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12巻

12-2

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 それがくすぐったくもあり、少し大げさだと思う部分もあり、リサは苦笑してしまう。

「それで、お二人とも注文はお決まりですか?」

 話題を切り替えるべく、メニューを持ったままのラインハルトとヴィルナに問いかけた。

「私はホットサンドとアイスティー、それと食後にリューミのシャーベットで!」
「俺はピザトーストと、食後にアイスコーヒーとプリンにする」

 仕事終わりだからお腹が減っているのだろう。二人は軽食に加えてデザートと飲み物をそれぞれオーダーしてくる。
 ちなみにリューミというのは、メロンに似た果物だ。

「かしこまりました」

 リサは伝票に注文を書きつけると、それをジークに手渡す。
 最初から自分が用意するつもりでいたらしい彼は、すんなり受け取って厨房ちゅうぼうへと向かった。


 カフェの営業が終わり、リサはジークと共に帰宅した。
 軽く夕食をとったあと、寝る支度を始める。
 リサは自室で着替えながら、それを手伝ってくれている専属メイドのメリルに「そういえば」と話を切り出した。

「来週のカフェの休業日にね、カフェのメンバーと他の何人かで、王都の外の川辺でバーベキューをする予定なんだ」

 リサの脱いだ服をたたんでいたメリルは、小さく首をかしげる。

「バーベキュー、とはなんでしょうか?」
「バーベキューっていうのはね、野外で火をおこして、お肉や野菜を豪快に焼くことなの」
「野営の時の煮炊きのようなものですか?」
「そうそう。子供のいるメンバーもいるし、まだ暑いから川で涼みながら、みんなでわいわいしようと思って。カフェ・おむすびの歓迎会と親睦しんぼく会、ニーゲンシュトックに帰るヴィルナさんの送別会も兼ねてね」
「なるほど。では、私も同行いたします」
「……ええっ?」

 リサが驚いてメリルの方を見ると、彼女は決意に満ちた顔をしていた。

「野外ということですし、リサ様に何かあっては大変ですから」
「でも、メリルにはいつも家のことを任せちゃってるし、たまには休んだ方がいいんじゃない?」
「いえ、むしろ心配で休まりません! 従業員の皆様にのんびりしていただくためにも、人手は多い方がいいのではないでしょうか」
「それはそうだけど……」
「ジーク様にも了解をいただきます。それならばいいでしょうか?」
「むしろジークは『よろしく』って言いそう……」

 最近のジークの言動からして、歓迎こそすれ断ることはないだろう。
 お休みの日までメリルに面倒を見てもらうのは、なんだか気が引けるが、メリルも一緒に楽しんでくれればいいかも? とリサは思う。

「わかった。おいしいもの作るから、メリルもバーベキューを楽しんでほしいな」
「ええ、それはもう!! ……じゃなくて、私はリサ様に何かあったらと……」

『おいしいもの』という言葉に、一瞬だけ目を輝かせたメリルだったが、ハッとして取りつくろうように言った。
 しかし、ごまかすには遅く、リサはクスリと笑う。


 リサがジークと結婚して、クロード家の本館から別館に居を移した時、メリルはリサの専属メイドになった。
 まだ若いメリルはその役を任されたことで、初めはかなり気を張っていた。しかし、実は結構な食いしん坊だったらしく、リサとジークが作る料理やお菓子を見るたびに目を輝かせている。
 本人は、すぐにキリッとした顔で取りつくろおうとするのだが、料理を見た瞬間、顔がぱあっと明るくなるのでバレバレだった。
 最近は別館での仕事にも慣れ、肩の力が抜けてきたのか、以前よりを見せてくれるようになっている。それが可愛くて時々からかうのがリサの中で小さなブームとなっていた。
 リサに笑われ、決まりが悪くなったのか、メリルはわざとらしく咳払いをしてから「ですので!」と強い口調で言う。

