【R18】うちの子はどこですか!?!?

コーヒー牛乳

文字の大きさ
42 / 58
うちの子は素直ですか?

【閑話】うちの子は一人暮らしできますか?

しおりを挟む
みんな覚えているかな?
俺は両国はじめ。大塚海帆とは保育園から大学まで同じの腐れ縁だ。二回目の登場だから思い出してほしい。

思い出したかな?
では、続けよう。

俺は見た。
大塚の新しい?彼氏?を。

大塚は三月頃に一人暮らしをするために越していった。律儀にもうちに挨拶に来たのか、リーフパイがリビングに置かれていた。うまかった。まあ、俺が好きなのは煎餅なんだが。

うちの親が心配してうるさいので、菓子やら蕎麦やらミートソースやらの食料品を持って大塚の新居を訪ねた。
大塚の新居は俺の家と学校の間に位置する。元の家からそれほど離れてはいない。
前もって約束した時間にエントランスでインターホンをプッシュする。

大塚の新居であるマンションはなかなかしっかりした造りで、セキュリティも大丈夫なようだ。さっきマンション周辺も見回って来たが、治安も悪くなさそうでホッとした。

「はーい」

能天気な挨拶と共に自動ドアが開かれた。挨拶と同時にドアが開いたが、ちゃんと確かめてから開けたのだろうか。中に踏み込めば清潔なエントランスと常駐する管理人があった。ポスト周辺、掲示板、エレベーターも綺麗に整えられている。

うむ。管理会社もまともなようだ。

各フロアの玄関ドアまわりも生活感が無く、住人も比較的落ち着いている層なのかもしれない。非常階段も綺麗に清掃されている。火事の時も安心だ。
大塚の部屋は角部屋だった。ご近所トラブルが無ければいいが。
玄関の表札を見る。札は入っていない。偉いぞ大塚。防犯意識はあるようだな。

しかし、大塚家のドアは少し開かれていた。おい。ここにこそ、防犯意識を持て!

「不用心だろ。閉めておけよ」

ドアを開けると大塚がパタパタと廊下を歩いて来た。部屋着だ。やたらデカいパーカーを着てるな。趣味が変わったのか?

「すぐ来ると思ったんだよ。いらっしゃい」

しゃがみ込みスリッパを並べる大塚の首元から胸の谷間が少しだけ見えた。そしてデカいパーカーの裾から白い太ももが見え……それを見ないように視線を引き剥がしながら、持ってきた支援物資を渡す。母さんの「心配だわー」と言っていた様子を思い出して心頭滅却する。

「お邪魔します。これ、母さんから食料とミートソー……」

心頭滅却した俺の視界に入ってきたのは、大塚の後ろに立っていた優しく微笑む男だった。

「こんにちは。品川夏樹です。みほちゃんの幼馴染なんですよね? 会えてよかった」

そこには神々しいまでの美形がいた。日本人か? いや、そんなことはどうでもいい。長身の大塚と並んでも、なお大きい。そして長い。脚が。モデルか? ここはモデルルームだったか?

「はじめまして……両国はじめ……です」
「あ! おばさまのミートソース~これ好き! ありがとうハジメン! さ、中に入って。なっちゃんも、そこに立ってたら入れないでしょう」

"なっちゃん"だと? そんな可愛い名前で呼んでいるのか? もっと洒落た名前で呼ばなくていいのか!?
おいおい、なっちゃんが大塚の抱え込んでた荷物を持ったぞ! ジェントルマン!

そのままジェントルマンは大塚の家の冷蔵庫を開け、ミートソースのタッパーを仕舞った。そして流れるようにお茶を注ぎ、菓子をお盆に乗せ机に持ってきた。最後にはナチュラルに大塚の横に着席。なんだこのジェントルマン……近いぞ……? ゼロ距離だぞ?

「え、同棲……?」
「いや、違う。なっちゃんはお隣さん」

隣ってお前、ここは角部屋で隣は一部屋しかないじゃないか……!

「すでに! ご近所トラブルだと!?!?」
「え、あ、ちが、ええ?」

慌てる(怪しい)大塚の横からなっちゃんとやらがにこやかに割入り説明を始めた。

「ぼくもみほちゃんの幼馴染というか、昔からの知り合いなんです」
「あ、知り合い……なのか。なら大丈夫か」

大丈夫なのか?

「はい。みほちゃんは危なっかしいので心配ですよね。わかります」

なっちゃんは本当に心配しているような表情で大塚に笑いかけた。ちょっとイケメンが過ぎるが大丈夫なのかもしれない。なっちゃんは心があるイケメンなようだ。

「あぁ、本当に大塚は昔から……いやいや、それにしても大塚、こんなイケメンな彼氏がいたんだな」
「彼氏じゃないよ!」
「は? 別にルミさんにチクらねーよ」

照れるな大塚。俺にはわかる。

「お母さんはなっちゃんのことを知ってるし、彼氏とかそういうんじゃなくて……なっちゃんは、ペットなの!」
「いや、より心配だわ」
「みほちゃん、それは二人だけの内緒にしよう? ね?」

いや、なっちゃんよ。お前もか。

「じゃあ、あれか、家の近くのコンビニでよく一緒に買い物してたワイルド系イケメンが彼氏か」
「は? 違うけど」

違うのか!? あんなに甘酸っぱい空気だったのにか!?

「じゃ、じゃあムーンバックスで一緒に勉強デートしてた眼鏡の色男か!?」
「は?! もっと違うけど!?」

大塚は急にパーカーの紐を捻じりはじめ頬を染めて何やら言い訳を繰り返している。なんだよ、その反応!!

ねえ? となっちゃんの方を見たら、彼はとても綺麗な顔で笑っているのに雰囲気が明らかに怒っていた。

──俺は、とんでもない燃料を投下してしまったのかもしれない。

大塚は気付いていないのか、まだ色男はなんでもないんだとかなんとか言っている。もうやめておけ大塚。それ以上、色男について燃料を出すな。もう隣は大火事だぞ。

「……はじめさん。安心してください。みほちゃんはぼくが守りますから。家も隣ですし」

なっちゃんは大火事のことはさて置くらしく、今度は俺の心配する心に寄り添うような温かみのある表情で微笑んだ。なんだ、なっちゃんはいいヤツじゃないか。だいぶイケメンが過ぎるが中身もイケメンだな、おい。

確かに大塚のことは心配だが、毎日家まで様子を見に来ることは現実的じゃない。なっちゃんがそばにいるなら安全だろう。

「頼んだぞ。構内では任せておけ。幸い、学部も同じだ」
「はじめさん! ありがとうございます……みほちゃん、学校で変な奴に絡まれてないか心配だったんです」
「ああ。俺も、大塚が一人暮らしだなんて、変な奴に押し入られないか心配だったんだ。」

俺にはわかる。
なっちゃんは優秀な番犬に違いない。

なっちゃんと固い握手で、大塚の家を後にした。

大塚。がんばれよ……!
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...