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第136話 老ゴブリンの正体
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時を遡り、クウネルがゴブリン王国を救うために奮闘している頃。 とあるゴブリンの村で老ゴブリンが長い杖を持ったまま神経を研ぎ澄ませていた。
「ギヌ……胸騒ぎがする。 それに、嫌な汗が止まらない。 なんじゃ? 何が起きておる?? 」
この村で1番大きな家に住むゴブリンシャーマンは曲がった腰に鞭を打ち、愛用の木の杖で床を叩きながら外に出る。
不安だったが村はいつも通りだ、ゴブリン達が仕事に取り掛かっていた。
水を汲みに行く者、狩りの準備を始める者、食事を作る者、元気走り回る子供達と、平和そのものの光景だ。
だが、その光景を見てもまだ胸騒ぎが収まらなかった。
「ギギ! シャーマンの婆さん、今日は遅いな。 おはようさん! どした? 顔色が悪りいぞ?」
気さくに話し掛けてきたのはこの村を守る隊長だ。 腕利きの狩人にして熟練の弓兵である為、兵士達の隊長でありながら珍しく弓を担いでいる。
「ギガ、朝っぱらから元気だねお前さんは。 ちょっと気になる事があってね。 周囲の森に異常は無いかい?」
「ギ? おいおい、ボケたのか? もうじき昼だぞ? 異常か……? うんやぁ、何もないけどな? いつも通りだぞ?」
「ギヌ? まぁ、私の気のせいならいいんだけどね。 私の感覚も鈍ったかね?」
ゴブリンシャーマンは収まらない胸騒ぎは気の所為だったのかと安堵する。
だが、隊長と話を終えた直後。 水を汲みに行っていた者達が何も持たずに走って戻って来るのが見えた。
「ギヌ、貴重な桶を置いて来たって事は、ただ事ではないねぇ」
「ギィ! ぜー、ぜー、ば、婆さん、隊長! すっげぇ数の魔物が来てる! すぐに来るぞ!」
若いゴブリンがそう叫んだと同時に、森の木々から鳥達が一斉に飛び去った。
「ギガ! ちっ、やっぱり私の感覚が正解かぃ! 隊長、直ぐに避難を開始しな! それと部下に油壺を各家から集めさせておくれ。 足止めさせるよ!」
「ギギガァァァ! おう、お前ら油壺を回収して来い! 兵士じゃないゴブリン達は直ぐに避難しろ! って、婆さん何処へ避難したら良いんだ!?」
既に村はパニックだ。 この大きな村には300匹の兵士達と、民であるゴブリン達が700匹住んでいる。
その700匹のゴブリン達がパニックになり、何処へ逃げるべきか右往左往してしまっていた。
「ギ……良いかい? 幸い、魔物達が向かって来ている方向の反対は王都がある。 其処に向かえば何とかなる筈さね! 王の住む街へ向かいな! 急ぎなぁ、来たよ! むん! サンダーボルト!」
森から飛び出した魔物に向かって、ゴブリンシャーマンの放った雷魔法が炸裂する。
「「「「キチキチキチ! ギィィィ!?」」」」
森から飛び出した魔物達は黒焦げになったが、その後ろから次々に魔物達が姿を現す。 その魔物は6本の鎌を持つ大きなカマキリ達だった。
「ギッ! よりにもよってマンティスかぃ! あの魔物は動きが速い、6本の鎌は触れるだけで切り裂かれちまうよ!」
もし、兵士以外のゴブリンが襲われたら瞬時に細切れの死体に変わってしまうだろう。
「ギガ! 婆さんばかりにカッコつけさせるなよお前ら! 弓兵、放てぇぇぇ! おい!! 油壺は持ったか!?」
隊長が指示を飛ばし、村の外に布陣した弓兵達から矢が放たれマンティス達に突き刺さる。
「「「ギィィィィィ!?」」」
矢が目に刺さったシックスハンドマンティスは痛みで苦しみ怯んだ。