「その日は私もお供いたしますからね。ジーク様にもそうお伝えいたします」
「うん、わかったよ」

 リサは微笑んでうなずいた。
 そうして話しながらも着替えが終わる。朝晩は徐々に涼しくなってきているが、それでもまだまだ暑い。
 とはいえ、妊婦なので体を冷やすわけにはいかないリサは、しっかりとパジャマを着ていた。
 以前はネグリジェを着ることが多かったが、今はすその長いチュニックの下にキュロットのようなものを穿いている。
 これはリサの養母で、服飾ブランド『シリルメリー』のデザイナー兼オーナーをしているアナスタシアが、リサのために用意してくれたものだ。
 お腹を締めつけない、ゆったりした作りになっている。

「では、お休みなさいませ」
「お休みなさい、メリル」

 メリルに就寝しゅうしん挨拶あいさつをしたリサは、自室と繋がっている寝室へ向かう。
 中央に置かれた大きなベッドにはすでにジークがいて、枕を背もたれのようにして座り、本を読んでいた。

「何読んでるの?」

 リサがベッドに入りながら聞くと、ジークは「ああ」と言って本の背表紙を見せてくれる。

「名前の由来とその歴史……」

 リサはタイトルを口にする。なんと、それは名付けの本だった。

「え、もう赤ちゃんの名前考えてるの……? 早すぎない!?」
「いや、俺もまだ早いと思ったんだが、ギルさんから『読んでおいた方がいい』って押しつけられて……」
「ギルさん……」

 ギルフォードはリサの養父である。フェリフォミア王宮で魔術師省の長官を務め、侯爵のくらいを持つすごい人なのだが、リサの妊娠に誰よりも舞い上がっていた。
 その妻であるアナスタシアもたいそう喜んでいて、リサのパジャマだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの服を早くもデザインするなど、とても精力的に動いてくれている。
 ちょっと張り切りすぎかなと思わなくもないが、アナスタシアが作ってくれるのは実用的なものばかりなので、リサはありがたく受け止めていた。
 一方、ギルフォードはアナスタシアに比べてできることがあまりないため、少し歯がゆい気持ちでいるらしい。
 別館の一室を子供部屋に改装してくれているので、それだけでもありがたいのだが、本人はもっと役に立ちたいのだろう。
 その結果として、ジークがこの名付けの本を押しつけられたようだ。

「性別もわからないし、生まれるのはまだまだ先だよ……?」
「そうなんだが、身近な人の名前の由来なんかを調べるのはなかなか面白いぞ。親たちはいろんな願いを込めて名前を付けるんだなって、しみじみ思わされる」

 ジークはそう言って本を閉じ、ベッドサイドのテーブルに置く。枕を元の場所に戻してリサの横に寝転がると、彼女の下腹部にそっと手を当てた。
 まだ膨らみも何もないその場所。
 しかし、そこには新しい命がたしかに息づいている。
 妊娠がわかってからというもの、ジークは寝る前にこうしてリサのお腹に手を当てるのが日課となっていた。
 それは実際に身ごもっているリサとは違う形で、父親になるという自覚をうながす儀式なのかもしれない。
 いつもと変わらない無表情なのだが、この上なく真剣にリサのお腹を見つめているのがわかり、リサも黙ってジークの手のぬくもりを感じていた。
 やがて気が済んだのか、ジークは手を離して「寝るか」と声をかけてくる。それにうなずくと、リサはジークがかけてくれた薄いブランケットに包まれた。



   第三章 バーベキュー日和びよりです!


 いよいよ迎えたバーベキューの日は、雲一つない快晴だった。
 クロード家の前には二台の馬車が停まっている。
 リサたちは朝から馬車に道具や食材を積み込み、それが終わると自分たちも乗り込んだ。
 一台は二十人も乗れる大きな馬車で、馬四頭で牽引けんいんする。もう一台はジークの愛馬シャロンがく荷馬車で、こちらに道具や食材を載せていた。
 クロード家から二台連れ立って出発した馬車は、まずカフェ二号店を目指す。リサとジーク、メリル以外のメンバーとは、そこで待ち合わせしているのだ。
 本店でない理由は、二号店の方が道幅が広いからである。バーベキューに参加する人数が多くなり、それにともない大きな馬車を用意した。道幅の狭い本店の方に停めれば、通行人の邪魔になってしまうだろう。
 まだリサとメリルの二人しか乗っていない、大きな馬車に揺られることしばし。ジークの荷馬車と共に、カフェ二号店の前に到着する。
 店の前には、すでにメンバーが集まっていた。

