R18 短編集

上島治麻

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「ねぇ、それ何なの?」

『え?』

「こういう、ちょっと痛い系の映画見てる時絶対左手首ぎゅってするじゃん。」

『あー!怖いの見ると命の危険感じて、つい脈を確認したくなるんだよね。』

「ふーん??そういや僕と初めて話した時も押さえてたわ。」




この会話をしたのが3日前。
僕は今、友達に押し倒されています。


話は少し前に戻る。
今日、僕は家からちょっと離れたコンビニに限定生チョコプリンを買いに行こうとした。1番近いコンビニにも行ったけど、売り切れてて既になかったから、しぶしぶね。

あ、間違えた。まずその友達の話をしなきゃ。彼の名前は久本律。出会ったのはちょうど2年前くらい。学校帰りに、家の前の公園をくるくる回ろうと思って歩いてたらそこにいた。部活終わったあとだったから結構時間も遅くて、多分6時くらい。まだ1月とかだから全然暗い。走り回るぜー!!と思ったはいいけどやっぱりちょっと怖かった。それでビクビクしながら歩いてたらいるんだもん。律くんはベンチに座り込んで何やら頭を抱えて項垂れてた。当時、律くんの髪は真っ黒だったし、学ランを着てたから離れたところから見たら全身が闇に溶け込んでる。もうほぼ見えない!しかも律くんめちゃくちゃ背高いから大人だと思った。それがまさか、中学生でタメとは…。でさ、そんなのガン見でしょ?誰だって見ちゃうよね。僕は悪くないと思うんだ。『なんだこの人、大丈夫かな。それともお化け?ホームレスの方?何にしろこわ』とか思いながら目の前通り過ぎようとしたら急に声かけられて。まって、マネする。大体こんな感じ

「君、今暇?」

ね?意味わかんない。それで僕はもちろん、
『全然暇じゃないです』
って答えたわけさ。したら虫1匹くらいなら殺せそうな顔で「は?」って睨まれた。
泣きそう。そりゃ押さえるでしょ、手首。
もう速攻諦めて『実は暇です』とか何とか言ってお話したよね。でも話してみたら案外良い人だった。家はここら辺じゃないらしいんだけど、ちょっと人恋しくなってフラフラしてたんだってさ。色んな話をした。好きな本とか、漫画とか、映画とか。律くんはあんまり趣味ないから僕の話聞くの楽しいって言ってくれた。あれは嬉しかったなぁ。
話してる途中に律くんの学ランが地元でもなかなかに有名な私立中学の制服ってことに気付いた。かなり着崩してたけど。
だから僕は聞いたの。
『律くん、頭良いのに制服こんな着方して、もしかして不良さんなの?』って
したら律くんはふふって笑いながら「不良だったら嫌い?」って聞いてきた。
よくわかんないけど僕は急に胸がドキドキし始めて何も言えなくなっちゃった。
また律くんはふふふって笑った。
それで「じゃーね、碧。」って言って帰ってった。
次に会ったのはそれから1週間後くらい。あの時と同じベンチに座ってた。次は僕から声をかけて、沢山話した。
そういうのを週一くらいで続けてたから、今はもう軽口叩ける仲。まぁ、2年だからね。それでも、律くんは僕のことを沢山知ってても、僕はあんまり律くんのことを知らない。それがたまに寂しかったりする。僕も律くんもいつの間にか高校生だし、遊んだりしたいんだけど、なかなか誘えてない。今さぐってる最中。それと、律くんは初めてであったときみたいに、結構翻弄してくる。思わせぶりな奴だ.........。誰か助けて欲しい。

うん、律くんの説明はこのくらいでいいかな、?
じゃあ話戻そ
プリンは結局買えなかった。そのコンビニにたどり着く前にちょっとしたハプニングが起きてしまったからだ。
なんと、律くんがいた!!
僕はおうち大好き人間なので、出来るだけ早く家に帰りたくて、路地裏から抜けて行こうとした。そしたらいたの、顔がアザと血でボロボロの男の子の胸ぐらを掴んでる律くんが。
初めは律くんしか見えなかった。だから喜んで駆け寄った。もう、僕のバカ。
『あ!律くんだ!律くーn.........え、』
したら律くんは首からギギギって音を鳴らしながら振り返った。
「あ゛?」
僕はその瞬間に左手首を押さえて涙目になりながらコンクリートにへたりこんでしまった。
『ぅ、り、律くん、ぼく、』
「え、碧?なんでこんなとこにいるの?危ないよー。」
いや危ないのは君!!そう叫びたいけど声が出ない。
「ごめんね、怖がらせちゃった?どうしたの、もしかして立てない?」
僕がコクコクと無理やり首を動かしたら、
「よしよし、大丈夫だよ。」
律くんはそう言ってお姫様抱っこみたいにして両手で僕を持ち、そのまま路地を抜けた。
途中、多分心労で急に眠くなって意識を失ってしまった。
そして冒頭に戻る。

