよ…!!」
ニヤニヤしながらゴードンが言う。
「ゴードン…!お前…!まさか、産まれた子どもが本当に聖女だと信じているのか…!?そもそも髪の色と目の色を見たか…!?お前の子どもでは無いのが一目瞭然だろう!!」
「なんだと!?お前、聖女を侮辱するのか…!!兄弟だと思い今まで大目に見ていたが、こればかりは許さんぞ!」
(昔から愚兄だとは思っていたが…!!ここまでだとは…!!)
「それならば、産まれた子どもを見せてみろ…!!」
「あらぁ!?ニケ様じゃないですかぁ!?そんなにこの子が見たいのですかぁ!?」
子どもを抱いたマーガレットがやってきた。
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