【R18】呪いを解けと皇弟が迫ってきますが、処女なので無理です

白岡 みどり

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「……俺は馬鹿か」

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 理性が焼き切れる、という例えを、まさか己に使う日が来るとは思わなかった。

「……俺は馬鹿か」

 目の前には気絶して寝台に横たわるフィルエシュカがいる。つい先ほど「やめないで」という可愛すぎるおねだりをしてくれた、ウォルフリートの唯一愛しい女だ。
 彼女のおねだりは、そうするように仕向けたのが己だとしても、理性を破壊するのに充分だった。
 
(話したいことも、しなければならんことも、山ほどあるというのに)

 フィルエシュカが気絶したのは間違いなく自分の仕業なので、叱るならば自分自身だろう。



 あのおねだりのあと――ウォルフリートは我を失い、フィルエシュカにむさぼるような口づけをした。
 昨日交わした二度の口付けなど児戯じぎのようなもの、と言わんばかりに、執拗しつように口内を嬲った。それで息も絶え絶えになった彼女を寝台に押し倒して、首から胸へ無数に跡を刻みつけながら移動した。その上で、可愛らしい蕾をたたえる膨らみをいじめ抜いたのである。
 無論、その過程でゆったりとしたネグリジェは、はだけてしまった。いや、脱がしたというのが正しい。

 初めて目にする彼女の丸くて美しい二つの膨らみ。
 その頂点で可哀想なくらい腫れ上がった、桃色の蕾。
 それらを目にした時、ウォルフリートは、危うく暴発するかと思った。
 
 膨らみを丁寧に撫で、蕾を周りからじわじわと責め抜くと、彼女は何度ものけぞった。
 フィルエシュカの口から、抑えきれぬ甘い嬌声が漏れ出るたび、ここぞとばかりに快楽に弱い蕾を、執拗に吸い上げた記憶がある。
 そのせいで彼女は軽く達したはずだが、今更己を止めることなど出来ず。

 ネグリジェの裾をまくりあげ、白い小さな生地に覆われた彼女の秘密の場所を、指で撫で上げた。
 フィルエシュカは、何をされたか分からなかったのだろう。けれど達したばかりの体に、その刺激はあまりにも強かったに違いない。
 嬌声が悲鳴じみた響きに変わるまでは、あっという間だった。

 ウォルフリートは布越しに秘裂を撫で上げ、時折、指を深く沈めた。
 しっとりと布が水分を吸い込んでいた。いずれ此処ここも舐め上げるつもりだが、今日はまだ口付け一つしていない。ということは、この水分は彼女から滲み出ている。
 そう考えるだけで、ウォルフリートの雄は痛いくらいに膨らんだ。

 獣とウォルフリート。どちらが理性的か。
 そう問われても仕方ないほどに。
 
 そして秘裂に添えた指を上へずらし、花芯に触れた瞬間。
 フィルエシュカはおかに揚げられた魚のように跳ねた。

「――っあ、あぁ……っ!!」
「フィル、エシュカ……!」

 涙を流して、その粒が四方に散るほど首を振って。
 顔を真っ赤にして、歪めて――ウォルフリートへ、動揺と困惑と、快楽で塗り潰された目を向けて。

 そんな顔をされて止まれるはずがなかった。
 煩わしい布越しに、花芯を円を描くように撫で、痛まぬ程度に押しつぶし、指先で引っ掻いた。
 その間、彼女の健康的な太腿は、何度も痙攣していた。
 彼女の上げる声、反応に夢中になって、指を止めてやれず気がついたら。

 すでにフィルエシュカは……気絶していたのである。



 さすがのウォルフリートも、二度目の気絶で眠る彼女を目の前にすると、やってしまった、という気持ちのほうが強かった。
 
 フィルエシュカは男から愛撫されたことなど、勿論ないだろう。男女の営みの流れさえ知らなかったのだ。経験などあるはずがない。
 一方の自分は、実践こそなかったとは言え、皇族の男として厳しく閨の講義を受けてきた。

 ねやの講義。
 そこでは、女性を悦ばせる方法が、八割以上を占める。
 なぜならば、それは皇族の男にとって最も必要とされる技能の一つだから。

 呪い持ちの皇族の男子が最も恐れること。
 それは、妻に愛想を尽かされることだ。

 魔女にかけられた生涯にたった一人しか愛せない呪い。これは、例え妻が夫を拒否しても、他の男に心変わりしても、妻自身が亡くなっても無慈悲に適用される。
 だから皇族の男は、妻を失わぬように、代々あらゆる手を尽くしてきた。

 離宮を建て、女官と侍女、女騎士で妻の周囲を固めて徹底的に他の男を排除するのは、序ノ口だ。
 病や怪我で健康を損なったり、ましてや死ぬことなどないよう、女医を複数人つけるのも当たり前。
 貴族の男が出入りする城で公務をさせるなど、とんでもない。公的な、妃の出席が必須の行事でない限り、精鋭の女官がその仕事を全て支えられるよう、長年にわたって仕組みを作ってきた。

(狂った制度だと思っていたが……)

