ライアスの翼シリーズ① ~光と影の王女~

桜野 みおり

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第4章 資質~国をつかさどる者のとは

(2)演舞~美しきエリオルの舞い

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それからしばらくして、再びディタが三人を迎えにやって来た。

「それでは、こちらにお越しください」

連れて行かれる場所はどうやら謁見の間の様だった。
本当に最悪、暴れることになったとしても、何とか成りそうな広さのイメージがあった。

中に入ると一番奥の中央にライアス王子。その両脇に現王様と王妃様。そして現王の側には、あの銀色の髪にオッドアイのラファート・プラント。王妃の側にはネビィスが控えていた。

必要最小限の人数構成に「さすが!」と思わず言いたくなるのを、アーメルは必死にこらえた。

「その方たちが旅の吟遊詩人と踊り子か?」

ライアスの問いに、キールがまことしやかに答える。

「はい、しがない旅芸人でございます。この度、タムール国に参りましたところ、入り口の看板が目に止まりました。
ぜひ、ライアス王子様が王様になられるお祝いに、私共の舞いを披露したいと思いますがいかがでしょうか?」

あくまでも下手にキールが語る。その後ろでエリオルとアーメルがかしずいて、頭を垂れていた。

「そうか、それはぜひ、見て見たいものだな。
しかし、ギャラリーが少なくてすまんな。
なんせ、長老じじい共はこれの良さは分からんだろうし、剣士や女官たちはそれぞれ忙しくてな。なんせこの国は他と比べてもかなり小さな国だからな。すまぬが許せ。
その代わり、父上と母上が見てくれるし、父上の側近も剣士長もみてくれるからな。思う存分踊ってくれ」

相手に見られていることを想定して、ライアスは人数が少ないことで不信感を持たせない様に振る舞った。
それにしても、ここに王と王妃を引っ張り出して来ること自体がさすがとしか言いようがない。

「とんでもございません。私たちが二度とお目にかかることができないであろう王様と王妃様にも見ていただけるなんて、とても幸せに存じます」

キールの演技もなかなかのものである。
ハワードやキルシュはこの様子を、隠れてどこかで見ているのだろうか?

「そうか、そう言っていただけるとありがたい。
では、早速、頼もうか」

「かしこまりました。一世一代、最高の演技をさせていただきます」

キールのその声を合図に、後ろのふたりは一斉に動き始める。
おもちゃの剣を構えて、右と左に別れる。

青と赤の衣装に身を包んだふたりは顔が見えない分、余計に美しく妖艶に見える。ラファードの髪の様な白銀の衣装を纏ったキールは椅子を一脚借りると、そこに腰掛け竪琴を奏で始める。

竪琴の音色が始まると、ふたりはひどく美しく、流れるかの様に剣舞を踊り始める。
その美しさに全員が食い入るかの様にふたり想的な空間になっていた。
しなやかに流れる動作の全てが美しく、申し分ない。

「まるで夢の世界に迷い込んだみたいだな」

ボソッとライアスが言う。
ただ踊っている当事者のエリオルはどうやってライアスに近づくかを考えあぐねていた。
踊っている時に変に前に進み出てもおかしいし、なるべく自然な動きでライアスに近づきたいが、その方法が見つからない。

踊りが終わると一斉に拍手が起きる。
ギヤラリーが少なくても、それぞれが最大級に拍手を送ってくれた。
その場で三人は深々と頭を下げる。

「やあーすごい! 旅のものたちがこんなにすごいとは思いもしなかった。ぜひ他の奴らにも見せてやりたい。
また、頼んでもいいか?」

「勿体ないお言葉を、ありがとうございます」

エリオルはかしこまって礼を述べた。

「せっかくだから、褒美をやろう。何がいい?」

ライアスはいつもの感じそのままで、エリオルに問いかける。
全て分かった上で提案してくれているなら、この機会を使うしかない。と言うか、かなり自然な感じで行けそうだ。

