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七 覚悟
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夜空を見上げると、満天の星々が降るようであった。
身一つで松前城を出立した詞は、とんぼ返りで野を越え山を越え、十里ほど離
れたシベチャリを目指していた。
城を出て、野を横切り森をくぐり抜け、国縫に着いた頃には疲労困憊であった。
辛かった。
幾度か立ち止まりそうになった。
「えい、えい」
と、大声を上げて自身を叱りながら走った。
二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、振って湧いた災難に
見舞われた。
渡るべき橋が無くなっていたのだった。
昨夜来の雨により山の水源地は氾濫していた。
濁流滔々と下流に水が集まった前方の川では、どうどうと響きをあげる激流が
木端微塵に橋桁を破壊していた。
お味方アイヌが使うチプと呼ばれる丸木舟も残らず流されて、渡し守の姿も見
えなかった。
流れはいよいよ膨れ上がり、海のようになっていた。
濁流は詞の心の叫びをせせら笑うかの如く、ますます激しく躍り狂った。
川波は捲いて煽り立て、そうして時は刻一刻と過ぎていった。
川を避けるには元来た道を戻り、大きく迂回しなければならなかった。
そんな悠長な事をしている場合では無かった。
その時であった。
突然、一隊の山賊が現われた。
本州から砂金を求めて、まさに一攫千金を狙って来た一旗組などと呼ばれた素
行不良の和人だった。
「見ての通り、我は裸同然だ。金目の物など何も無い」
詞が、訴えた。
有無を言わさず一斉に、山賊達は刀を振り挙げた。
「急いでいるのだ」
多勢に無勢、勝ち目が無いと踏んだ詞は覚悟した。
川に飛び込み、難を逃れるしか他に無い。
ああ、照覧あれ。
〝ざぶん〟
流れに飛び込むと、詞は大蛇のようにのた打ち、荒れ狂う波を相手に必死の闘
争を開始した。
呆気に取られて見ている山賊共をよそに、詞は満身の力を腕に込めて、押し寄
せ渦巻き引きずる流れを何のこれしきと掻き分けた。
獅子奮迅の人の子の姿には神仏も哀れと思ったか、ついに憐憫を垂れてくれた。
押し流されつつも見事、対岸の樹木の幹にすがりつく事ができたのであった。
馬のように大きな胴震いを一つして、詞はすぐに先を急いだ。
峠道を登った。
山賊を振り切るため濁流を泳ぎ切り、韋駄天走りでここまで突破して来た。
疲労からか、強い睡魔に襲われた。
間もなく地に倒れ伏せた。
黒い風が吹いた。
義だの、愛だの、考えてみれば下らぬ。
卑劣、裏切、悪徳、人を殺して己が生きる。
それが世の習いではなかったか。
詞の脳裏に悪鬼が現れ、ちょっと遅れれば良いと耳打ちした。
アイヌとの約束は反故にしてしまえ。
津軽のくノ一など、所詮は只の百姓女。
叢雲の隙間から、北斗の七番目の星である破軍星が見えた。
詞は、呼吸もしていないではないかと思うくらいの深い眠りに思わず落ちてし
まった。
どれぐらい眠ったであろうか。
潺々、水の流れる音が聞こえた。
〝南無三。寝過ごしたか〟
目を覚まし、詞ははっとした。
そして、猛烈な喉の渇きを覚えた。
周囲を見回し、水を探した。
岩の裂目から滾々と、清水が湧き出ていた。
湧き水を両手ですくって顔を洗い、ごくごくと鯨のように水を飲んだ。
岩清水の横の祠に、地蔵尊があった。
先刻のあの悪鬼の囁きはあれは夢だ。
忘れてしまえ。
五臓六腑が疲れている時は、ふとあんな悪い夢を見るものだ。
