37 / 45
35 番
しおりを挟む
無事入学式を終え、教室に向かう途中、仄かに甘い香りがした。しかし、甘さの中に言いようもない臭いも混じっていた。
俺が顔をしかめているとルージュが気付き、俺に声をかけようとしたとき、
「きゃー!私の番見つけた!しかも、ドラグ国の王子様じゃん!ラッキー!」
前の方から逆走してくる、ネズミの獣人の女の子が叫びならが向かってきた。
女の子が近づいてくるに従い、匂いも強くなった。
「くっ。ジュジュ、あの子を遠ざけて。早く!」
俺は腕で鼻を押さえ、ジュジュにお願いした。
ジュジュはすぐに動き、少し強引に、女の子を同じラビー国の獣人に引き渡した。
引き渡された獣人の女の子は何度も頭を下げ、何かを叫んでいる女の子を2人がかりで引きずっていった。
しかし、甘い匂いと異様な臭いの混じった香りにやられた俺は、駆け足でトイレに駆け込んだ。
「うー、城下街以上のにおいだった」
トイレでもどして、そのまま寮へと帰った俺は、ベッドで横になっていた。
そして兄上達に、シュシュとジュジュに伝言を頼んだら、一緒に帰ってきた。
「ルイ大丈夫か?番が見つかったって聞いたけど、何があったの?」
アッシュ兄上は、部屋に入ってくるなり質問してきた。
俺は体を起こしてベッドに寄りかかる
「アッシュ兄上。まだ少し辛いけどどうにか。そして番だけど、俺自身はまだなんとも言えない。番かどうかわかんないんだ」
俺が番かわからないと言うと、兄上達は顔を見合せ、そんなことがあるのかと言い合っていた。
「とりあえず、今はルイを休ませよう」
レーナ姉上の言葉に、兄上達は俺の部屋を後にした。兄上達が居なくなると、すぐに俺はベッドに横になった。
「ルージュ、少し寝る」
「はい。ごゆっくりお休みください」
俺はそのまま眠りについた。しかし数分後、神様からの交信で起こされた。
『ルイス、ルイス。起きてくれ!お前の番の事で話がある!起きてくれ』
(うんー、なに?)
起きるには起きたけど、なかなか目が開かなかった。それでも、何とか神様に返事をした。
『本当に起きてるか?大事な事なんだが』
(目が開かないけど、起きてる起きてる。それで)
神様は訝しみながらも
『そうか?まぁいい。それでな、前に異世界の邪神が来て暴れたと言っただろう?捕まえるには捕まえたのだが、移送中に邪神の体が突然崩れたらしい。どうやら魂を一部が切り離し逃げたみたいだ。そして、こちらの下界に逃げ込んだ事がわかった。邪神の行方を探している時に、さっきお前にやった加護に反応があった。念のためお前の番を調べたら、邪神に取り憑かれていた。しかも、邪神は時を遡り、今より幼い時に番に取り憑いたため、完全に番と邪神の魂が混じりあってしまっている。ルイスは俺の加護を持っているため、邪神の臭いを感じ、異臭を感じたのだ』
起きているとは言ったものの、夢心地で話し半分に聞いていた俺は、神様の言葉で完全に目が覚めた。
(はぁ?あの異臭、邪神の臭いなの?それと、俺の番はどうなるんだよ!)