「ギギ! さすが、私の村の兵士達だね。 誰も怯えてないじゃないかぃ! じゃあ、今のうちに下がるかね」
ゴブリンシャーマンが隊長の下まで後退した時には、村はシックスハンドマンティスの群れに覆われていた。
もし、避難が少しでも遅れていたら村のゴブリン達は全員数百のシックスハンドマンティス達の餌食にされていた事だろう。
「ギ! 隊長、数個ですが回収出来ました!」
「ギ! 全ての家を確認! 村からの避難は完了!」
村の横から確認作業に向かっていたゴブリン兵士達がシックスハンドマンティスに追いかけられながら逃げてきた。
どうやら、今の所は犠牲者は出ていない様だ。
「ギ! でかした! この短時間でよくやってくれたよ! サンダーボルト!」
すぐ後ろに迫っていたシックスハンドマンティスを雷魔法で倒し、直ぐに撤退を準備する。
「ギギ、隊長! 避難先の道を塞ぐようになるべく広げて油を撒かせな! 後は、私がやる。 他の兵士達は、街に向かってるゴブリン達を守りに行きな!」
ゴブリンシャーマンの指示に、兵士達は戸惑う。
「ギ!? 婆さん、無茶だ!」
「ギガ! 煩いねぇ、私はあんたが生まれる前からこの森で生き抜いて来たんだよ? 2足型の戦争にだって参加してた私を舐めるんじゃあないよ! さっさと行きな!」
尻を蹴り上げるように追い払うゴブリンシャーマンに、隊長は苦笑いを浮かべる。
「ガガギ……へっ、分かったよ。 おい! 油を撒け! 弓兵は終わるまで魔物を近付けさせるなよ!」
「「「「「「ギギ! 了解!」」」」」」
村の食料を漁り、家を破壊しているマンティス達に矢の雨が降り注ぐ。 かなりの数が倒れたが、森からはまだ溢れるように出て来ていた。
マンティス達の気が食料に逸れている間に兵士達が急いで油を撒く。
壁の無いこの大きな村は森に囲まれており、王都の近くにある平原までしか道の整備はされていない。 それが幸か不幸か、今は追手を振り切れる事に使えそうだ。
「ギヌ……しかし、キリがないね。 本当に何が起きたんだい? 普段、シックスハンドマンティスが群れをなして村を襲うなんて無かったのにねぇ。 いや、今は誰も死なせないのが一番かね」
ゴブリンシャーマンは痛む腰に気合いを入れ、杖を持つ手に力を込める。
「ギギ、さぁて、こんな劣勢は2足型の戦争以来だねぇ。 久しぶりに血が騒ぐさね!」
ゴブリンシャーマンは気合を入れ、杖に魔力を流し込む。
「ギガ!? ぐ、ぐぁぁぁ!」
村の近くで油を撒いていた兵士の背後から忍び寄っていたマンティスが素早い動きで襲い掛かる。 数秒後には襲われたゴブリン兵士は殺られるだろう。
「ギヌ、やらせないよ! はぁっ! ウインドカッター!」
だが、ゴブリンシャーマンがすかさず真空の刃を飛ばし、マンティスの首を刎ねる。 それと同時に、隊長達が兵士を救い出した。
「ギィギィ……シャーマン様、助かりました!」
「ギガ! 礼なら要らないよ! さぁ、撒いたなら行きな! 隊長、全員撤退させな!」
遂に村はマンティス達に飲み込まれ、家屋が崩壊する。 そして、村の食料を食べ尽くしたのか、矛先がゴブリンシャーマン達に向いた。
夥しい数のシックスハンドマンティス達が獲物目掛けて走り出した。
「ギヌ! 急げぇ! 行け行け行け!! おい、婆さん。 俺は行かねぇからな! 婆さんが足止めしたら、おぶって走る奴が必要だろ?」
撤退の指示を部下達に飛ばす隊長は矢を放つ手を止める事はなく、ゴブリンシャーマンの隣から動こうとしなかった。
「ギィ……馬鹿だねぇ、あんたも。 何で、村の長ごときに其処までするのかね。 サンダーボルト!」
閃光が走り、近付いて来たマンティス達を瞬く間に黒焦げの死体に変える。 しかし、直ぐに後ろから他のマンティスが迫り焼け石に水だ。
