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第一章 『私のまほう使い』
⑮ 『不安』
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私はミリアさんたちに話した。
私とアゼルの出会いを。
そして、きっと、私の大切な人が助けに来てくれると。
最初は私の話を聞いても、みんな信じてくれなかった。みんなはもう助からないという気持ちでいっぱいで絶望してしまっていたみたいだったから、またアゼルとの約束を破って励ましてしまった。
……いや、嘘だ。分かっていた。
私は早くアゼルに来て欲しかったんだ。だって、いくらなんでも遅すぎるから。
約束を破ってしまったことを叱られても良い。
ただ、今は一秒でも早くアゼルの顔を見たい。声を聞きたい。だから……。
「ねぇ、アミィ。あなたを助けに来てくれる魔法使いというのは、そんなに強いの?」
「強いんだよね? その人が来れば、私達、助かるんだよね!」
ミリアさんにくっついていた女の子たちが、私に同意を求めてくる。
「うん。すごく強いし、絶対に助けてくれるよ。だから、その人が来てくれるまで、もう少しだけ我慢してね」
私は笑顔で断言する。それは、私が何よりもその事を信じたかったから。
アゼルはあのセリーナよりも強いのだと。そして、私を絶対に助けに来てくれるんだって。
こうして、みんなは私の話を聞いて少しだけ目に光が戻った。
これからアゼルが助けに来てくれても、無気力では逃げることも出来ない。だから、これで良かったのだと私は自分に言い訳をする。
「その人は、どんな魔法が使えるの?」
「ええとね、私が知っているだけでも、風の魔法を使ったり、傷をあっという間にで治したりできるのよ」
「すごーい! そんな事ができるのなら、あのセリーナに勝てるよ、きっと!」
みんなは私を質問攻めにする。
私は何とか、アゼルの名前だけは出さないようにして、答えられる範囲で答える。
それはまだ希望が持てた時間だった。
みんなは、今晩、私達が生贄にされることを知らない。そんなことを知ってしまえば、また絶望してしまう。
だから私はそのことは話さない。そして、アゼルが来てくれるのをただ待つ。
でも、時間が経つにつれて、周りが暗くなっていくのにつれて、私の心が弱くなっていく。
不安とあせりが私を包んでいく。
(アゼル。早く来て……。助けて……)
私はそう願っていた。けれど、だんだん不安が大きくなっていく。
顔にそれを出さないでいるのが精一杯になってしまう。
(どうして、助けに来てくれないの?)
みんなと笑顔で話しながら、心の内で私はアゼルに問いかける。
そしてそこで、私はようやく、アゼルが前に言っていた事を思い出した。
『約束だよ、アミィ。けっしてボクの居ないところで魔法を、この力を使ったりしてはだめだ。もしもそれが守れないのなら、ボクはもう君に魔法を教えるのをやめるし、君と会うことも止めるからね』
その言葉がもう一度聞こえた気がして、私の心は凍りつきそうになった。
いくらなんでも、もうアゼルは、ネイとリリーナから私がさらわれた事を聞いているはずだ。それなのに、ここまで助けに来てくれないのは……。
(きっとアゼルは、ネイたちから聞いて、私がまた約束を破って魔法を使ったのを知ったはずだ。いや、アゼルはすごい魔法使いだから、聞くまでもなく私が魔法を使ったことが分かっていると思う。そして、アゼルは私が約束を破ったことを知って……)
そんな事ない!
アゼルは優しいもん! きっと私を助けてくれる! そして、それは私だけでなくて、他のみんなも……。
だから、私はみんなに話をして……。でも、それは、アゼルとの約束を更に破ることで……。
(……アゼル……。違うよね? 私のこと、嫌いになって……もう会ってくれないわけじゃあないよね?)