『だから言ったではないか、大事な事だと。今のところ完全に混ざった魂を切り離すことは出来ない。それどころか、番ごと消滅させるしか邪神を倒す方法はない。幸いと言うか、ルイスは獣人。番を亡くしても竜人ほど狂うことはないだろう』
(そんなこと、幸いとは言わないよ)
それ以上、言葉が続かなかった。どのくらい時間が経ったのか、ルージュ達が起こしに来るまでベッドで呆然としていた。
明かりをつけたら、俺が呆然と起きていた事にジュジュ以外が驚いた。
「わっ!ビックリした。起きていたのなら明かりぐらいつけてくださいよ。、、殿下?」
何の反応も示さない俺に何度か声をかけ、それでも反応しない俺の肩を軽く叩いた。
「あっ、ルージュ。え?外くらっ!今何時?」
ルージュ達はホッとしながら、
「19時です。夕食の時間なので起こしに来ました」
「19時、、。戻ってきたのって昼前だったよね?」
どんだけ呆然としてたのか。
「アッシュ兄上達は?」
「すでに食堂へ」
「じゃあ、急いで行こうか」
ルージュ達に軽く身だしなみを整えてもらい、食堂へ行った。
しかし、神様の言葉が頭の中で繰り返されていて、心ここにあらず状態で食事をし、兄上達に挨拶もそこそこに部屋へと戻った。
部屋に戻り、番を助ける方法を探すため知識スキルを使った。
ーーーー
検索対象ありません
ーーーー
再度検索
ーーーー
検索対象ありません
ーーーー
神様が無いと言っていても、なにかないかとあがいたけど、結局助ける方法はなかった。
「・・シュシュ。番と思われる子を調べて。王族に嫁いでも大丈夫かどうか」
「えっと、、、はい。すぐに」
シュシュが転移していった。第一印象があれだったので、たぶん無理だろう。
そう、番であっても、王族の番に相応しくなければ番う事は出来ない。
邪神云々を抜きに、番えないとわかれば諦めもつく。諦めれば、、、番が死んでも喪失感はそこまでないだろう、、、。
「ルージュ、ジュジュ。今日はもう休むから、部屋に戻っていいよ」
俺は部屋に戻ってから一度も、ルージュ達を見てはいない。自分の事でいっぱいで、いつものようには振る舞えなかった。
「わかりました。でもなにかありましたら、いつでもお呼びください。お休みなさいませ、殿下」
たぶん、一礼してから二人とも部屋を出ていったと思う。いつもルージュ達はそうしているから。
二人の気配が無くなったら、俺は防音結界張り、泣いた。唯一の番を認識したとたん、失う事になった。
番を助ける事が出来ない自分が、無力な自分が情けなくて泣いた。
そして、泣き疲れていつの間にか俺は寝ていた。
『・・地球の神と約束した。絶対にお前に幸せな人生を与えると。一度、番を失うかもしれない。しかし、俺の全力を持って番の魂を救う。それには邪神の完全消滅が絶対条件だから、どうしても番は亡くなってしまう。でも、必ず、、』
神様の声は、深い眠りにあった俺の耳には届かなかった。
俺が顔をしかめているとルージュが気付き、俺に声をかけようとしたとき、
「きゃー!私の番見つけた!しかも、ドラグ国の王子様じゃん!ラッキー!」
前の方から逆走してくる、ネズミの獣人の女の子が叫びならが向かってきた。
女の子が近づいてくるに従い、匂いも強くなった。
「くっ。ジュジュ、あの子を遠ざけて。早く!」
俺は腕で鼻を押さえ、ジュジュにお願いした。
ジュジュはすぐに動き、少し強引に、女の子を同じラビー国の獣人に引き渡した。
引き渡された獣人の女の子は何度も頭を下げ、何かを叫んでいる女の子を2人がかりで引きずっていった。
しかし、甘い匂いと異様な臭いの混じった香りにやられた俺は、駆け足でトイレに駆け込んだ。
「うー、城下街以上のにおいだった」
トイレでもどして、そのまま寮へと帰った俺は、ベッドで横になっていた。
そして兄上達に、シュシュとジュジュに伝言を頼んだら、一緒に帰ってきた。
「ルイ大丈夫か?番が見つかったって聞いたけど、何があったの?」
アッシュ兄上は、部屋に入ってくるなり質問してきた。
俺は体を起こしてベッドに寄りかかる
「アッシュ兄上。まだ少し辛いけどどうにか。そして番だけど、俺自身はまだなんとも言えない。番かどうかわかんないんだ」
俺が番かわからないと言うと、兄上達は顔を見合せ、そんなことがあるのかと言い合っていた。
「とりあえず、今はルイを休ませよう」
レーナ姉上の言葉に、兄上達は俺の部屋を後にした。兄上達が居なくなると、すぐに俺はベッドに横になった。
「ルージュ、少し寝る」
「はい。ごゆっくりお休みください」
俺はそのまま眠りについた。しかし数分後、神様からの交信で起こされた。
『ルイス、ルイス。起きてくれ!お前の番の事で話がある!起きてくれ』
(うんー、なに?)