「ギガガ! この村に隊長として、配属された時にあんたの息子に頼まれたんだよ! 母を頼むって! インペリアル近衛兵隊長のギブスさんが、俺なんかに頭を下げて頼んだんだ! 絶対に、絶対に死なせねぇ!」
隊長はゴブリンシャーマンを絶対に死なせまいと、矢を放ち続ける。
「ギギ、ふふっそうか……それで私みたいな名だけ村長の婆さんを気に掛けててくれたんだね。 なら、ちゃんと生き延びなきゃねぇ! ふん! じゃあ、仕上げをしてさっさと撤退するよ! ファイヤーレイン!」
ゴブリンシャーマンの頭上に空を隠すほどの小さな火の球が現れそのまま村に向けて降り注いだ。 そして、マンティス達を、森を火の海に変える。
「「「「「ギィィィィィ?!」」」」」
油を撒いた道や森は、火柱を上げて大きく燃え上がった。 炎に呑まれたマンティス達が悲鳴を上げる。
「ギガ! よし、これで当分追っては来れないだろうさ!」
安堵すると同時に、激しい虚脱感がゴブリンシャーマンを襲う。
上位の魔法を使い過ぎた結果、魔力欠乏を起こしてのだ。
「ギ……すげぇ、婆さんあんたすげぇよ! って、おい?! 大丈夫か婆さん!」
虚脱感に耐えきれず、倒れ込むゴブリンシャーマンを隊長が受け止め背中に背負った。
「ギヌ……なんだい、中々役に立てるじゃないか。 ……そんなに大げさに騒ぐんじゃないよ、魔法の使いすぎだ。 ほら、私をさっさとおぶって撤退しな!」
背中で元気に叫ぶゴブリンシャーマンに、隊長は大笑いしながら走り出した。
「ギガガ! ぐはははっ、分かったよ!」
走り出した所で、ゴブリンシャーマンの意識が遠くなり始める。
(……ギブス。 私の……可愛い息子よ。 母親を年寄り扱いしやがって、王都であったら……しこたま拳骨さねぇ。 ふふ……ありがとうね、ギブス)
戦功を立てて、ゴブリンキングに名を与えられた自慢の息子を思いながらゴブリンシャーマンの意識は途絶えた。
そして、火柱を上げる森を背後に、ゴブリンシャーマンを背負った隊長は必死に走り続けるのであった。
「ギヌ……胸騒ぎがする。 それに、嫌な汗が止まらない。 なんじゃ? 何が起きておる?? 」
この村で1番大きな家に住むゴブリンシャーマンは曲がった腰に鞭を打ち、愛用の木の杖で床を叩きながら外に出る。
不安だったが村はいつも通りだ、ゴブリン達が仕事に取り掛かっていた。
水を汲みに行く者、狩りの準備を始める者、食事を作る者、元気走り回る子供達と、平和そのものの光景だ。
だが、その光景を見てもまだ胸騒ぎが収まらなかった。
「ギギ! シャーマンの婆さん、今日は遅いな。 おはようさん! どした? 顔色が悪りいぞ?」
気さくに話し掛けてきたのはこの村を守る隊長だ。 腕利きの狩人にして熟練の弓兵である為、兵士達の隊長でありながら珍しく弓を担いでいる。
「ギガ、朝っぱらから元気だねお前さんは。 ちょっと気になる事があってね。 周囲の森に異常は無いかい?」
「ギ? おいおい、ボケたのか? もうじき昼だぞ? 異常か……? うんやぁ、何もないけどな? いつも通りだぞ?」
「ギヌ? まぁ、私の気のせいならいいんだけどね。 私の感覚も鈍ったかね?」
ゴブリンシャーマンは収まらない胸騒ぎは気の所為だったのかと安堵する。
だが、隊長と話を終えた直後。 水を汲みに行っていた者達が何も持たずに走って戻って来るのが見えた。
「ギヌ、貴重な桶を置いて来たって事は、ただ事ではないねぇ」
「ギィ! ぜー、ぜー、ば、婆さん、隊長! すっげぇ数の魔物が来てる! すぐに来るぞ!」
若いゴブリンがそう叫んだと同時に、森の木々から鳥達が一斉に飛び去った。
「ギガ! ちっ、やっぱり私の感覚が正解かぃ! 隊長、直ぐに避難を開始しな! それと部下に油壺を各家から集めさせておくれ。 足止めさせるよ!」
