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8、優しさが交差して
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「茉衣、話がある。少しいい?」
最近、全く仕事が進まないせいで委員会のない日まで休日出勤することになって生徒会室に一人で居残りをしていると歩悠先輩が来た。
こんな日まで会えるなんてと口が緩みそうになる。
それに気が付いて自分がまだ先輩を好きなことに気が付いて笑えてしまう。
なんだか最近は自分の心が他人のものになったみたいに感じることがある。
それくらい制御できない気持ちに戸惑っていた。
「はい、大丈夫です」
「別れようか、もう」
ちゃんと握っていたはずのシャーペンが手から零れ落ちた。
驚いて顔をあげたらとても切なそうな歩悠先輩と目が合ってしまった。
私が別れようと決めた日の翌日に向こうから別れを告げられるとは思っていなくてさすがに驚いた。
だけど、私のタイミングで言っていたらいつになって以下分からないしこれでいいんだと思う。
それくらい私はまだ未練たらたらなのだ。
だから、迷わず頷くことにした。
「はい、分かりました」
「そう」
先輩の顔がまた悲しそうに歪む。
どうしたらいい?
もう、何をしても先輩の悲しい顔しか見れなくてつらい。
「ごめんなさい、私、用があるから行きます。さっきの話、了解しました」
嫌でも先輩との会話が思い浮かぶこの場所にも先輩の前にも一秒だっていたくなかった。
私のどんな顔でも大好きだと思っていたけど先輩の傷ついている顔だけは大嫌いだったみたいだ。
「じゃあ、失礼します」
「茉衣、最後に一つ聞きたいことがある」
呼び止められるとは思っていなくて内心心臓が飛び跳ねた。
「はい?」
声が裏返らないようにおなかに力を入れて慎重に返事をした。
「どうして、俺と付き合った?なんで、俺の告白に頷いたの?」
それは、思ってもみない質問だった。
ばれないように思っていたから、好きだからという答えにはたどり着かないのかもしれないけど後輩としての時もとても慕っていたし好意はばれていると思っていた。
だけど、そういえば一度も口にしたことがなかったことにも気が付いた。
本当に今更だけど。
それに歩悠先輩の中で私が告白に頷いた理由なんてどうでもいいんだって思っていた少し意外だったのもある。
だけど、理不尽にも伝わっててほしいと思っていたんだ。
「そんなの……。そんなの大好きだからに決まっているじゃないですか!」
先輩の質問に対してなのか自分の気持ちに制御が聞かなくなってきたのか、意味も分からず怒鳴っていた。
挙句の果てに涙がにじんで鼻の奥がつんっとする。
だけど、一度開き始めた口は止まらないらしい。
「好きじゃないどうでもいいような人の告白に頷くような人間だと思ってたんですか?それとも先輩だから逆らわずに頷くような人間だと?」
ああ、そうだ。
私はだから怒ってるんだ。
私の本来の考えるよりも先に体動いている性質のせいで今更自分が取り乱した理由が分かった。
私は自分の告白の返事が嘘だと疑われたことが耐えられなかったのだ。
「……っ」
急に取り乱した私にびっくりした顔のままで歩悠先輩は何も言わない。
「どうすればよかったんだろ。どうすれば先輩のことつなぎとめられる……?ちゃんと……頑張……って嫌われないように」
もう涙は視界を奪うほどで止まらなかった口は嗚咽で強制的に止められた。
「茉衣」
また、あの顔をしているんだろう。
先輩の困った声にも怖くて顔をあげられないままでいると、視界が何か暗い色に覆われた。
「ごめんね、茉衣」
頭の上から降ってきた声に、背中に回された掌の感触に、一拍遅れて抱きしめてくれていると分かった。
また、気を遣わせてしまっている。
速く離れなきゃダメなのに、どうしよう。
安心して力が抜ける。
ギリギリのところで耐えられていた涙も止まらなくなっていた。
最近、全く仕事が進まないせいで委員会のない日まで休日出勤することになって生徒会室に一人で居残りをしていると歩悠先輩が来た。
こんな日まで会えるなんてと口が緩みそうになる。
それに気が付いて自分がまだ先輩を好きなことに気が付いて笑えてしまう。
なんだか最近は自分の心が他人のものになったみたいに感じることがある。
それくらい制御できない気持ちに戸惑っていた。
「はい、大丈夫です」
「別れようか、もう」
ちゃんと握っていたはずのシャーペンが手から零れ落ちた。
驚いて顔をあげたらとても切なそうな歩悠先輩と目が合ってしまった。
私が別れようと決めた日の翌日に向こうから別れを告げられるとは思っていなくてさすがに驚いた。
だけど、私のタイミングで言っていたらいつになって以下分からないしこれでいいんだと思う。
それくらい私はまだ未練たらたらなのだ。
だから、迷わず頷くことにした。
「はい、分かりました」
「そう」
先輩の顔がまた悲しそうに歪む。
どうしたらいい?
もう、何をしても先輩の悲しい顔しか見れなくてつらい。
「ごめんなさい、私、用があるから行きます。さっきの話、了解しました」
嫌でも先輩との会話が思い浮かぶこの場所にも先輩の前にも一秒だっていたくなかった。
私のどんな顔でも大好きだと思っていたけど先輩の傷ついている顔だけは大嫌いだったみたいだ。
「じゃあ、失礼します」
「茉衣、最後に一つ聞きたいことがある」
呼び止められるとは思っていなくて内心心臓が飛び跳ねた。
「はい?」
声が裏返らないようにおなかに力を入れて慎重に返事をした。
「どうして、俺と付き合った?なんで、俺の告白に頷いたの?」
それは、思ってもみない質問だった。
ばれないように思っていたから、好きだからという答えにはたどり着かないのかもしれないけど後輩としての時もとても慕っていたし好意はばれていると思っていた。
だけど、そういえば一度も口にしたことがなかったことにも気が付いた。
本当に今更だけど。
それに歩悠先輩の中で私が告白に頷いた理由なんてどうでもいいんだって思っていた少し意外だったのもある。
だけど、理不尽にも伝わっててほしいと思っていたんだ。
「そんなの……。そんなの大好きだからに決まっているじゃないですか!」
先輩の質問に対してなのか自分の気持ちに制御が聞かなくなってきたのか、意味も分からず怒鳴っていた。
挙句の果てに涙がにじんで鼻の奥がつんっとする。
だけど、一度開き始めた口は止まらないらしい。
「好きじゃないどうでもいいような人の告白に頷くような人間だと思ってたんですか?それとも先輩だから逆らわずに頷くような人間だと?」
ああ、そうだ。
私はだから怒ってるんだ。
私の本来の考えるよりも先に体動いている性質のせいで今更自分が取り乱した理由が分かった。
私は自分の告白の返事が嘘だと疑われたことが耐えられなかったのだ。
「……っ」
急に取り乱した私にびっくりした顔のままで歩悠先輩は何も言わない。
「どうすればよかったんだろ。どうすれば先輩のことつなぎとめられる……?ちゃんと……頑張……って嫌われないように」
もう涙は視界を奪うほどで止まらなかった口は嗚咽で強制的に止められた。
「茉衣」
また、あの顔をしているんだろう。
先輩の困った声にも怖くて顔をあげられないままでいると、視界が何か暗い色に覆われた。
「ごめんね、茉衣」
頭の上から降ってきた声に、背中に回された掌の感触に、一拍遅れて抱きしめてくれていると分かった。
また、気を遣わせてしまっている。
速く離れなきゃダメなのに、どうしよう。
安心して力が抜ける。
ギリギリのところで耐えられていた涙も止まらなくなっていた。
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