(完結)浮気相手と子どもができたから別れてくれ?いったい誰の子ですか?

ちゃむふー

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閑話.聖女と偽られて(前編)

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私はオレイン商会のノエル。今日で15歳だ。

父のデニスと共に働いている。
昔は小さい商会だったようだが、今ではこの国屈指の大商会と成長している。

私には母がいない。何か訳ありなようで、理由は聞いていない。

父は息子の私から見たら中々の良い男だと思うのだが、(まだ30歳だし。)再婚はしないようだ。再婚を進めるものの、女は懲り懲りだと言っていた。
中々酷い目にあったのだろうか…。



まあしかし、母親がいなくとも商会の従業員や父が愛情たっぷりに育ててくれたので寂しい思いは全くして来なかった。


今日も忙しい一日が終わり、やっと
夕食を取ることができた。

誕生日という事もあり、私の好きなメニューばかりだった。

「ふー!今日も疲れた!では、父さん。お休みなさい。」

そう言って席を立とうとすると、

「ノエル…。話がある。座りなさい。」

いつもとは違う雰囲気の父に言われ、座り直す。


「ノエル、15歳の誕生日おめでとう。よくここまで立派に育ってくれた。まず、初めに言っておく。ノエル。お前は私の自慢の息子だ。」

「な、なんだよ父さん。そんな改まって…照れるじゃないか~。」

そう笑って見せたが、父は真剣な表情だった。

「父さん…?」

父がふーっと大きく息を吐く。

「お前も今日で15歳。立派な大人だ。お前の生い立ちや母について知る権利がある。覚悟はいいか?」

今まで、母の事は誰も教えてくれなかった。聞いても誰も教えてくれないので、いつからか途中で聞くのをやめた。

「……はい。」


「お前は、今は無いがウォール男爵家の娘と私の子どもだ。」

「私に貴族の血が…。」

「男爵家と取引していた時にそこの令嬢マーガレットに脅され関係を持った。そしてノエルを妊娠したんだ。」

「ええっ!!」

「私は勿論結婚するつもりだった。しかし、マーガレットは侯爵家の息子との子どもとして育てたかった。だから私にも侯爵家にも何も言わず侯爵家の息子と結婚したんだ。」

「酷いな…。」

「しかし、産まれた子どもは黒髪に灰色の目だった。それを見た侯爵家の息子は本当に自分の子か怪しんだ。」

私は黒髪で、伯母や祖母と同じ髪色だ。瞳の色も、昔はもっと濃い灰色だったと聞いている。今では父とあまり変わらない灰色がかった青色だが…。


「そこで、あろう事かノエルを聖女と仕立てようとした。額に自分で十字の刻印を書いて。」


「えええーーー!!そんなのすぐにバレるじゃ無いか!!」


「そうだ。しかしその頃ちょうど大きな厄災があり神殿長が留守にしていて聖女検証まで時間がかかったんだ。だから、聖女検証が行われる直前にノエルを消してしまおうと企んでいたんだ。」


「えっ…。」

背筋がゾクリとした。

「しかし、その事に気付いた今のサンダーム侯爵が、マーガレットにわざと予定よりも遅い日を検証の日だと教え、油断させた所に突然検証を行いその計画を阻止したんだ。私も侯爵に連絡を貰って初めてその事を知り、すぐ神殿に駆けつけたんだ。」


サンダーム侯爵が…。

「そしてそのマーガレットという女は…。」


「あぁ。悪質だということで、罪人の刻印を額に押して国外追放となった。その後は………。行方不明だ。」


「はは!!私の額に偽の刻印を書いて、自分の額に罪人の刻印を押されるなんて、とんだ因果応報じゃないか!!」

ちょっと笑ってしまう。

笑う私を見た父が驚いた顔で私を見る。

「その…ショックでは無いのか…?自分の母親がこのような人間で…。」

(あぁ、優しい父さんは私の事を心配してそんな思い詰めた顔をしていたんだな。目の下にはクマがある。きっと、今日の事が心配で眠れなかったのだろう。)


「幼い頃、母親の事をお爺さんや父さんや従業員の皆に聞いた事があったけれど、皆気まずそうに誤魔化したり黙り込んでいたから、よっぽど酷い母親なのは予想ついていたからね。まぁ…。思っていたよりもちょっと酷かったけど!」


「そ、そうか…。すまなかったな…。」


「何で父さんが謝るんだよ!私は母親がいなくとも、こんなに幸せなんだからさ!ありがとう、父さん。」


「ううっ…。」

父が泣き崩れる。
その背中にそっと手を添えるのだった。




「でも、よくそんな女の元で私は一歳まで生き延びる事ができたもんだ…。」


「あぁそれなんだが、ノエルにはメラニーさんというとても素晴らしい乳母がついていて…。ノエルと離れる時もとても泣いておられた。ノエルはとても愛されていたよ。」


マーガレットの手から守ってくれ、我が子のように愛してくれた乳母がいたなんて…。


「…父さん!私、メラニーさんに会いに行きたいです!!」



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