 フィルエシュカを愛した今ならば分かる。
 皇族の狂気とも言えるほどの執拗な愛。その根源は、強い恐怖だ。

 彼女に口をきいてもらえなくなったら。
 目を合わせてもらえなくなったら。
 愛してもらえなくなったら。

 何をしていても頭はそればかり考えてしまう。寝ても覚めても、とはまさにこのことだった。

 いよいよ己も狂った皇族の仲間入りか、と自嘲の笑みが漏れるが、それを悪くないと思う自分がいた。



 ***

 フィルエシュカに、腹が立つほど薄い毛布を掛けて、寝室を後にした。
 火の気のない部屋はぶるりと悪寒が走るほど寒い。急いで暖炉に薪を並べ、その隙間に火をつけた細い枝を差し込む。
 本当は熾火おきびにしてやるといいのだが、古い暖炉では上手く出来なかった。

 暖炉に背を向けると、ウォルフリートは昨日汲んだ水の残りで顔を洗った。それは自身の頭を冷やす、という行為も兼ねている。
 それが終わると着替えて、手桶を持って外に出る。

 冬がもうそこまで近づいているのだろう。北の地ほどではないが朝の空気が、温度でそれを教えてくれる。
 小屋の前の畑を突っ切って、塀をくぐり、川を目指した。
 この森の川には飲用に耐えうるほど清らかな水が流れている。
 それを必ず朝に汲む。もう日課になっていた。
 汲んだ水を両手に持ちながら、今後のことに考えを巡らせるのも日課だ。

 今考えているのは、フィルエシュカを城に連れていく、その過程についてである。
 
 発端は昨日届けられた手紙だった。
 あの父が病で倒れたという報には流石に肝が冷えた。しかし、兄からの手紙には命に別状なし、ともあるので深く考えないことにした。
 なぜ一度帰ってきて欲しいと兄が頼んできたのか、それは分からないが、ウォルフリートも人の子だ。実家に対して心配な気持ちもあるし、帰るのはやぶさかではない。

 皇帝と皇弟。二人の父は、息子達に構う時間があるなら、皇妃である母のもとを訪れたいという人だった。なのであまり、構ってもらった記憶はない。そのことは、別にどうでもいいのだが。
 しかしそれに、フィルエシュカは反応した。何か勘違いをして、必死に帰れと説得してきたのである。
 自分を想ってくれる真剣な目に、言いようのない熱いものが込み上げていたのは、秘密だ。

 問題はそのフィルエシュカである。

 あの娘は自分一人ここに残っても問題ないような口ぶりだったが、それこそとんでもない。
 この森から皇都の城までは馬車で片道一週間はかかる。数日滞在して急いで往復したとしても二十日以上。
 その間に例の忌々しいディルクのような男が湧いてくるとも限らないだろうと、ウォルフリートはずっと苛立っていた。

 こんな、ぼうっとして、危機感がなくて、迂闊で、一瞬たりとて目の離せぬ娘を置いていくという選択肢は、はなからないのである。
 そもそも娶ると決めているのだから、例え一時いっときであったとしても、手元から離すはずがない。

 思考がまとまらないうちに小屋に着いてしまった。中に入り、汲んできた水を、空のかめに移す。
 水の流れる音を聞いていると、僅かに気持ちが落ち着いてきた。

 ウォルフリートは城に着いたら、彼女を徹底的に甘やかす、と決めている。

 本人はけろりとしているが、その生い立ちときたら、この国を統治してきた一族の端くれとして、恥ずかしくなるようなことばかりだった。
 あの娘から両親を奪い、穏やかな暮らしと、安全な子供時代を奪ったのは、皇族ではない。けれど元を辿れば、原因は自分達の統治能力が不足していたせいである。

(影にアルラザのことを調べさせているが、年数が経ち過ぎている。もう少しかかるだろう)

 皇帝からの密書を届けたり、皇族の手足となって調べ物をするのが得意な『影』。
 ウォルフリートは彼らにフィルエシュカの故郷の情報と、その故郷を無残にも滅ぼした者について調べさせている。
 いまだ有益な情報は集まってきていないが、別件で頼んだもう一つの調査については、おおむまとまった。ここを発つ前には綺麗に片付くだろう。

(全て片付けて、フィルエシュカを連れて行かなければ)

 『影』は常時皇族の近くにいて、その手足となることを喜びに感じる一族である。
 一族あげて医者であり、皇族にのみ仕える『医』の一族と並び立つ、皇帝一家の守刀まもりがたなだった。
 そして彼らはこれから、フィルエシュカをも守ってくれるだろう。

 水汲みは終えた。これから洗濯と掃除と食事の支度に取り掛かるが、その前に、と寝室へ足を向ける。
 音を立てぬように、ウォルフリートはそっと中を覗き込んだ。
 すやすやと眠る姿に、無意識に頬が緩んでしまう。足音を消して枕元に立ち、緩く波打つ金の髪を撫でる。

「……俺は絶対に、お前を手放さないからな」

 その宣言を聞くべき娘は、いまだ、夢の中だった。

 
 
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