私は笑顔でいなければいけないのに。
他の子が不安になるから……。
でも、アゼルはもしかしたら、私のこと……。
みんなの質問に答えているうちに、笑顔が崩れていきそうになる。
そして、私の笑顔が完全に泣き顔に変わりそうなときだった。
ドン! と大きな音が聞こえた。そして、家のドアが開かれた。
私は、アゼルが来てくれたと思いたかった。けれど、そこに立っていたのは彼よりもずっと大きな男の人。
それは、必死な表情をしたポールだった。
私とアゼルの出会いを。
そして、きっと、私の大切な人が助けに来てくれると。
最初は私の話を聞いても、みんな信じてくれなかった。みんなはもう助からないという気持ちでいっぱいで絶望してしまっていたみたいだったから、またアゼルとの約束を破って励ましてしまった。
……いや、嘘だ。分かっていた。
私は早くアゼルに来て欲しかったんだ。だって、いくらなんでも遅すぎるから。
約束を破ってしまったことを叱られても良い。
ただ、今は一秒でも早くアゼルの顔を見たい。声を聞きたい。だから……。
「ねぇ、アミィ。あなたを助けに来てくれる魔法使いというのは、そんなに強いの?」
「強いんだよね? その人が来れば、私達、助かるんだよね!」
ミリアさんにくっついていた女の子たちが、私に同意を求めてくる。
「うん。すごく強いし、絶対に助けてくれるよ。だから、その人が来てくれるまで、もう少しだけ我慢してね」
私は笑顔で断言する。それは、私が何よりもその事を信じたかったから。
アゼルはあのセリーナよりも強いのだと。そして、私を絶対に助けに来てくれるんだって。
こうして、みんなは私の話を聞いて少しだけ目に光が戻った。
これからアゼルが助けに来てくれても、無気力では逃げることも出来ない。だから、これで良かったのだと私は自分に言い訳をする。
「その人は、どんな魔法が使えるの?」
「ええとね、私が知っているだけでも、風の魔法を使ったり、傷をあっという間にで治したりできるのよ」
「すごーい! そんな事ができるのなら、あのセリーナに勝てるよ、きっと!」
みんなは私を質問攻めにする。
私は何とか、アゼルの名前だけは出さないようにして、答えられる範囲で答える。
それはまだ希望が持てた時間だった。
みんなは、今晩、私達が生贄にされることを知らない。そんなことを知ってしまえば、また絶望してしまう。
だから私はそのことは話さない。そして、アゼルが来てくれるのをただ待つ。
でも、時間が経つにつれて、周りが暗くなっていくのにつれて、私の心が弱くなっていく。
不安とあせりが私を包んでいく。
(アゼル。早く来て……。助けて……)
私はそう願っていた。けれど、だんだん不安が大きくなっていく。
顔にそれを出さないでいるのが精一杯になってしまう。
(どうして、助けに来てくれないの?)
みんなと笑顔で話しながら、心の内で私はアゼルに問いかける。
そしてそこで、私はようやく、アゼルが前に言っていた事を思い出した。
『約束だよ、アミィ。けっしてボクの居ないところで魔法を、この力を使ったりしてはだめだ。もしもそれが守れないのなら、ボクはもう君に魔法を教えるのをやめるし、君と会うことも止めるからね』
その言葉がもう一度聞こえた気がして、私の心は凍りつきそうになった。
いくらなんでも、もうアゼルは、ネイとリリーナから私がさらわれた事を聞いているはずだ。それなのに、ここまで助けに来てくれないのは……。
(きっとアゼルは、ネイたちから聞いて、私がまた約束を破って魔法を使ったのを知ったはずだ。いや、アゼルはすごい魔法使いだから、聞くまでもなく私が魔法を使ったことが分かっていると思う。そして、アゼルは私が約束を破ったことを知って……)
そんな事ない!
アゼルは優しいもん! きっと私を助けてくれる! そして、それは私だけでなくて、他のみんなも……。
だから、私はみんなに話をして……。でも、それは、アゼルとの約束を更に破ることで……。
(……アゼル……。違うよね? 私のこと、嫌いになって……もう会ってくれないわけじゃあないよね?)
私は笑顔でいなければいけないのに。
他の子が不安になるから……。
でも、アゼルはもしかしたら、私のこと……。
みんなの質問に答えているうちに、笑顔が崩れていきそうになる。
そして、私の笑顔が完全に泣き顔に変わりそうなときだった。
ドン! と大きな音が聞こえた。そして、家のドアが開かれた。
私は、アゼルが来てくれたと思いたかった。けれど、そこに立っていたのは彼よりもずっと大きな男の人。
それは、必死な表情をしたポールだった。
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