「みんなおはよう! さあ乗って!」

 リサが馬車の乗降口から声をかける。

「おはようございます、リサさん!」

 まず最初に駆け寄ってきたのは、オレンジ色の髪をショートカットにした女性だ。彼女はヘレナ・チェスター。かつてはカフェ・おむすびの本店で働いていたが、現在は二号店の副店長をしている。

「リサさーん! こっちで用意した食材はどうすればいいですか?」

 ヘレナの後ろから顔を出したのは、うぐいす色の天然パーマの男性――アラン・トレイルだった。
 彼もヘレナと同様、本店で働いていたメンバーで、今は二号店の店長を務めている。

「荷物は後ろにいるジークの馬車に積んで」
「はーい!」

 元気よく返事をするアラン。彼に続いて荷物を運んでいくのも、二号店のメンバーだ。
 きっちり編み込んだ赤毛を一つにまとめた若い女性はテレーゼ、くすんだ金髪のスマートな中年男性はマーヴィンという。
 そこへ、学院の料理科で講師をしている二人もやってきた。

「おはようさん、リサ嬢」
「おはようございます、リサ先生」

 先に声をかけてきたのは、茶色いくせ毛を一つにくくった男性――キース・デリンジェイル。料理科では主に調理技術を担当している。
 もう一人は、ロマンスグレーが素敵な老年の男性だ。彼はセビリヤ・コルン。料理科では、主に動植物学を教えている。
 料理科の創設時から、リサとジークと共に働いてくれている二人も、今回のバーベキューに招待されていた。
 セビリヤは動植物学者で、かつてはよくフィールドワークをしていたというから、川辺の散策ではいいガイド役になりそうだ。キースには調理要員としても期待している。
 せっかくの夏休みなのに、働かせてしまって申し訳なくはあるけれど、日頃なかなかできないイベントを楽しんでくれたらとリサは思う。
 そして――

「リサ先生……じゃなかったリサさん! 今日はよろしくお願いします!」

 嬉しそうな顔で元気よく挨拶あいさつしたのは、水色の髪の青年――ルトヴィアス・アシュリー・マティアスだ。出会った頃は幼さの残る少年だった彼も、今やすっかり身長が伸び、体つきも顔立ちも青年らしくなった。
 その上、この秋からカフェ・おむすびで一緒に働いてくれるというのだから、リサには感慨深いものがある。
 そんなルトヴィアスとリサの間では、小さな者たちが挨拶あいさつを交わしていた。

「やっほー、シャーノア」
「なんだか久しぶりな気がするね、バジル」

 リサの精霊バジルが気さくに声をかけたのは、ルトヴィアスの精霊であるシャーノアだ。
 シャーノアは水をつかさどる精霊で、薄紫のウェーブした髪に、青い瞳が特徴。ルトヴィアスの髪と同じ水色の服を着ている。
 精霊には性別はないが、バジルが女の子っぽいのに対して、シャーノアは男の子っぽい見た目をしている。
 バジルとシャーノアは友達同士と呼べる間柄で、バジルはよくリサのもとを離れ、シャーノアのところへ遊びに行っているようだ。
 可愛らしい精霊たちの交流を横目に、リサはルトヴィアスを手招きする。

「ルトくんも乗って乗って」

 リサとメリルしかおらず、がらんとしていた馬車が、あっという間に人で埋まっていく。
 メンバーが次々と乗り込んでくるのを見守っていると、二号店の方からヴィルナの憤慨ふんがいしたような声が聞こえてきた。