魔が差した所を、きっと地蔵様が悪鬼を追い払ってくれたのだ。
「唵訶訶訶尾娑摩曳娑婆訶」
と、唱えながら詞は合掌した。
おんは自己犠牲的な信念で、かかかはかっかっかと嗤いながら、びさんまえい
は稀有なほどに素晴らしい、そわかは成就を願うという梵語で、類稀な尊い地蔵
様をお呼びする真言であった。
こうして、迷いを払拭した詞は吼えたける山犬を怒鳴りつけ小川を飛び越えた。
少しずつ沈んでゆく夕陽の、十倍も早く走った。
山の稜線がうっすらと望まれた。
暴虎馮河の末、夕闇にシベチャリのチャシの影が見えたように思った。
シャガが迎えに出向いて来た。
人の顔の識別が付かない黄昏時であった。
詞の前に、刺客が迫った。
「危ないっ」
咄嗟に、シャガが詞の身体に覆い被さった。
「げっ」
背後から袈裟斬りされたシャガが、思わず呻いた。
シャガは血塗れになっていた。
「シャガっ」
詞は、刺客に相対した。
騒ぎを聞き付けて、アイヌ兵が集まって来た。
抜き足で音もさせずに、刺客はその場を立ち去った。
「シャガ」
肩で息をするシャガの首筋から大量に流れ出る血を、詞は止めようとするかの
ように傷口を押さえながら手を握った。
「これで貸し借り無しだ」
シャガは、前に自身を庇って詞が矢傷を負った事を言い出した。
「馬鹿を言うな」
詞は、シャガを強く抱きしめた。
「花は桜木、人は武士とシャクシャインに話していたね。武士でも無いあたしの
ような雑草のようなくノ一なんぞ、生きてる価値も無い。げほっ」
血を吐くシャガは虫の息で、その瞳は宙を見ていた。
「我は桜よりシャガの花のほうが好きだがな」
しれっと、詞が呟いた。
「何ふざけた事言ってると、ぶっ飛ばすよ」
ほのかに頬を染めたシャガは、照れ隠しに強がった。
「シャガ。どこにでもある花じゃない。この世でたった一輪の大切な花だ」
気の遠くなるシャガを、詞が揺すった。
「ありがとう」
シャガは最後の力を振り絞りながら、そう言葉を残して息を引き取った。
シャクシャインが、遠巻きに見ていた。
円く中心に穴が開いている女の木片の墓標が立てられた。
シャクシャインの特別の計らいでアイヌの祭祀場に、シャガの亡骸が埋葬され
た。
シャガを斬った者は、その手並みから忍びである事は容易に想像できた。
アイヌのシャクシャインとの内通を後の詮議で疑われないようにするために、
詞とシャガに刺客が放たれたのは明白であった。
弾は前から飛んで来るとは限らない。
松前か津軽か、はたまた同族の南部かも知れなかった。
先に襲撃して来た山賊共も雇われた輩であろうと、詞は思った。
戻って来た詞に対して、シャクシャインは信頼を置いた。
「海の彼方の太古の昔、人間達は神によって火を使う事を教えられたと言う」
やおら、詞が話し出した。
「儂等のユーカラにも似たような話がある」
シャクシャインは、言った。
「これにより人間達の暮らしは豊かになったが、同時にその火を用いて争いをす
るようになった」
詞の語りを、シャクシャインは興味深げに聞いていた。
「怒った神は人間達を懲らしめるために、パンドラと言う女に箱を持たせて、人
間界に送り込んだ。絶対に開けるなと言われた箱を、パンドラは好奇心から開け
てしまった」
詞は、続けた。
シャクシャインは、身を乗り出して聞き入った。
「すると、中から疫病・犯罪・悲しみなどありとあらゆる災いが飛び出した」
詞が、言った。
「で、どうなったのだ」
子供のように、シャクシャインが訊ねた。
「慌てて閉めた箱の中には、希望だけが残っていた」
結末を、詞は告げた。
「何が言いたいのだ」