起きるには起きたけど、なかなか目が開かなかった。それでも、何とか神様に返事をした。
『本当に起きてるか?大事な事なんだが』
(目が開かないけど、起きてる起きてる。それで)
神様は訝しみながらも
『そうか?まぁいい。それでな、前に異世界の邪神が来て暴れたと言っただろう?捕まえるには捕まえたのだが、移送中に邪神の体が突然崩れたらしい。どうやら魂を一部が切り離し逃げたみたいだ。そして、こちらの下界に逃げ込んだ事がわかった。邪神の行方を探している時に、さっきお前にやった加護に反応があった。念のためお前の番を調べたら、邪神に取り憑かれていた。しかも、邪神は時を遡り、今より幼い時に番に取り憑いたため、完全に番と邪神の魂が混じりあってしまっている。ルイスは俺の加護を持っているため、邪神の臭いを感じ、異臭を感じたのだ』
起きているとは言ったものの、夢心地で話し半分に聞いていた俺は、神様の言葉で完全に目が覚めた。
(はぁ?あの異臭、邪神の臭いなの?それと、俺の番はどうなるんだよ!)
『だから言ったではないか、大事な事だと。今のところ完全に混ざった魂を切り離すことは出来ない。それどころか、番ごと消滅させるしか邪神を倒す方法はない。幸いと言うか、ルイスは獣人。番を亡くしても竜人ほど狂うことはないだろう』
(そんなこと、幸いとは言わないよ)
それ以上、言葉が続かなかった。どのくらい時間が経ったのか、ルージュ達が起こしに来るまでベッドで呆然としていた。
明かりをつけたら、俺が呆然と起きていた事にジュジュ以外が驚いた。
「わっ!ビックリした。起きていたのなら明かりぐらいつけてくださいよ。、、殿下?」
何の反応も示さない俺に何度か声をかけ、それでも反応しない俺の肩を軽く叩いた。
「あっ、ルージュ。え?外くらっ!今何時?」
ルージュ達はホッとしながら、
「19時です。夕食の時間なので起こしに来ました」
「19時、、。戻ってきたのって昼前だったよね?」
どんだけ呆然としてたのか。
「アッシュ兄上達は?」
「すでに食堂へ」
「じゃあ、急いで行こうか」
ルージュ達に軽く身だしなみを整えてもらい、食堂へ行った。
しかし、神様の言葉が頭の中で繰り返されていて、心ここにあらず状態で食事をし、兄上達に挨拶もそこそこに部屋へと戻った。
部屋に戻り、番を助ける方法を探すため知識スキルを使った。
ーーーー
検索対象ありません
ーーーー
再度検索
ーーーー
検索対象ありません
ーーーー
神様が無いと言っていても、なにかないかとあがいたけど、結局助ける方法はなかった。
「・・シュシュ。番と思われる子を調べて。王族に嫁いでも大丈夫かどうか」
「えっと、、、はい。すぐに」
シュシュが転移していった。第一印象があれだったので、たぶん無理だろう。
そう、番であっても、王族の番に相応しくなければ番う事は出来ない。
邪神云々を抜きに、番えないとわかれば諦めもつく。諦めれば、、、番が死んでも喪失感はそこまでないだろう、、、。
「ルージュ、ジュジュ。今日はもう休むから、部屋に戻っていいよ」
俺は部屋に戻ってから一度も、ルージュ達を見てはいない。自分の事でいっぱいで、いつものようには振る舞えなかった。
「わかりました。でもなにかありましたら、いつでもお呼びください。お休みなさいませ、殿下」
たぶん、一礼してから二人とも部屋を出ていったと思う。いつもルージュ達はそうしているから。
二人の気配が無くなったら、俺は防音結界張り、泣いた。唯一の番を認識したとたん、失う事になった。
番を助ける事が出来ない自分が、無力な自分が情けなくて泣いた。
そして、泣き疲れていつの間にか俺は寝ていた。
『・・地球の神と約束した。絶対にお前に幸せな人生を与えると。一度、番を失うかもしれない。しかし、俺の全力を持って番の魂を救う。それには邪神の完全消滅が絶対条件だから、どうしても番は亡くなってしまう。でも、必ず、、』
神様の声は、深い眠りにあった俺の耳には届かなかった。
278
あなたにおすすめの小説
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる