真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第149話 巨木の森の異変

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 「よし、とうちゃ~く!」

 クウネルはモロに一応許可を貰い、巨木の森までやって来ていた。

 「本当……何でこの森の木はこんなに大きいのかね」

 巨木の森に来ているのは、クウネルと癒しの族長と志願してきた護衛のゴブリン下級兵4匹の一行だ。

 下級兵はゴブリン兵士で1番数が多く、実力も低い。 だが、やる気だけは充分有りそうである。

 「まぁ、不安だから魔物が出たら私が直ぐに倒さなきゃな~」

 クウネルはゴブリン達を連れて暫く森を進む。

 今のところ気配察知に反応は無いが、至る所に戦闘跡が残っている。 しかし、死骸は一体もなく巨木の森は異様な雰囲気に包まれていた。

 「鑑定さん、そっちも気配に反応は無し?」

 «――有りません。 しかし、懸念が1つ。 前回この森に滞在していた時よりも魔力の濃度が異常に濃くなっています。 周囲にある戦闘跡を見るに未知の敵が居る可能性有り。 注意して下さい»

 「オーケー! まぁ、気配察知に反応が無いから大丈夫でしょ。 でも、マンドラゴラの反応も無いのは困ったな~」

 クウネルは頭を下げながら周囲を見渡す。

 「あ、この辺は確か……私が乱獲した場所だな。じゃあ、もう少し森の奥に進んでみるか~」

 異様な雰囲気の巨木の森の中は、巨木の葉の隙間から光が漏れているので薄暗いが視界は確保出来る。 それでも記憶と違う森の雰囲気にクウネルは背筋を震わせた。

 「気配にだけは注意しなきゃ。 不意に魔物に襲われたら私はともかくゴブリン達が死んじゃうからね」

 木々の隙間を良く確認しながら進んでいると、足下の方から声が聞こえた。

 「ギ……あ、あの、め、めめ、女神様!」

 「だから女神様って呼ぶな! って、誰? あぁ、ゴブリン兵士君か」

 反射的にクウネルが反応すると、足下に居た4匹のゴブリン兵士達は驚き飛び跳ねる。

 下級兵士のゴブリン4匹は、質素な鉄の鎧にボロボロな槍を持っている本当に下級な兵士だ。 装備の質で見ても、キュウベイがそれなりの地位の弓兵長だった事が分かる。

 「女神様じゃないけど、どうしたの?」

 「ギバ! わ、わわわ、我等4匹が、か、かか必ずお守りします!」 

 「「「ギバ!」」」

 クウネルはゴブリンとの体格差から、年齢関係無く小さなゴブリン兵士達を可愛らしく思えて仕方がなかった。

 「あはは、ありがとう。 でも襲撃が来たら癒しの族長さんの護衛をお願いね? 今は怪我しても治せないから、怪我にも注意ね」

 「「「「ギバ!」」」」」

 4匹のゴブリン兵士達は敬礼し、気合を入れる。
 
 「ギギバ、よろしくお願いしますね」

 なんとも和やかな雰囲気のままクウネル達は森を進み続けた。

 ◆◇◆

 「お! この薄い気配の反応は! ビンゴー! 滅茶苦茶生えてるじゃん!」

 クウネル達が進んだ先には、大量のマンドラゴラが生えていた。 
 
 「おーい、ゴブリン兵士君。 この縄をマンドラゴラの葉に括って~! あ、まだ絶対に抜かないでね。 鳴き声聞いたら即死だから」

 クウネルは肩から縄を下ろし、ゴブリン兵士達に手渡した。

 ゴブリン兵士達は即死と聞いてガタガタと震えている。

 「ギギバ! 生えているのを見るのは初めてです! あぁ~、凄い! 絶大な効果をもたらす素材がこんなに!」

 しかし、癒しの族長は即死と聞いても物怖じせずにマンドラゴラの葉っぱを興味深そうに引っ張り始めた。

 「だから危ないって! 貴女も話し聞かない系のお婆さんなの?!」

 「ギバ! わ、わわ! わ、分かりました! すみません、夢中になってしまって……」

 クウネルに指先で摘まれた癒しの族長は持ち上げられて悲鳴を上げる。

 そんな癒しの族長を笑いながら、ゴブリン達は恐々と縄をマンドラゴラに括った。