シャクシャインが、焦れたように聞いた。
「神から与えられた火で、シャモの船を襲い火を放った。開けてはならぬパンド
ラの箱を開けたのは貴公ぞ。ここらが潮時ではないか。始末をつける義務がある
と思うが。さもなくば、アイヌは根絶やしにされる」
詞が、諌言した。
シャクシャインは、黙した。
「これも昔、海の彼方の国で人は何のために生きるのかと考えていた識者の話だ」
古代ギリシアの哲学者の話を、詞が持ち出した。
「何のために生きるだと」
そう問われて、シャクシャインは改めて生きる意味を考えた。
他の生き物は何のために生きているのか。
「野山の禽獣は、天敵から身を守りながら空腹を満たすためだけに全力でその日
を生き抜き、その番いは子孫を遺すと死んでしまう。アイヌもまた眼に見えぬカ
ムイによって、この世に生きる機会を与えられている。それ以外に何があろうぞ」
そう、シャクシャインは言い切った。
「だが、シャモはそうは考えぬ。武士は家名に殉ずる」
詞が、言った。
「戦で奪い取るだけの野蛮人の考えそうな事だ」
シャクシャインが、皮肉った。
「先の話の続きだ。自説を曲げずに死罪を言い渡され、悪法もまた法なりと言っ
て自ら毒杯を仰いで死んだと言う」
詞は、話した。
「自分から毒を飲んだのか」
不思議な事を言うと、シャクシャインは聞いた。
「自腹を切る事で物申す武士と似ている」
そう、詞が関連付けた。
「儂一人の身柄を差し出せば、この戦、手打ちにできると」
シャクシャインは、聞き質した。
「それは、身命に賭けて請け負う」
詞は、凛として答えた。
開城する代わりに、シャクシャインが藩主に直接申し開きをする場を設ける提
案をした。
事ここに至るに、アイヌの行く末を慮ったシャクシャインはこれを受け入れた。
降伏の条件として、この戦の自分以外の責を不問に付し、アイヌの身の安全の
確約を言った。
詞は、シャクシャインとの約束を取り付けるとチャシを出て行った。
身一つで松前城を出立した詞は、とんぼ返りで野を越え山を越え、十里ほど離
れたシベチャリを目指していた。
城を出て、野を横切り森をくぐり抜け、国縫に着いた頃には疲労困憊であった。
辛かった。
幾度か立ち止まりそうになった。
「えい、えい」
と、大声を上げて自身を叱りながら走った。
二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、振って湧いた災難に
見舞われた。
渡るべき橋が無くなっていたのだった。
昨夜来の雨により山の水源地は氾濫していた。
濁流滔々と下流に水が集まった前方の川では、どうどうと響きをあげる激流が
木端微塵に橋桁を破壊していた。
お味方アイヌが使うチプと呼ばれる丸木舟も残らず流されて、渡し守の姿も見
えなかった。
流れはいよいよ膨れ上がり、海のようになっていた。
濁流は詞の心の叫びをせせら笑うかの如く、ますます激しく躍り狂った。
川波は捲いて煽り立て、そうして時は刻一刻と過ぎていった。
川を避けるには元来た道を戻り、大きく迂回しなければならなかった。
そんな悠長な事をしている場合では無かった。
その時であった。
突然、一隊の山賊が現われた。
本州から砂金を求めて、まさに一攫千金を狙って来た一旗組などと呼ばれた素
行不良の和人だった。
「見ての通り、我は裸同然だ。金目の物など何も無い」
詞が、訴えた。
有無を言わさず一斉に、山賊達は刀を振り挙げた。
「急いでいるのだ」
多勢に無勢、勝ち目が無いと踏んだ詞は覚悟した。
川に飛び込み、難を逃れるしか他に無い。
ああ、照覧あれ。
〝ざぶん〟
