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リオン編   願いの日

リオン編   願いの日2

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 暗殺隊を抜けた後、僕は部屋に篭りがちになった。

 とにかく暇だった。
 しかし僕と違って、兄さんはとても忙しい。

 忙しすぎて、僕の相手もほとんどして下さらない。 

 暇になると、僕はつい魔力を使ってしまう。
 兄さんがその事を嫌がると、よく知っているのに。

 聞こえてくるのは、僕の影口。
 そして兄の。

 そんなことは前からだった。
 ずっと前から知っていた。

 だから人気の無い場所をお借りして、神官として過ごしたかったのだ。
 少しでも早く、『善の結界』を極める修行をするために。

 今の僕に、最強レベルの結界を張り続ける力など無い。
 あっても、範囲は城をかろうじて包めるかどうか。

 コントロール能力は、地下神殿を出た11歳のときにも劣る。
 修行を怠ったせいで、僕を中心に球形に結界を張るのでさえ、精一杯だ。

 持続時間も少なくて、これでは意味が無い。
 エルシオン王国時代のように永続するからこそ、価値があるのだ。

 それでも前は、ほんの少しだけ人々に期待していた。

 結界なんか、すぐには要らないのではないか?

 抗争が終結して殺気立った雰囲気が和らげば、人々の態度も変わるかも。
 結界なんか無くても、売り子をしていたときのように、皆ニコニコ笑ってくれるかも。

 でもそれは、甘すぎる考えだった。

 抗争が無くなったからこそ、人々はいっそう『僕』を必要としなくなり、異端の魔物には早く消えて欲しいと願っている。
 命がけで皆を守っても、感謝してくれるのは兄と王。僕の嫌いなアリシアだけしかいない。

 なら、早々に消えてやる。
 みんなの望み通りに。

 だからせめて、兄さんの悪口だけは言わないで欲しい。

 大丈夫。僕だけなら、何を言われても平気。

 民たちは8年後、皆、善良な人間に変わるのだから。 
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