細めの雪にはなれなくて

雨門ゆうき

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中学生 初めての恋人編

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 東北地方のとある県、海沿いに位置する街に住んでいるかおりは、中学1年の終わりに初めての恋人ができた。雪が降り始め、空気は乾燥した肌がひりつくほど冷たい。尾根に沿い流れる小川は、へりに沿って生える小さな草木を凍らせ、広がる海は他の季節と比べると少し狭くなったような錯覚すら覚える。それでも、しんしんと降る雪は時に邪魔な音をかき消して、いつもの道を独特の静寂へと連れていってくれる。
 若いカップルにとっては、そんな静けさも冷たさも二人だけの世界を演出してくれるアイテムとなっていたのかもしれない。お互いに初めての恋人で、最初の一週間くらいは学校帰りに一緒に帰る程度だった。それすらも少し気恥しい気がして、少し人目を気にしながら普段とは道を少しずらして帰ったりもしていた。しかしお互いの友人にその関係性がばれてしまった後(かおりは、友人の葉子に帰り道ですぐに気づかれてしまった。)では、堂々と休みの日に遊びに出かけられるようになって、初めてのキスもそんな日の、喫茶店へ行った帰り道だった。
 初めてのキスは特に女性にとっては、おそらく特別なものであろうかと思う。かおりにしてもその点は同様だった。高崎は見た目も真面目そのものであったし、頭がいいのも見てすぐに想像がつくような男子だったので、そういう積極性は一切感じられない。喫茶店で学校での友人に関する噂話や、囲碁に関する話などたわいもない話で2時間ほど過ごした帰り道、高崎が不自然に道を変え、かおりを公園へと誘った。
 公園のベンチで少し話をした。いつもより少しだけ座る二人の距離が近い。頭のいい高崎は中学1年ながら、会話の合間も次の話題を出してつなぐのも上手かったが、この日は少しそ会話の間にまごついていた。高崎がタイミングをはかっていることをかおりは察した。
 そこから五十秒いや1分かもしれない、二人はわざと会話をつなぐのをやめた。雪は降っていなかったけど、代わりにぽつぽつとみぞれまじりの雨が降り出した。彼の肩にあごを乗せて見えた世界には、公園を囲うように植えられた背の低い木をぽたぽたと弾く水。ふっと目線を空に向けた。
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