家族になった人族のポムと魔族のポムの物語

純粋どくだみ茶

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家族になった人族のポムと魔族のポム

12.ポムくんといっしょ

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朝、おきたらツリーハウスを出てふたりで村に向かう。

ポムさんが村の畑に魔法で水を撒いている。

ぼくは、農場で伝票と食材の数を確認する。間違えないかいつも緊張する。

数え終わった食材からアイテムバックに入れていく。

こっちが終わったたら、ロバを柵から出して荷馬車を引かせる。

村の入り口でポムさんと合流して荷馬車に乗って"ココ"の街へと向かう。

「ポムくん、そろそろロバさんに名前を付けようよ。」

「私にはちっともなつかないけど、名前くらい付けたい。」

「あっ。そうだった。いつまでもロバさんじゃ可哀想だね。」

ふたりであれこれ考えた。

「そういえば、ロバくんって男の子?女の子?」

ポムさん気が付いてないみたい。

「男の子だよ。ついてるよ。」

「あっ。ほんとだ。」

ポムさん、ロバくんのお腹の下を覗き込んでる。

「ポムさんのエッチ。」

「いいじゃない。ロバなんだから。ポムくんのかわいいのを見たわけじゃないから。」

「…」

「ぼくの見たの。」

ポムさん、なぜかぼくの顔から目線を反らした。少し顔が赤くなった。

「…見てない。」

なんで口ごもるんだろう。

「ほんと?」

「…」

ポムさん、そっぽを向いて僕の顔を見なくなった。

「いつ見たの。」

「…」

「ロバくんの名前、何がいいかな…。」

「話題変えた。」

「ロバくんの名前、考えようよ。」

「そうだね。」

ふたりであれこれ考えているうちに村道から街道に出た。

やっぱり歩くよりロバの荷馬車の方が早い。



「今日は、盗賊いないといいね。」

「こんなに馬車が通るのになんでぼく達みたいな子供が乗っている馬車なんか襲うんだろうね。」

「みんな僕たちよりお金を持っているよね。」

2日前、ポムくんとポムさんが乗っていたロバの荷馬車を、盗賊が3人がかりで襲った挙句、ポムさんの魔法で返り討ちにあって盗賊が2人死んだんだ。

ひとりは体から煙を出しながら草原へ逃げていったんだけど、また襲ってこなければいいけど。

「ろったちゃん。」

「ろっとくん。」

「ろったくん。」

「ろびんちゃん。」

「ろくすけ。」

「ろばくん。」

「そのまんまだね。」

「ぼくは、"ろっとくん"がいい。」

「そうしよっか。ポムくんに懐いているからポムくんが名付け親だね。」

「"ろっとくん"に決定。」

「ははは。」

ポムさんが僕の名前を選んでくれた。

ろっとくんの荷馬車が轍に揺られてギシギシ音を鳴らしながら街道をのんびり進んで行く。

「ポムくん、空が青いね。」

ポムさんが荷馬車に仰向けに寝そべりながら空の青さにいまさらながら感動していた。

「きれいな空だよね。」

ポムくんも荷馬車に揺られて"うとうと"しながら手綱を引いていた。

「ポムさん、いつまでも…」

ポムくんが何かを途中まで話したときだった。

しゅっ、ぼすっ。

聞き慣れない変な音がした。

ポムくんの話声が聞こえなくなった。

なんだろう、嫌な感じがする。

ポムさんが荷馬車から振り返ってポムくんを見た。

「ねえ、ポムくん。」

ポムくんの服のお腹の部分が赤かった。

「ポムくん、服が赤いよ。どうしたの。」

ポムくんから返事がない。

しゅっ、ぼすっ。

また、聞き慣れない変な音がした。

荷馬車に矢が突き刺さっていた。

顔を上げて荷馬車が進む街道の先を見ると、街道脇の木のそばで頭と顔が火傷で黒くなった男が弓を引いていた。

「うそ。昨日の盗賊?」

ポムくんの体をよくみると、お腹に矢が刺さっていた。

ポムくんの体は斜めに傾いたまま動かなかった。

「えっ。えっ。」

街道脇の木のそばで頭と顔が火傷で黒くなった男が弓を棄てて剣を抜いて走ってきた。

「ポムくん。ポムくん。」

ポムさんは、荷馬車に向かって剣を振りかざして走ってくる男に向かって火魔法を無詠唱で放った。

「ポムくんを殺したの。殺したの。殺した。」

荷馬車に向かって剣を振りかざして走ってくる男は、全身が火だるまになっても剣を振りかざしたまま走るのをやめなかった。

「ポムくんを殺した。殺した。殺した。」

ポムさんは、荷馬車に向かって剣を振りかざして走ってくる男に向かって特大の炎魔法を無詠唱で放った。

剣を振りかざして走ってくる男に炎魔法があたると同時に男の体が炎の塊になって砕けた。

ポムさんは、斜めに傾いたまま動かないポムくんに何度も声をかけるが返事がない。

顔色がどんどん青くなっていく。

「ポムくん。ポムくん。ポムくん。」

ポムさんがいくら声をかけても返事がない。

ポムさんはとっさにポムくんの頬を何度も平手打ちした。

「…ポムさん、痛いよ。」

「ポムくん、私の声が聞こえる。ポムくん。ポムくん。」

「…うん、…ポムさんが遠くにいるみたい。」

かなり危険な状態。もう時間がない。そう確信した。

「ポムくん。私は回復魔法が使えないの。」

「だからポムくんが自分に回復魔法をかけるの。」

「ポムくん!」

ポムさんがまた頬を何度も平手打ちした。

「…ポムさん、…痛いよ。頬が…真っ赤…だよ。」

「きこえる!回復魔法を自分にかけるの!」

「…おなか、…痛い。」

ポムさんは、吸えるだけの息を吸って大声でポムくんに怒鳴った。

「ポムくん!やりなさい!」

ポムさんは、まるでお母さんが子供を叱るように大声で怒鳴った。

「…わかった。…お母さん。」

「矢を抜くよ。痛いけど我慢して!」

ぐすっ。ポムさんがポムくんのお腹から矢を抜いた。

「…おなか、…痛い。…痛い。」

ポムくんの赤くなった服をめくった。

お腹がほんの少し光った。

お腹からの出血は徐々に少なくなっていき血は止まった。

でも、流れた血は戻らない。

青い顔は、青いままだった。

ポムくんの体が徐々に冷たくなっていくのが分かった。

ポムさんは、ポムくんを荷馬車の荷台に移して、ポムさんが手綱を引いた。

「ろっとくん、ポムくんが死にそうなの。今だけでいい私の言うことを聞いて。お願いだから街まで全力で走って。」

するとポムくん以外の誰の言う事も聞かないろっとくんがいつもの何倍もの速さで走りだした。

「ありがとう、ろっとくん。あと少しだから頑張って!」

"ココ"の街の城塞が見えてきた。

ポムさんは、荷馬車に横になっているポムくんを見ることができなかった。

もし、見た瞬間、ポムくんが死んでいると分かってしまったら…。

「ポムくん、いつまでも一緒だからね。」

ポムさんは涙をボロボロ流しながらろっとくんの手綱を握った。

"ココ"の街まであと少し。

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