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25.フィナーレ1
しおりを挟むあの騒動から約一年が経った。
あの後ゴードンはというと、
マーガレットに騙されていたという事をほんの少し考慮され、足首に罪人の刻印を押され、二度と国内に入らない事を約束させた上で、比較的安全な方面の国境に捨てられた。その後の情報は何も無い。
マーガレットは、
マーガレットの部屋から毒殺用の毒が発見されたり、侯爵家の長男を騙した件や、我が子を不当に虐げその上意図的に我が子を聖女と偽った事などが重罪とされ、額に罪人の刻印を押され、危険で誰も寄り付かない場所の国境に捨てられた。
その数日後、付近でマーガレットの着ていた靴や服が見つかったらしいが、詳細は分かっていない。
ちなみに、マーガレットの実家であるウォール男爵家は、何も知らなかったとはいえ、娘の罪の責任を感じ爵位を返上した。
同じ母親として、子どもを蔑ろにしたマーガレットはとても同情はできない。
そして、ノエルだが、
何度もデニスがノエルに会いに来ては仲睦まじく接している様子を見て、乳母メラニーは泣く泣くデニスに託す事にした。
メラニーはひどく気落ちはしていたが、メラニーにもノエルと同じ月齢の娘ジェニーがいるので、いつまでも落ち込んでいられないと、娘ジェニーと我が娘フルールに惜しみない愛情を注いでくれている。
ニケ様は、正式に侯爵家の跡取りとして決まり、侯爵家の仕事と皇子の護衛にと忙しそうだ。
侯爵家の跡取りとして決まった際に、皇子に、
「今までお世話になりました。これからも王家に変わらぬ忠誠をお誓いします。」
と挨拶をしたところ、
「え?辞めるなんて許さないよ?これからもよろしくね?」
と、皇子の笑顔の一言でまさかの続投が決まったそうだ…。
ニケ様の同僚が先日家に来た時、
「あの時は、隣で笑いを堪えるのに必死だった!」
と大笑いして教えてくれた。
フルールはというと、つい先日歩き出し、表情も豊かになり侯爵家の皆を虜にしている。
聖女と言えども、何も変わらない甘えん坊な一歳の女の子だ。
今日はそんなフルールを預けて、夫婦で隣国に外交で来ている。
「ニケ様、あの作物は何でしょう?不思議ですね。」
「そうだな。我が国では見た事が無いなぁ…。」
使用人や護衛はいるものの、こんな風にニケ様と2人歩くなんて本当に久しぶりだ。仕事とはいえデートらしくって嬉しい。
「この後、この国で有名なレストランへ行ってみよう。」
「楽しみですわ。」
他愛も無い話をしていると、ニケ様がピタリと歩みを止めた。
「どうされたのですか…?」
ニケ様の視線の先を追うと、
「あ、あれは…!」
そう言うと、向こうもこちらに気付き声を上げる。
「なっ!!ニケとフィオナ!!なぜこんな所に!!」
「ゴードン!」
「ゴードン様。」
何と、そこには大男と仲睦まじく歩くゴードンの姿があった。
「……。少し時間はあるか?」
ゴードンに聞かれ、ニケ様の顔を見る。
「あぁ。少しくらいなら。」
「ありがとう。では少し場所を変えよう。」
一年前の傲慢なゴードンからは想像もできないくらい、憑き物が取れたかのような表情のゴードンと大男と人気が少ない場所へ移動した。
「久しぶりだな、ニケ、フィオナ。元気そうで何よりだ。あ、これはダンだ。一緒に暮らしている。」
ダンと紹介された大男はペコリと礼をする。
「久しぶりだな。ゴードンも、苦労した様子だな。」
色白だったゴードンの肌はこんがり焼け、細かった手足も逞しくなっている。
「あぁ。国外追放になって行くあてもなくここで朽ち果てるのかと座りこんで死を待っていたんだ。そこに、ダンが通りかかって助けてもらったんだ。それからはダンに教えてもらって木こりをしている。中々悪くないんだ。こんな生活も。」
貴族だった時の様子とは打って変わって晴れ晴れとした表情をしている。
「それで…。ニケとフィオナには2度と会えないと思って諦めていたが…。会えたこのチャンスを逃したくない。今まですまなかった…!!!私にも大切な人ができてやっと2人の気持ちが分かったんだ…!!」
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