「ギギガァァァ! おう、お前ら油壺を回収して来い! 兵士じゃないゴブリン達は直ぐに避難しろ! って、婆さん何処へ避難したら良いんだ!?」
既に村はパニックだ。 この大きな村には300匹の兵士達と、民であるゴブリン達が700匹住んでいる。
その700匹のゴブリン達がパニックになり、何処へ逃げるべきか右往左往してしまっていた。
「ギ……良いかい? 幸い、魔物達が向かって来ている方向の反対は王都がある。 其処に向かえば何とかなる筈さね! 王の住む街へ向かいな! 急ぎなぁ、来たよ! むん! サンダーボルト!」
森から飛び出した魔物に向かって、ゴブリンシャーマンの放った雷魔法が炸裂する。
「「「「キチキチキチ! ギィィィ!?」」」」
森から飛び出した魔物達は黒焦げになったが、その後ろから次々に魔物達が姿を現す。 その魔物は6本の鎌を持つ大きなカマキリ達だった。
「ギッ! よりにもよってマンティスかぃ! あの魔物は動きが速い、6本の鎌は触れるだけで切り裂かれちまうよ!」
もし、兵士以外のゴブリンが襲われたら瞬時に細切れの死体に変わってしまうだろう。
「ギガ! 婆さんばかりにカッコつけさせるなよお前ら! 弓兵、放てぇぇぇ! おい!! 油壺は持ったか!?」
隊長が指示を飛ばし、村の外に布陣した弓兵達から矢が放たれマンティス達に突き刺さる。
「「「ギィィィィィ!?」」」
矢が目に刺さったシックスハンドマンティスは痛みで苦しみ怯んだ。
「ギギ! さすが、私の村の兵士達だね。 誰も怯えてないじゃないかぃ! じゃあ、今のうちに下がるかね」
ゴブリンシャーマンが隊長の下まで後退した時には、村はシックスハンドマンティスの群れに覆われていた。
もし、避難が少しでも遅れていたら村のゴブリン達は全員数百のシックスハンドマンティス達の餌食にされていた事だろう。
「ギ! 隊長、数個ですが回収出来ました!」
「ギ! 全ての家を確認! 村からの避難は完了!」
村の横から確認作業に向かっていたゴブリン兵士達がシックスハンドマンティスに追いかけられながら逃げてきた。
どうやら、今の所は犠牲者は出ていない様だ。
「ギ! でかした! この短時間でよくやってくれたよ! サンダーボルト!」
すぐ後ろに迫っていたシックスハンドマンティスを雷魔法で倒し、直ぐに撤退を準備する。
「ギギ、隊長! 避難先の道を塞ぐようになるべく広げて油を撒かせな! 後は、私がやる。 他の兵士達は、街に向かってるゴブリン達を守りに行きな!」
ゴブリンシャーマンの指示に、兵士達は戸惑う。
「ギ!? 婆さん、無茶だ!」
「ギガ! 煩いねぇ、私はあんたが生まれる前からこの森で生き抜いて来たんだよ? 2足型の戦争にだって参加してた私を舐めるんじゃあないよ! さっさと行きな!」
尻を蹴り上げるように追い払うゴブリンシャーマンに、隊長は苦笑いを浮かべる。
「ガガギ……へっ、分かったよ。 おい! 油を撒け! 弓兵は終わるまで魔物を近付けさせるなよ!」
「「「「「「ギギ! 了解!」」」」」」
村の食料を漁り、家を破壊しているマンティス達に矢の雨が降り注ぐ。 かなりの数が倒れたが、森からはまだ溢れるように出て来ていた。
マンティス達の気が食料に逸れている間に兵士達が急いで油を撒く。
壁の無いこの大きな村は森に囲まれており、王都の近くにある平原までしか道の整備はされていない。 それが幸か不幸か、今は追手を振り切れる事に使えそうだ。
「ギヌ……しかし、キリがないね。 本当に何が起きたんだい? 普段、シックスハンドマンティスが群れをなして村を襲うなんて無かったのにねぇ。 いや、今は誰も死なせないのが一番かね」
