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26.フィナーレ2
しおりを挟むあの傲慢なゴードンが頭を下げた。
それにはニケ様も驚いた様子だった。
「許してもらおうとは思っていない…!ただ謝りたかったんだ。私は長男ではあったが、ニケの方がどんな面でも優れていた。先に産まれたのがニケだったら良かったと祖父や父が話しているのも聞いた。私は妬んでいたんだ。ニケを…。自分で自分に私は悪くない私が1番優れていると言い聞かせてきた。そうしなければ壊れてしまいそうだった。しかし、その傲慢さが多くの人を傷つけ、一年前の事件の原因となってしまった。」
「ゴードン…。」
「フィオナ。私はフィオナを不当に追い出した。すまなかった。」
「いえ…。もう終わった事ですので。こうしてニケ様と結婚できたのも、ある意味ゴードン様のおかげですわ。」
「ありがとう、フィオナ。」
「そうしてゴードン。その大切な人とは…?」
「あぁ。その実は…。ダンだ。」
そう言われて、ダンはポッと顔を赤らめる。
「そうなのか。その…男同士であるとこれから様々な困難が待ち構えているだろうが…。」
この国では、同性愛は表向きには禁止されている。
「あぁ。分かっている。しかし、それでも2人で生きて行こうと思っている。」
「そうか。それならば何も言うまい。それでは……元気で。」
「あぁ。ニケも。フィオナも。」
そうして2人と別れた。
「驚きましたが…。あのような幸せがあっても良いのでしょうね。」
「あぁ、そうだな。しかし…。今までのゴードンの相手の女性に、ゴードンの不能は貴女のせいでは無かったのですよと教えてあげたいものだ。」
「ふふ。そうですね…。」
そう笑い合いながら帰路へ着くのだった。
~~15年後
あの後、3男1女の4人の子どもが産まれ、我が侯爵家は賑やかになった。
そしてやっとニケ様は護衛騎士を辞任して、侯爵家の公務に専念する事ができるようになった。
陛下(かつての皇子)は不貞腐れている様子だったが…。
そして遂に今日。
16歳になったフルールが神殿へ行ってしまう日だ。
「お父様…。そのように悲しそうな顔をしないでくださいな。いつでも会えますから。」
「そ、そうだな…。フルールは皆に必要とされているのだ。行かねばな。」
「そうですよ、父上!大丈夫です!私がもう少し大きくなったら、騎士団に入り聖女の護衛騎士になってフルール姉様を守ってみせますから!!」
12才の次男のマイキーが言う。
「マイキー。お前が真っ先に怪我をしてフルール姉様に治癒してもらっていそうだけれどな!!」
長男のニカルスがそう言うと、家族皆で笑い合うのだった。
「さぁ、迎えが来たようね。フルール。貴女が私の娘である事誇りに思います。聖女として辛い事や苦しい事もあると思いますが…。家族はいつでもここにいますからね。いつでも貴女を待っています。」
「はい。お母様。私もお母様が私のお母様である事、誇らしく思っています。弟や妹達をよろしくお願いします。では、行ってきます!!」
「フルール…。ありがとう。元気でね。」
そう言って馬車に乗り込むフルール。
遠くなっていく馬車に向けて、いつまでもいつまでも家族で手を振り続けるのだった。
~fin.
本編は最後ですが、
15年後のノエル君を引き続き投稿したいと思います!よろしくお願いします。
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