「もー! なんで来たのよ!」
「いいじゃないか。僕もバーベキューとかいう料理を食べてみたい」

 怒るヴィルナに平然と言い返す男性の声。その声にリサは聞き覚えがあった。

「え、リクハルドさん!? どうしてフェリフォミアに!?」

 まるで真珠のような色合いの髪に、美しいと表現せざるを得ない整った顔をした彼は、リクハルド・オーグレーン。
 リサが名前を呼ぶと、赤い蠱惑的こわくてきな目がこちらを向く。
 にこりと笑った彼は、「やあ、リサさん」と片手を上げた。

「ヴィルナを迎えに来たんだけどね、何やら楽しそうなもよおしをするって聞いて……僕も参加していいかな?」
「ちょっとリクハルド!!」

 リクハルドはヴィルナの婚約者だ。ヴィルナが騎士団を辞めて帰国するのも、彼と結婚するからである。
 だがヴィルナから聞いていた帰国日は、まだ先だったはず。それを考えると、かなり早いお迎えだが、一緒に夏の思い出を作りたいのだろうとリサは思い至る。

「もちろんですよ! 大人数の方が楽しいですから!」
「もー! ごめんなさいね、リサさん」

 快諾かいだくするリサに、ヴィルナは申し訳なさそうに謝ってくる。そんな彼女だが、どことなく嬉しそうにも見えた。

「食材はかなり多めに持ってきたから大丈夫! ほら乗って」

 リクハルドは自国ニーゲンシュトックのお酒を持ってきたという。それをジークの荷馬車に載せてから、ヴィルナと揃ってリサたちの馬車に乗り込んだ。
 先日ヴィルナと共にカフェを訪れたラインハルトもいる。彼はジークが運転する荷馬車の方に乗るらしい。
 二号店のメンバーとヴィルナたちが乗り終えたところで、本店のメンバーも乗ってくる。
 オリヴィアとデリアの二人は子供連れだ。

「ヴェルノくん、ロレーナちゃん、おはよう」
「「おはようございます!」」

 オリヴィアの息子ヴェルノと、デリアの娘ロレーナが声を揃えてリサに挨拶あいさつしてくれる。
 今年九歳になる二人は、救護院という保育園のような施設に通っている仲よしだ。
 デリアの旦那さんも来るかと思ったが、残念ながらお仕事のため不参加だという。
 接客担当の女性とその子供たちに続き、調理担当のヘクターが乗ってくる。
 彼はリサの隣に座るメリルを見ると、驚いたようにぎょっとしつつ、どこか落ち着かない様子で空いている席に座った。メリルとはひょんなことから知り合いになり、以来、少し意識しているようだ。

「みんな揃ったね! じゃあ出発しますよー!」

 リサが確認のために声をかけると、ヴェルノとロレーナが「おー!」と応えてくれる。
 微笑ましいやりとりに、みんなが自然と笑顔になりつつ、馬車はゆっくりと動き出した。


 川は馬車が通れる道から少し離れたところにある。できるだけ近くに停車すると、みんなで手分けして道具や食材を運ぶ。
 リサも荷物を運ぼうとしたのだが、ジークとメリルに止められる。ヴェルノやロレーナのような子供さえ手伝ってくれているのに、大人の自分が何もしないのはちょっと……と主張すると、渋々といった感じで軽い敷物類を持たされた。
 敷物を敷かないと荷物が置けないため、リサは付き添いのメリルと、かまどを設置する係のラインハルトと共に、先頭に立って川辺へ向かう。
 木立を抜けると、景色がぱっと開けた。

「わぁ! 川だ!!」
「そりゃあな」

 当たり前のことを言うリサに、ラインハルトが笑いながら突っ込む。

「そうだけど、見た瞬間、川に来たーって感じがしたから!」

 フェリフォミアの王都にいると、こういった自然の風景を見ることはあまりない。
 王都内にも小さな川はあるが、河岸かがんは石畳でしっかり整備されている。

「わ! 川だ!!」
「ふわぁ! 川ー!!」

 少し後ろを歩いていたヴェルノとロレーナが、同時に華やいだ声を上げた。
 子供たちの反応がリサと同じだったからだろう。ラインハルトが「ぶっ」と噴き出し、体を震わせている。
 リサは悔しまぎれに「私の心はまだ純粋なんですー」と返した。