「それでは今回の記念に、ライアス様の御手に口づけをさせてください。貴方様が清い王となられる様に、祈りを込めてさせていただきます」

エリオルの言葉にライアスは満面の笑みを浮かべる。

「それはありがたい。父上、母上、これで我が国も安泰かもしれませんよ」

冗談交じりにそう言うと、エリオルを真っ直ぐに見つめる。
その瞳は口調とは裏腹に、真剣そのものなのが見て取れる。

エリオルの意図するところは理解しているのが分かる。
エリオルはそのままゆっくりとライアスに近づく。

その側でひざまずくと、ライアスは何のためらいもなく右手を差し出してくる。
ベールをはぐると仮面を付けた美しき顔が現れる。

「仮面を付けているなんて変わっているな。でも面白い趣好だよな」

一応、初めてそれを見たならどう言うか、シュミレーションは完璧だった。
エリオルは差し出されたその右手を、両手でしっかりとすくい挙げると、その甲に口づける。
とー次の瞬間、影が素早く動いたかと思うと、ライアスの首に短剣があてがわれていた。

「動くな! 手荒なことはしたくない。大人しくしてくれ。
この王子はしばらくオレたちが預かる。
剣士長殿に側近の方、くれぐれも変な真似はしないでくれよ。
少しでもおかしい動きをしたら、この王子の命はないぞ」

これ見よがしに短剣をライアスの首に押し付けながら、エリオルは言う。
とっさに剣に手をかけたネビィスは、諦めたかの様に手を離す。

ここにいる人種はみんな演技が上手い。
事前告知を知っていながら、これだけ自然に振る舞えるとは、なかなかのものである。

「では、悪いがライアス王子。大人しくついて来てもらいましょうか」

エリオルはそう言うと、首筋の短剣を背中に回してキールに目配せする。
キールは先頭に立って部屋を出て行く。
そのすぐ後にライアスとエリオル。一番後ろにアーメル。
一応、さらう方の動きとしても、ほぼ完璧なイメージを表現していた。

「仕方ない。まだ命は惜しいからな。砂漠の散歩としゃれ込むか」

大きなため息をついてライアスはそう言うと、大人しくされるがままに歩き出す。

「ライアス様、どちらへ?」

城を出るまでに何度か剣士たちや女官たちに声をかけられる。

「せっかく美女が会いにきてくれたから、口説いてちょっと砂漠を散歩しようと思ってな」

冗談とも本気とも取れる口調でそう言うと笑う。
エリオルはライアスが何事にも動揺しない精神とその器の大きさに少なからず驚いた。
勿論、分かって連れ去られている訳だが、それにしてもこれほど物怖じしない性格はライアス王子の武器かもしれない。
キールやアーメルたちが仕えたいという気持ちが少しだけ理解できたエリオルだった。

「にしても、暑いな。もう少し涼しい時に連れ出してくれれば良かったのに」

無事にタムール国の門を抜け、砂漠へと出る。
ライアスはマイペースにぶつぶつと愚痴りながらも、ちゃんと足を動かしていた。

さて、どうしたものか?

これから先はライアスのしたい様にしてもらうとしても、それを大人しくジオールが聞かなかったとしたら?
魔境王との約束もあるが、エリオルはどうしてもガーリオを手にかけたいとは思えなかった。

だからと言って、自分の全てをさらけ出して、表立って魔境王と戦う訳にもいかない。
どんな結末になるのか?
この時点では全く先が見えなかった。

ただでさえベールを被っていて、暑さが半端ないので、喋ると体力低下が著しくなるため、黙って歩く。
砂漠の上を歩くのは、結構な体力を消耗する。
それでも何とか洞窟に辿り着いた。

やはり近くに移動して気を飛ばして観察していたのか、呪術師のガーリオが出迎えてくれた。

「さすがだな。見事な剣さばきと動きだった」

「それはどうも。あっ、そうだ。これ、やっぱり眼帯の方がいいだろうから」

エリオルは大事そうに懐から眼帯を取り出すと、ガーリオに手渡した。

「エリオル、いつの間に?」

さすがのジオールもそこには気がついてなかったらしい。

「オレは元々素早いんだ。お前が見ている隙ぐらいつけるさ」

種を明かすと途中でハワードと交信して、眼帯をくれる様に頼み、部屋まで誘導してくれたディタがこっそりとエリオルに手渡したのだった。

「そうか、すまん。ありがとう」

素直に礼を言うとその眼帯を受け取った。

「ジオールは?」

メインの姿がないので、エリオルが問いかけた。

「上でお待ちかねだ。勿論、ライアス王子、貴方もですよ。
ようこそ、我が城へ」

ガーリオはそう言うと右手を広げ、奥の方へと促す仕草をする。

「城ね」

ライアスは一言ぽつりと呟くと、大人しく奥へと歩き出す。
砂の城のはずなのに、造りはかなり素晴らしく、少しだけ驚いた表情のライアス。

すぐにジオールのいる部屋へと辿りついた。
さすがに本物の王宮ほどの広さはない。

ジオールはライアスに似た、穏やかな笑みをたたえ、迎え入れてくれた。

「ようこそライアス王子。お初にお目にかかる。ジオール・マーティルと申す」

「ライアス・マーティルだ。随分と乱暴なお招きだな。まあ、美人が一緒だったから許すが」

無理矢理連れ去られた割には、案外元気に好き勝手なことを言っているライアスに苦笑を浮かべるジオール。

「本当にジュレップの息子か?」

疑問符を投げかける。
そんなジオールに今度はライアスが不思議そうに問いかける。

「何でだ? 一応息子のはずなんだが。そう表立って聞かれると自信はないが」

いやいや、そこは強く主張するところでしょう!
心の中で思いっきりダメだしするキール。その声がライアスに聞こえる訳もないが。

「いや、顔はジュレップに似ていると思うんだが、性格が・・・・・・正直俺は嫌いじゃないと思って」

連れ去っておいてその言いぐさはないものだが、とりあえずライアスには好印象を受けたらしい。

「俺は父上にとっても母上にとっても、手が付けられない程の悪ガキだよ。本当は16歳で王位を継ぐはずだった。だけど俺は嫌だった。
頭の硬い三長老の小言をずっと聞くのも、ただ貴族や王族に生まれたからと言うだけでえばり腐っている奴らも、全てがうっとうしい。
そんなものたちの為に何で俺が王になる必要があるのか」

きっとそれはライアスの本音なのだろう。
だけど今、それを言ってどうする気なのか?

「お前は俺と一緒なんだな。俺はお前の気持ちがよく分かる。
確かに一国を治めると言うことは大変なことなのだろう。
結局、王様ひとりじゃあ、どうにもできない。
だけど、訳の分からん奴らに国を動かされるくらいなら、一度壊してしまった方がいい。
ちまちまと手をかけるよりも、よっぽど簡単でやりやすい」

ジオールの言葉にライアスは笑みを浮かべる。

「なるほどな。だからゾルクを使ってタムール国を壊そうとした訳か。俺の考えは確かにお前に近い。
だが、決定的に違うところもある。
民を巻き込むことだけは許せない! 国民たちには何の落ち度もないのに。それにまだうら若い剣士の卵たちも志半ばで消えた」

鋭いライアスの目が、ジオールを見つめる。

「お前は王位が欲しいのだろう?
ならば、どちらが王位に相応しいか、正々堂々とその剣技で決着を付けよう。王はいかなる時も、国を守る為に最善を尽くさなければならない。
心配しなくていい。本当にお前が俺に勝てば、タムール国はくれてやる」

ライアスのとんでもない提案に、さすがのジオールも一瞬固まる。
ビックリして固まったのはジオールばかりじゃない。

キールとアーメルもさすがに困惑の色を浮かべていた。
そんな中で唯一、エリオルだけが冷静だった。
その対応があまりにもライアスらしくて、笑ってしまいそうになる。

ライアスが王様になったら、本当に面白い国が出来るかもしれない。
エリオルにそう思わせて、ライアスは余裕の表情で腰の剣を引き抜く。

「えっ、ここでか? ちょっと待ってくれ。いくら何でも、ここは俺の城だ。壊さないでくれよ」

ジオールの苦情に、ライアスは当然の様に言い、挑発する。

「俺に勝てば、この城はいらなくなる。壊れても何の問題もないじゃないか。本気で来い! 俺を殺すつもりで本気でかかって来いよ」

さすがにこれ以上はと判断したのか、ジオールは自分の剣をゆっくりと引き抜いた。

確かに国が欲しいと願ったのは自分。
自分が王になるはずだった国の王子。その王子は今、目の前にいる。
その王子を倒して国を取り戻す。この為に人生を捧げてきたのだから。

「行くぞ、タムール国の王子よ!」

大きな声をあげ、切りかかっていく。
絡み合う剣は交えて止まる。ほぼ互角。

以外にもジオールは、隠れていた割に、剣の腕はなかなかのものだった。
端から見ているものたちにもそれはすぐに分かったが、戦っているふたりならなおのこと、それはお互いにダイレクトに伝わるはずだ。

それが証拠にライアスは周りの人間が明らかに分かるくらい素直に、めちゃくちゃ嬉しそうな顔で、生き生きと剣を交えているのが分かる。

「あの王子は自分の置かれている状況が分かっているんですかね?」

ボソッとキールがぼやいている。

「まあ、双方ともに楽しそうだからいいんじゃないのか?」

エリオルはふたりの様子と動きを冷静に見つめながら言った。
確かにジオールもすごく楽しそうに剣を交えていた。
ここの空間だけを見せられたら、まさか真剣に戦いをしているとは思わないかもしれない。

「それにしても、これ、いつ終わるの?」

アーメルが楽しそうなふたりを見つめながらぼやく。

「大丈夫だ。ライアスは遊んでいるだけだから。
飽きればすぐに勝敗はつく。まあ、問題はその後だが」

エリオルはハワードに育てられていたため呪術も少し出来るが、何より剣士として腕が尋常ではないほど強い。そうなる為に育てられたのでそこは仕方ないのだが、そのお陰で相対した人物の力量を見極める力もかなりのものだった。
少し太刀筋を見ただけで、ライアスの方が上であることは分かった。
それならば、後はライアスの采配に任せるしかない。

この王子が本当に王としての器があるのなら、それなりの判断で決着を考えることだろう。

エリオルは純粋にそこがどうなるか?
興味を持っていた。面白い結果をもたらしてくれたなら、ここにいてもいいかもしれないと心が判断したからだ。

「悪いな、これで最後だ!」

ライアスがそう言うと、かなりな速さでジオールの剣を跳ね上げる。
その瞬間、空を舞った剣は弧を描いて飛び、後方の地面に突き刺さる。

そしてその瞬間、ジオールの首筋にライアスの剣があてがわれる。
確かにスピードではライアスの方がかなり上の様だ。

「俺の負けだ」

素直に両手を挙げるとジオールはそう言った。
ライアスはすぐに剣先を外すと鞘に収めた。

「好きにしろ。やっぱり俺の王国はこの砂の城と同じ、幻想に過ぎなかったんだな」

ふたりで楽しく暴れたせいで、城の中はかなり破損していた。
元々、砂を固めて作った建物なので、破損具合いは半端ない。
ただそれが今のジオールの心境を投影してしているのも事実だった。

「タムール国の王子よ。ジオール様の代わりにこの私の命を捧げよう。それで許してはくれまいか?
こんな老いぼれの呪術師の命など取っても何の役にも立たないだろうが、何とかそれで、ジオール様の命を助けてはくれまいか?」

必死な様子でガーリオが飛び出して来る。
片目の呪術師の命乞いに、ライアスは少しだけ考える仕草をした。

「ガーリオ、自分でしでかしたことは自分で責任を取る。
今まで本当にありがとう」

ジオールの言葉から死を覚悟していることは理解できたが、ライアスはどう決着を付ける気なのか。

しばらくの後、ライアスが静かに話始めた。

「俺、ふたりとも好きかも。ジオール、お前『王』になるんじゃなく、王に仕える気はないか?」

ライアスの言っている意味が理解できず、ぽかんとライアスを見つめるジオール。

「俺は純粋にお前の腕が欲しい。隠れていたことを考えるとここまでの腕になるには相当の努力が必要だっただろう。
例えそれが自分の王国再建の為という理由だったとしても、懸けてきた人生の時間を考えるとあっぱれだと思う。
それに、どう考えてもお前は俺と同じ様な考えの持ち主だしな」

「つまり、俺がお前に使えると言うことか?」

この時、エリオルはハチャメチャ王子様のハチャメチャな提案について、かなり評価していた。
何か言おうとするジオールを遮って、エリオルが話をする。

「王様になるにはきっと条件があるんだ。
そもそも兼ね備えているであろう王としての器と生まれ落ちた時に与えられる環境。
そのどちらも5分5分じゃないと上手くいかない。
どちらかに偏りがあれば、その王の王としての人生は短命で終わる。
オレもお前のことは嫌いじゃないが、王様の資質を考えた時にどちらの要素もライアス王子には劣る。
そのことは自分が一番良く分かっているんじゃないのか?」

