真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第148話  癒しの族長をマンドラゴラ採取ツアーにご案内

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 爆発した錬金工房の穴や隙間から、緑や赤の色とりどりな煙が吹き上がる。

 「え? これ死んだ? 生きてる?」

 錬金工房の側まで行き、しゃがんで覗くが煙で全く見えない。 気配はする為、死んではないようだ。

 「もしもーし、癒しの族長さーん? 大丈夫ー?」

 「ギホッギホッ! あら、女神様。 どうされたの?」

 錬金工房から癒しの族長が咳き込みながら出て来た。

 「いやいや、どうされたの? じゃ、無いよ! 怪我は無いし……何して爆発したの」

 「ギギバ、あら女神様呼びはもういいのですね。 えっと、頂いた素材を使って秘薬の研究を……あ!」

 「良くはない、良くはないのよ? それより、研究って何を……どしたの?」

 癒しの族長が何やらオロオロと狼狽えだした。 傍目に見たら、年老いたゴブリンが巨人の側で慌てているのでとても世間体に悪い。

 どう見ても、巨人に食われそうになってる老ゴブリンである。

 「落ち着いて落ち着いて、どしたの?」

 「ギガガ! 私ったら、少しだけ頂く予定でしたのに……袋の中身を全部使ってしまったみたいで……最後の素材はさっきの失敗で……その」

 癒しの族長が申し訳無さそうに告げ、クウネルは思わず自分の額を叩く。

 「OH MY GOD! マジか! あの大量のマンドラゴラと癒しの葉全部使ったの?! はぁ……まぁいいよ、取りに行こうと思ってたし。 ちなみに、どんな研究を?」

 クウネルが研究内容を聞くと、癒しの族長の目が爛々と輝き早口で説明し始めた。

 「ギ! よくぞ聞いて下さいました! 先日女神様にお聞きした秘薬の注意点を無くす研究です! 混ぜると効果を発揮するが短時間しか使用出来ない。 しかし、別々に混ぜた状態で長時間経ったのを混ぜると効果を発揮したんです! つまりこれは、何かの容器に混ざらないように保管し使用する時に両方が混ざるようにすれば緊急の時に――ストップ! 長いよ! 頭がパンクするかと思ったよ! 簡潔に、サクッと教えて」

 遮られた癒しの族長は不服そうだが、渋々結論だけを話した。

 「ギ……戦闘中に直ぐ使用できる秘薬玉を作る研究です」

 「分かった、ちょっと待ってて」

 クウネルは立ち上がり、鑑定に確認する。

 「鑑定さん、聞いてたよね? この癒しの族長が作ろうとしてる秘薬玉は作れるの?」

 «――検索中……可能です。 しかし、通常の容器では先程の様に砕いた素材同士の反応に負けて爆発を起こします。 最善の容器は竜種の胃袋か皮膚を使用する事を推奨»

 「オーケー! ありがとう鑑定さん、流石だね! えっと、今すぐには出来ないだろうけど薬を込める容器に地竜の皮膚か胃袋を使ってみて。 それで出来る筈だから」

 「ギギバ?! なんと、そんな一瞬で解決策を閃いたのですか!? 感謝します、女神様!!」

 癒しの族長は感涙しながら手を合わせて拝み始めた。

 「はいはい、分かったから。 拝むのを止めい! で? 解決したなら袋返して欲しいんだけど??」

 「ギ! すみません、そうでした! 直ぐにお持ちしますね」

 癒しの族長は、まだ煙の吹いてる工房に躊躇い無く入って行った。 きっと、いつもの事なのだろう。

 暫くすると小さな入り口から、ぺちゃんこになった袋を引きずって癒しの族長が出て来た。

 「うん、まずその工房にその大きさの袋が入った時点で使い過ぎって気付こうね?」

 袋を受け取るが、やはり袋の中は空っぽだ。

 「あれだけあったマンドラゴラも治癒の葉も何も無い……まぁ、仕方ないか」

 袋を逆さにしても何も出てこない。 本当に空っぽだ。

 「その秘薬玉が完成したら、戦闘中のゴブリン兵士達が助かるんでしょ?  なら、良しとしましょう! じゃあ、ちょっと採取に行ってくるね。 癒しの族長さんが秘薬玉作れる様に沢山採ってくるから」

 その場を離れようとすると、癒しの族長が慌て始めた。

 「ギバ! お、お待ち下され! お願いです、私も御一緒させて下さい! マンドラゴラや癒しの葉を私達ゴブリンで採れる様になりたいのです! 邪魔にならないよう気を付けますので何卒……」

 癒しの族長は懇願する様に土下座し、頭を地面に擦り付け始めた。

 「そこまでしなくても……。 ん~……鑑定さん、マンドラゴラをゴブリン達が無傷で採る方法ってある?」

 «――検索中……可能です。 ただし、50m以上の縄が必要です。ゴブリンのみで採取する場合、鳴き声を聞かない距離まで離れる必要が有ります。マンドラゴラの即死の鳴き声範囲は45mです»

 「あ~、なるへそね。 縄でマンドラゴラを括って、離れてから引き抜くのね。 治癒の葉は……木ごと工房の側に植えれるかな?」

 «――可能です。 ただし、治癒の木が生えている付近の土をそのまま持ってくる必要があります»

 「それはどうして?」

 «――土に籠る魔力が必要だからです。 この土壌に含まれる魔力では不足し枯れる可能性大です»

 「じゃあ、なんとかなるか。 うし! なら良いかな。 お待たせ、ごめんね。 一緒に来てもいいけど、50m以上の縄が必要だから大工長さんに聞きに行こっか」

 「ギ!? は、はい! ありがとうございます!」

 クウネルは大喜びする癒しの族長と大工長の元へと歩いて行くのであった。

 「さて、何も起こらなければいいけどね~」
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