「ほら、分隊長さん。笑ってないでかまどの場所を決めてよ」
「……くくっ、そうだな。あの辺が平らで広そうだから、そこにしようぜ」

 笑いをかみ殺しながら、ラインハルトはかまど用のレンガを持って移動する。
 川から十メートルほど離れたそこは、砂利じゃりまじりの地面だが、ラインハルトの言った通り平らで、敷物を敷くにはよさそうな場所だった。
 さっそくリサが敷物を広げると、メリルが慌てて止める。

「リサ様! 私がやりますから」
「じゃあ、メリルはそっち持ってくれる?」
「いえ、そうではなく!」
「一人じゃ大変だから、二人でやった方がいいでしょ?」

 過保護なメリルをいなし、リサは彼女と二人で敷物を敷く。六畳ほどの大きさのものを二枚敷くと、ヴェルノとロレーナがそれぞれ運んできたクッションを置いてくれた。敷物を敷いているとはいえ、そのまま座るのはお尻が痛いだろうと思って、クロード家から持ってきたのだ。
 最後にメリルが運んできたパラソルを立てると、とても快適そうな場所ができあがった。
 他のメンバーも続々とやってくる。
 重い物は男性陣が運んできてくれたのだが、その中にはヴィルナも交じっていた。彼女は自分より軽そうな物を運んでいるリクハルドをからかうように言う。

「まったく、ひ弱だなぁ」
「うるさい、僕はどちらかといえば頭脳派なんだ」

 ヴィルナの言葉にリクハルドはムッとする。頭脳派と言いつつも、食材が入ったダッチオーブンを立派に抱えていた。
 だがヴィルナの方は、それより重い鉄板を軽々と運んでいる。もう退団したとはいえ、さすが騎士団にいただけある。
 それらの荷物は敷物の上に置いてもらったり、ラインハルトが設置し始めたかまどの方へ運んでもらったりする。
 その指示を出すのはリサだ。
 ジークやメリルからあまり動かないように言われているのもあるが、どこに何が必要かを把握しているのはリサなので、自然とその役になった。
 何人かが馬車と川辺を往復し、ようやく荷物が運び終わる。
 大型馬車の御者ぎょしゃにシャロンを預けたジークも、こちらにやってきた。

「お疲れ様。荷物、運んでくれてありがとね」
「いや、そっちの方が疲れただろう。俺は馬車を走らせただけだからな。準備はどうだ?」
「ラインハルトくんが中心になってかまどを作ってくれてるよ」

 リサが指さす方にはラインハルトがいて、持ってきたレンガを使い、しっかりとしたかまどを作ってくれていた。
 その横にいるアランが、持ってきた鉄板や網とかまどの大きさを合わせている。

「リサ嬢、このあとはどうするんだ?」

 キースがそばにやってきて、これからの予定を聞く。

「とりあえず、お昼までは各自好きに過ごしてもらおうと思う。料理を作る係の人たちには、ゆっくり準備してもらいながらね」

 お昼まではまだかなり時間があるので、それぞれ川で遊ぶなり、のんびりするなりしてもらう。
 その間にリサを中心とした調理担当のメンバーが、少しずつ準備を進めていく。

「了解ー。俺も様子見て調理に参加するわー」
「助かるよ。といっても仕事じゃないから、ゆっくり楽しくやろう」

 キースの申し出が嬉しくて、リサは自然と微笑む。
 今日はルトヴィアスの歓迎会とヴィルナの送別会だが、仕事ではない。あくまでプライベートだ。
 みんなで自由に楽しくおいしい料理を食べられればそれでいいと思っていた。

「お母さん、川で遊んできていい?」

 ヴェルノとロレーナが、敷物に座るオリヴィアとデリアのもとへやってくる。

「いいけど、気をつけるのよ」
「「はーい」」

 二人は靴を脱ぐと、川辺に駆けていった。
 パシャッと水しぶきを上げる音と共に、「冷たい!」「キャァ!」という楽しそうな声が聞こえてくる。


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