ゴブリンシャーマンは痛む腰に気合いを入れ、杖を持つ手に力を込める。
「ギギ、さぁて、こんな劣勢は2足型の戦争以来だねぇ。 久しぶりに血が騒ぐさね!」
ゴブリンシャーマンは気合を入れ、杖に魔力を流し込む。
「ギガ!? ぐ、ぐぁぁぁ!」
村の近くで油を撒いていた兵士の背後から忍び寄っていたマンティスが素早い動きで襲い掛かる。 数秒後には襲われたゴブリン兵士は殺られるだろう。
「ギヌ、やらせないよ! はぁっ! ウインドカッター!」
だが、ゴブリンシャーマンがすかさず真空の刃を飛ばし、マンティスの首を刎ねる。 それと同時に、隊長達が兵士を救い出した。
「ギィギィ……シャーマン様、助かりました!」
「ギガ! 礼なら要らないよ! さぁ、撒いたなら行きな! 隊長、全員撤退させな!」
遂に村はマンティス達に飲み込まれ、家屋が崩壊する。 そして、村の食料を食べ尽くしたのか、矛先がゴブリンシャーマン達に向いた。
夥しい数のシックスハンドマンティス達が獲物目掛けて走り出した。
「ギヌ! 急げぇ! 行け行け行け!! おい、婆さん。 俺は行かねぇからな! 婆さんが足止めしたら、おぶって走る奴が必要だろ?」
撤退の指示を部下達に飛ばす隊長は矢を放つ手を止める事はなく、ゴブリンシャーマンの隣から動こうとしなかった。
「ギィ……馬鹿だねぇ、あんたも。 何で、村の長ごときに其処までするのかね。 サンダーボルト!」
閃光が走り、近付いて来たマンティス達を瞬く間に黒焦げの死体に変える。 しかし、直ぐに後ろから他のマンティスが迫り焼け石に水だ。
「ギガガ! この村に隊長として、配属された時にあんたの息子に頼まれたんだよ! 母を頼むって! インペリアル近衛兵隊長のギブスさんが、俺なんかに頭を下げて頼んだんだ! 絶対に、絶対に死なせねぇ!」
隊長はゴブリンシャーマンを絶対に死なせまいと、矢を放ち続ける。
「ギギ、ふふっそうか……それで私みたいな名だけ村長の婆さんを気に掛けててくれたんだね。 なら、ちゃんと生き延びなきゃねぇ! ふん! じゃあ、仕上げをしてさっさと撤退するよ! ファイヤーレイン!」
ゴブリンシャーマンの頭上に空を隠すほどの小さな火の球が現れそのまま村に向けて降り注いだ。 そして、マンティス達を、森を火の海に変える。
「「「「「ギィィィィィ?!」」」」」
油を撒いた道や森は、火柱を上げて大きく燃え上がった。 炎に呑まれたマンティス達が悲鳴を上げる。
「ギガ! よし、これで当分追っては来れないだろうさ!」
安堵すると同時に、激しい虚脱感がゴブリンシャーマンを襲う。
上位の魔法を使い過ぎた結果、魔力欠乏を起こしてのだ。
「ギ……すげぇ、婆さんあんたすげぇよ! って、おい?! 大丈夫か婆さん!」
虚脱感に耐えきれず、倒れ込むゴブリンシャーマンを隊長が受け止め背中に背負った。
「ギヌ……なんだい、中々役に立てるじゃないか。 ……そんなに大げさに騒ぐんじゃないよ、魔法の使いすぎだ。 ほら、私をさっさとおぶって撤退しな!」
背中で元気に叫ぶゴブリンシャーマンに、隊長は大笑いしながら走り出した。
「ギガガ! ぐはははっ、分かったよ!」
走り出した所で、ゴブリンシャーマンの意識が遠くなり始める。
(……ギブス。 私の……可愛い息子よ。 母親を年寄り扱いしやがって、王都であったら……しこたま拳骨さねぇ。 ふふ……ありがとうね、ギブス)
戦功を立てて、ゴブリンキングに名を与えられた自慢の息子を思いながらゴブリンシャーマンの意識は途絶えた。
そして、火柱を上げる森を背後に、ゴブリンシャーマンを背負った隊長は必死に走り続けるのであった。
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