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外伝 ヴァティールの独り言

外伝 ヴァティールの独り言1

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*このお話は、ヴァティールがリオンと入れ替わって4年目ぐらいのお話です。




 今日も奴がやってくる。

 ああ、鬱陶しいことこの上ない。

「ヴァーティールッー!!!」

 せっかく可愛い娘らや、愉快な人間どもと食堂でケーキを食って「あはは」と笑っていたのに、今日もワタシの小姑・エルが目を吊り上げて駆け込んできた。

「……今度は何だ。小姑よ?」

 ほおづえをつきながら聞くと、エルは今にも血管がぶちぎれそうな勢いでワタシを怒鳴りつけた。

「まずその『ほおづえ』をやめろっ!!
 俺の弟は、そんな行儀の悪いマネはしないっっ!!
 ……っそれに…………」

「それに? まだ文句があるのか小姑」

「あるに決まっているっ!!
 何なんだその服装はっ!! 城中大騒ぎだぞっっ!!!」

 言われて自分の服を見る。

 うん。我ながら可愛い。

「エリスがデザインして、アリシアが縫ってくれたのだ。
 しかも3人お揃いっっ!!
 可愛いだろう?」

 そう言って胸をはり、セミロング丈のドレスの裾を摘みあげると、奴の顔色は赤から青にザザッと変化した。

 人間というのは観察して飽きない面白い生物だが、エルはその中でもいっそう際立って面白い。

「その手を離せっ! それ以上あげたら下着が見えるっ!!!
 それに弟は……いや、お前はこう見えても男だっ!!
 何故ドレスを着ているのだっっ!!」

「似合うからだ」

 そう言うと、エルはグッと言葉に詰まった。

「だいたいお前は細かすぎだ。
 美しい蝶を愛でる時、いちいちオスかメスか確かめてから愛でるのか?
 鳥は? 花は?
 これだから、うるさい小姑はイヤなんだ」

 正論を述べるワタシの腕を、エルは荒々しく取った。
 また貴賓室に連行か。

 もちろん振り払ってここに留まることも可能なのだが、ここで逆らうと…………コイツ、マジで泣くから厄介だ。

「はいはい、行けば良いのだろう? じゃあ後でな!」

 娘らに手をヒラヒラと振って、エルの後に続く。


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