エリオルの問いかけに、ジオールは仕方なさそうに頷く。

「だが、問題があるぞ。俺はタムール王国の王宮の人間には顔が知られてしまっている。それにゾルクを使ってタムール国を無茶苦茶にしようとした。それは変えようのない事実だ。
そんな奴を再び国に呼び戻そうとするバカがどこにいる?」

ジオールは当然のことを言ってライアスを見つめる。

「ここにいるけど。だけど確かにこのまま城に戻るのは面倒なことが多いな。長老じじいが黙ってないだろうしな」

現状、いち王子にすぎないライアスには、決定権というものが単独で与えられている訳ではない。
何か決定するには王と王妃、そして三長老の承諾が必要となる。

「仕方ない。別人になってもらうか。
そうだ! 護衛剣士になってくれないか?
エリオルとふたりで仮面の護衛剣士ってどうだ?
それなら顔も隠せるし、すぐにバレることはないだろう?」

ひどく楽しそうに言うライアスに、思わずエリオルが反論する。

「オレはまだなるとは言ってないだろう! お前が勝手に!」

言った瞬間、ハッとしてジオールを見る。
まあ、今更バレても問題はないのだが。

「なるほど、三人ともライアス側の人間だったんだな。
と言うことは・・・・・・ジュレップも一役かったのか。
そうか、その時点で俺の負けは確定していたのかもな」

しみじみと語るジオール。

「でも、ならなおのこと、エリオルお前には感謝している。
ガーリオを本気で助けてくれた。自分の体調も顧みることなく、迷わずリスクを犯してくれた。本当にありがとう」

「ジオール、オレは別に、当然のことをしたまでだ。
感謝されるようなことでもない」

エリオルはライアスと出会った時と同じ、ぶっきらぼうな感じで返事を返す。

「ライアス様、でもそんなに上手くいくでしょうか?
見た目は確かに仮面を付ければ何とかなるかもしれませんが、声だけは簡単に変えることはできないですよ」

キールの言い分に大きく頷いてから、ライアスは言葉を紡ぐ。

「分かっている。その辺は別にいいんだ。この計画が始まった時から、父上と母上には全て話してある。
その上で、父上はできることなら殺すことなくジオールを助けて欲しいと言った」

「えっ?」

それはジオールにとっては意外な言葉だったのか、ひどく驚いた表情をしている。

「方法は俺の好きにしていいと言うことだったから、無難に剣技にしてみた。正直、エリオルくらいの力だとアウトだとは思ったが、さすがにそこまでなるのは状況的に無理だろうから、普通に考えれば俺の方が有利だろうと判断したんだ」

計画的な行動と絶対的な信用に裏打ちされた人脈。
確かにどれを取っても、ジオールにはないものだった。

「王の器か・・・・・・なるほどな。エリオルお前の言った意味が分かる気がする。確かにライアス王子は大した王様としての器を持っているのかもな」

ことここに及んでは、それを認めざるを得ない。

「俺でもいいなら。ガーリオ、すまない。俺たちの王国は作れなかったな」

側でかしずくガーリオにジオールは謝った。
ガーリオはそんなジオールを見て、激しく首を振る。

「すいません。私はこの三人がジュレップ王の側の人間であることを知っていました」
そう、最初のぞいていた時、帰って来たアーメルの姿を見ていたガーリオは、すぐに三人がジュレップの手の者だということに気が付いていた。

「ならどうして私たちをそのままにしたんですか?」

キールの問いにジオールは苦笑する。

「このままずっと誰にもバレないでゾルクを暴走させ続けることは不可能と分かっていたし、私は王に目を付けられてしまったから、急がないといつ消されるか分からない。
それに、エリオルは本気で私を助けてくれた。
本当は殺す予定だったかもしれないであろう私の命を」

「えっ、もしかして魔境王?」

アーメルがビックリした様子で口走る。
キールとエリオルは知っているが、他は知らないので、ちょっとしたプチパニック状態になる。

「えっ、それはまずいな。いくら聖霊獣を持っていても、勝手が違い過ぎる」

さすがのライアスも弱気な発言をする。
そして、正にその時だった。
タイミングよく、その声が聞こえてきたのは。

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