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ふたりのアルファ

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 ソウイチの澄んだ声で何度もマヤくんと呼ばれると、真山の胸はその度に甘い疼きを訴えた。

 たとえ呼ばれるのが仮初の名前でも、ここでは真山ではなくマヤだ。いつもはベータのマヤだが、今夜はアルファのマヤとして、アルファのソウイチに抱かれた。

 ようやく偽らない自分で誰かに抱いてもらえたのが嬉しくて、生まれる快感も、いつもよりずっと純度が高いように思えた。灼かれるような快感よりもずっと優しくて穏やかなものが、真山をいつもよりも深くまで満たしてくれた。

 結局、ソウイチとは三回した。三回してようやく真山は満足したし、ソウイチは三回目には拙いながら腰を揺すり、真山を絶頂へと導くことができた。
 正直なところ、ソウイチとの体の相性は過去で一番いいように思えた。それくらい、終わってほしくなかった。

 ソウイチとの行為を終えて、真山はまだ余韻の残る中、上機嫌でソウイチに後始末のやり方を教えた。使用済みのコンドームの外し方と後始末の仕方を教えた後、二人は向かい合ってベッドに横たわる。

「ソウイチさん、めちゃくちゃよかった」

 真山は素直な感想を口にした。お世辞抜きで、真山はソウイチとのセックスが楽しかった。
 拙いながらも一生懸命なソウイチが快感を与えてくれるのが、どうしようもなく気持ちよかった。
 真山を見つめる薄茶色の瞳は少し眠そうで、事後の気怠さを色濃く映していた。

「ごめんね、ベータと、したかったでしょ」

 赤みの残ったソウイチの頬を、真山は指先で撫でる。自分の欲を優先して押し切ってしまったことを申し訳なく思っていた。

「いいんだ」

 ソウイチは首を小さく横に振って笑う。

「え」

 意外な返事に、真山はまじまじとソウイチを見つめる。ソウイチは恥ずかしそうに俯いてしまった。

「君とするの、気持ち良かった」

 君なんて呼ばれることはほとんどなくて、真山はなんだかこそばゆかった。

「マヤくん、本当にアルファか?」

 アルファだと見破っておいて今更そんなことを言うソウイチに、真山は思わず苦笑いを零した。

「そうだよ。ほら」

 真山が視線で示した先、未だ昂ったままの真山の性器の根元に、瘤のようなものがある。アルファに現れる、ノットだった。興奮すると出るのだが、まだ興奮が残っているのか、全然治まる気配がない。
 見せることに抵抗はなかったが、ソウイチがあまりまじまじと見るので少し恥ずかしかった。

「ノットが、出て……」
「ん、そーいちさんは?」
「出たことはない。こんなふうになるんだな」
「……そっか」

 出してあげられたらよかったのにと真山の胸はちくりと痛む。
 個人差はあるが、ノットはアルファの興奮状態が続いたり、発情状態になると現れる。ソウイチのことは結構気持ちよくできたという自負はあったので、少し悔しかった。

「そーいちさん」

 真山が呼ぶと、ノットに見入っていたソウイチは慌てて顔を上げた。その顔は、悪戯を見つかった少年のようだった。

「マヤくんはアルファなのに、なんでこんなこと」

 ソウイチは釈然としない顔をした。
 仕方のないことだった。真山は自分の嗜好が一般的ではないということもわかっている。
 真山の胸には、自分のことを知ってほしいという気持ちがあった。ソウイチに、アルファのマヤを知ってほしかった。
 だから真山は、素直に話そうと思った。
 アルファの、真山のことを。
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