起きたら目の前にイケメン。びっくりしすぎて死ぬかと思った。
「あ、起きた?」
良い声だ…。
「おーい、碧?」
『ハッ!お、おはよう!律くん』
「うん、おはよ。」
『僕のこと運んでくれたんだよね、ありがとう。ここは、律くんの家?』
「うん、そうだよ。とりあえずベッドに寝かしちゃった。あ、ところでさ、」
律くんは急に僕の左手を取って手首を爪でスーッと撫でた。
『ぁっ…』
「どしたの??」
『な、なんでもないっ、』
「ほんと?」
『うん!』
「へー、そう。」
そして律くんの目がスっと細められた。
「碧、見たよね?」
何を言おうとしているかは明白だ。僕は律くんが男の子に暴力を振るっているところを見てしまった。
『ぁ、う、律くん、』
「~~ッ!碧!あ、ゴホン!」
律くんは大きく咳き込んで、一旦見開かれた目を再度細めた。
「もうこの際言うけど、僕は別に良い人じゃない。それでも君にだけは絶対知られたくなかったんだ。けど知られちゃった。僕はどうすればいいと思う?」


あ、僕、どうなるんだろ。
いっぱい殴られて、いっぱい蹴られて、いっぱい罵られて、限界まで傷付いてボロボロにされちゃうのかな。律くんの好きなようにされて、僕のことなんか一切配慮せずに、律くんの僕にされちゃう?ぁ、ん、ぅ゛だめ、だめ、考えたらだめ、泣いたらだめ、我慢、我慢。


「あ~、みどり~??もしかして勃っちゃった?」
律くんはにやにやしながら僕の股の間を触る。
抵抗しようとしても、僕より何回りも大きい律くんに押し倒されて、囲われた状態でそれが叶うわけもない。
『あ゛っ、ん、なに、やめっ、』
「女の子みたいだね、やめるわけなくね?」

律くんは楽しそうに笑ってるけど、そこから優しさは感じられない。空気がピンと張り詰める。
冷たい目でじーっと見つめられて、頭がぐるぐるしてきた。きっと呆れられた。嫌われちゃう。でも、そう思えばそう思うほどに体は熱くなっていく。
「みーどり。また手首押さえてるよ。これ、脈測ってるわけじゃないよねー、本当は。」
『ぁ、や、ちが、』
図星を突かれてお腹の下がズクズクする。それと同時に左手首もゾクゾクして、何が何だかわからない。律くんの手が左手を掴み取って思いっきり握られる。
『あっぅ......は、はぁ、ん゛ぅ、律くんやめ、』
「なんで?手首握ってるだけだよ?」
人にやられたのは初めて。その快感に頭がオーバーヒートしそうになる。初めてが律くん、それも嬉しくて体の中心がきゅぅってなる。
僕がテンパってる間に律くんは僕の左手首をべろんと舐めた。
『やぁ.......ぁ。ふぅ、』
「涙目可愛いねぇ、碧」
そう言って律くんの顔がもっと近づいた。静かな空間に音が響く。僕の顔は多分真っ赤で、でも律くんの頬も赤く染ってる。
ちゅ、と控えめなキス。僕のファーストキス。
そして律くんは顔を横にずらして僕の首元にその唇をあてた。ぢゅ、という音とピリッとした痛みがジクジクして興奮を誘う。
碧、好きだよ。律くんはそう言いながら僕の耳を噛んだ。
ガリっ
『あ゛っ、ん゛ぅ、』 
「そんなに、泣かないで。碧の望んだことをやってあげてるんだから。気持ちい?何して欲しいのか言ってごらん」

もう、バレてる。全部バレてる。無駄、全部無駄。
『あ゛ぁ、り、りつく、ぼく、もっと痛いのがいい。隠しててごめんなさ、ん゛、ぁ゛っ、もっとぉ、噛んでぇ゛、気持ちいいと、こっちの手首、ぁん゛、っ、むずむずして、ん゛、りつ゛く、』
律くんの目尻が赤くなって口元が大きく歪む。
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