流れに飛び込むと、詞は大蛇のようにのた打ち、荒れ狂う波を相手に必死の闘
争を開始した。
呆気に取られて見ている山賊共をよそに、詞は満身の力を腕に込めて、押し寄
せ渦巻き引きずる流れを何のこれしきと掻き分けた。
獅子奮迅の人の子の姿には神仏も哀れと思ったか、ついに憐憫を垂れてくれた。
押し流されつつも見事、対岸の樹木の幹にすがりつく事ができたのであった。
馬のように大きな胴震いを一つして、詞はすぐに先を急いだ。
峠道を登った。
山賊を振り切るため濁流を泳ぎ切り、韋駄天走りでここまで突破して来た。
疲労からか、強い睡魔に襲われた。
間もなく地に倒れ伏せた。
黒い風が吹いた。
義だの、愛だの、考えてみれば下らぬ。
卑劣、裏切、悪徳、人を殺して己が生きる。
それが世の習いではなかったか。
詞の脳裏に悪鬼が現れ、ちょっと遅れれば良いと耳打ちした。
アイヌとの約束は反故にしてしまえ。
津軽のくノ一など、所詮は只の百姓女。
叢雲の隙間から、北斗の七番目の星である破軍星が見えた。
詞は、呼吸もしていないではないかと思うくらいの深い眠りに思わず落ちてし
まった。
どれぐらい眠ったであろうか。
潺々、水の流れる音が聞こえた。
〝南無三。寝過ごしたか〟
目を覚まし、詞ははっとした。
そして、猛烈な喉の渇きを覚えた。
周囲を見回し、水を探した。
岩の裂目から滾々と、清水が湧き出ていた。
湧き水を両手ですくって顔を洗い、ごくごくと鯨のように水を飲んだ。
岩清水の横の祠に、地蔵尊があった。
先刻のあの悪鬼の囁きはあれは夢だ。
忘れてしまえ。
五臓六腑が疲れている時は、ふとあんな悪い夢を見るものだ。
魔が差した所を、きっと地蔵様が悪鬼を追い払ってくれたのだ。
「唵訶訶訶尾娑摩曳娑婆訶」
と、唱えながら詞は合掌した。
おんは自己犠牲的な信念で、かかかはかっかっかと嗤いながら、びさんまえい
は稀有なほどに素晴らしい、そわかは成就を願うという梵語で、類稀な尊い地蔵
様をお呼びする真言であった。
こうして、迷いを払拭した詞は吼えたける山犬を怒鳴りつけ小川を飛び越えた。
少しずつ沈んでゆく夕陽の、十倍も早く走った。
山の稜線がうっすらと望まれた。
暴虎馮河の末、夕闇にシベチャリのチャシの影が見えたように思った。
シャガが迎えに出向いて来た。
人の顔の識別が付かない黄昏時であった。
詞の前に、刺客が迫った。
「危ないっ」
咄嗟に、シャガが詞の身体に覆い被さった。
「げっ」
背後から袈裟斬りされたシャガが、思わず呻いた。
シャガは血塗れになっていた。
「シャガっ」
詞は、刺客に相対した。
騒ぎを聞き付けて、アイヌ兵が集まって来た。
抜き足で音もさせずに、刺客はその場を立ち去った。
「シャガ」
肩で息をするシャガの首筋から大量に流れ出る血を、詞は止めようとするかの
ように傷口を押さえながら手を握った。
「これで貸し借り無しだ」
シャガは、前に自身を庇って詞が矢傷を負った事を言い出した。
「馬鹿を言うな」
詞は、シャガを強く抱きしめた。
「花は桜木、人は武士とシャクシャインに話していたね。武士でも無いあたしの
ような雑草のようなくノ一なんぞ、生きてる価値も無い。げほっ」
血を吐くシャガは虫の息で、その瞳は宙を見ていた。
「我は桜よりシャガの花のほうが好きだがな」
しれっと、詞が呟いた。
「何ふざけた事言ってると、ぶっ飛ばすよ」
ほのかに頬を染めたシャガは、照れ隠しに強がった。
「シャガ。どこにでもある花じゃない。この世でたった一輪の大切な花だ」
気の遠くなるシャガを、詞が揺すった。
「ありがとう」
シャガは最後の力を振り絞りながら、そう言葉を残して息を引き取った。
シャクシャインが、遠巻きに見ていた。
円く中心に穴が開いている女の木片の墓標が立てられた。
シャクシャインの特別の計らいでアイヌの祭祀場に、シャガの亡骸が埋葬され
た。
シャガを斬った者は、その手並みから忍びである事は容易に想像できた。
アイヌのシャクシャインとの内通を後の詮議で疑われないようにするために、
詞とシャガに刺客が放たれたのは明白であった。
弾は前から飛んで来るとは限らない。
松前か津軽か、はたまた同族の南部かも知れなかった。
先に襲撃して来た山賊共も雇われた輩であろうと、詞は思った。
戻って来た詞に対して、シャクシャインは信頼を置いた。
「海の彼方の太古の昔、人間達は神によって火を使う事を教えられたと言う」
やおら、詞が話し出した。
「儂等のユーカラにも似たような話がある」
シャクシャインは、言った。
「これにより人間達の暮らしは豊かになったが、同時にその火を用いて争いをす
るようになった」
詞の語りを、シャクシャインは興味深げに聞いていた。
「怒った神は人間達を懲らしめるために、パンドラと言う女に箱を持たせて、人
間界に送り込んだ。絶対に開けるなと言われた箱を、パンドラは好奇心から開け
てしまった」
詞は、続けた。
シャクシャインは、身を乗り出して聞き入った。
「すると、中から疫病・犯罪・悲しみなどありとあらゆる災いが飛び出した」
詞が、言った。
「で、どうなったのだ」
子供のように、シャクシャインが訊ねた。
「慌てて閉めた箱の中には、希望だけが残っていた」
結末を、詞は告げた。
「何が言いたいのだ」
シャクシャインが、焦れたように聞いた。
「神から与えられた火で、シャモの船を襲い火を放った。開けてはならぬパンド
ラの箱を開けたのは貴公ぞ。ここらが潮時ではないか。始末をつける義務がある
と思うが。さもなくば、アイヌは根絶やしにされる」
詞が、諌言した。
シャクシャインは、黙した。
「これも昔、海の彼方の国で人は何のために生きるのかと考えていた識者の話だ」
古代ギリシアの哲学者の話を、詞が持ち出した。
「何のために生きるだと」
そう問われて、シャクシャインは改めて生きる意味を考えた。
他の生き物は何のために生きているのか。
「野山の禽獣は、天敵から身を守りながら空腹を満たすためだけに全力でその日
を生き抜き、その番いは子孫を遺すと死んでしまう。アイヌもまた眼に見えぬカ
ムイによって、この世に生きる機会を与えられている。それ以外に何があろうぞ」
そう、シャクシャインは言い切った。
「だが、シャモはそうは考えぬ。武士は家名に殉ずる」
詞が、言った。
「戦で奪い取るだけの野蛮人の考えそうな事だ」
シャクシャインが、皮肉った。
「先の話の続きだ。自説を曲げずに死罪を言い渡され、悪法もまた法なりと言っ
て自ら毒杯を仰いで死んだと言う」
詞は、話した。
「自分から毒を飲んだのか」
不思議な事を言うと、シャクシャインは聞いた。
「自腹を切る事で物申す武士と似ている」
そう、詞が関連付けた。
「儂一人の身柄を差し出せば、この戦、手打ちにできると」
シャクシャインは、聞き質した。
「それは、身命に賭けて請け負う」
詞は、凛として答えた。
開城する代わりに、シャクシャインが藩主に直接申し開きをする場を設ける提
案をした。
事ここに至るに、アイヌの行く末を慮ったシャクシャインはこれを受け入れた。
降伏の条件として、この戦の自分以外の責を不問に付し、アイヌの身の安全の
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