 「ギバ! 女神様、出来ました!」

 「うん、こんなもんかな? よし! じゃあ、縄を伸ばしながら後退して伸びきったら思いっきり引いてー!」

 初めての試みの為、クウネルはマンドラゴラの側で確認だ。

 「ギ!? いえ、女神様も下がって下さいな!!」

 癒しの族長の声にクウネルは首を傾げる。

 「え? あぁ、そっか。 大丈夫、私は即死耐性あるから」

 クウネルの返答に癒しの族長とゴブリン達も首を傾げる。

 「あれ? 癒しの族長さんも、兵士達もキョトンとしてる。 ……もしかして、耐性の話から必要なの? だから~、死なないの。 何度も鳴き声だって聞いてるし、食べてるから大丈夫なのよ」

 クウネルの雑な説明では納得させる事は出来ず、結局詳しく説明をするのであった。

 ◆◇◆

 ゴブリン達はクウネルが長々と詳細を説明してようやく納得し、縄を引きに離れていった。

 「まぁ……女神様だからそんなもんかって感じだったけどね! じゃあ、直ぐに納得してよ! ちくせう!」

 しっかりと縄で括ってあるのを指先で確認し、クウネルは立ち上がった。

 「いいよー! 引いてーーーー!」

 クウネルの大声を合図に縄が引かれる。 

 徐々にマンドラゴラが引っ張られ、遂に無傷のマンドラゴラが土から引き抜かれた。

 「キ……キェェェェェェェェェェェェッ!!」

 直後、マンドラゴラが即死の悲鳴を上げるがクウネルからするとうるさいだけである。

 「うるさっ!! でも、大成功~! えっと……よし、ゴブリン達も無事だね。 これなら、私が居なくなってからも採取は可能なんじゃない?」

 クウネルが確認しに戻って来るゴブリン達を待っていると、ゴブリン達以外の気配が迫ってきた。

 「じゃあ、どんどんマンドラゴラ採取しよっ……ん? 何か来てる! 癒しの族長さん、敵かも!!」

 「ギバ! 癒しの族長様を守るぞ!」

 「「「ギバ!」」」

 「ギガ、何が来てるのですか?!」

 クウネルは向かって来る気配に集中し、記憶を呼び起こす。

 「あ、これ蟷螂じゃね? 鑑定さん!」

 «――正解。 恐らく、王都を襲っていた生き残りがこの森に逃げ込んでいたのでしょう»

 「だよね! シックスハンドマンティスが来るよ!」

 ゴブリン達は急いでクウネルの下に走り、癒しの族長を真ん中に4匹のゴブリン兵士達が守る。

 そして、直ぐに近くの林からシックスハンドマンティス達が飛び出して来た。

 「「「「「「キチキチキチキチ!」」」」」」

 数十体のマンティス達が現れたが、何故かクウネルにもゴブリン達にすら見向きもせずに走り抜けて行った。

 「……え? 何で襲って来なかったんだ?」

 クウネルが怪訝な顔をし、ゴブリン達が狼狽えているとマンティス達が現れた林の方から何かを引きずる音が聞こえ始めた。

 「なんだ? うっ……凄く嫌な感じがする。 気配察知に反応は……無い?! 鑑定さん!」

 «――反応無し。 ですが、未知の危険を感知。 クウネル、逃げるべきです»

 「マジか……。 癒しの族長さん、何か来てる。 かなりヤバい奴かも、ゴブリン兵士達は族長さんを護衛して直ぐに街に戻って! 早く!!」

 クウネルは、すかさずゴブリン達を逃がそうと指示を飛ばす。

 「ギバ!? し、しししかし! 女神様を置いて逃げる等……」 「「「ギバ! そうです!」」」

 「あー、もう! うるさい! さっさと行く!」

 林が揺れ、木々が軋めく音が響いた。 そして、現れたソレは……巨大な骨だった。

 肉も無く、皮も、内臓も無い。

 空虚な瞳には赤黒い光が宿り、まるで骨の模型の様な巨大な骨の化け物がクウネルを見つけ怨嗟の悲鳴を上げた。

 「クルルルル……ガァァァァァアアッ!!」

 「……そりゃそうか、魔物がいるんだもん。 アンデッドもいるよね。 でも、よりによってお前か~……ヤバいね」

 クウネルは目の前の相手を見て冷や汗をかく。

 現れたソレは、クウネルが心臓を食い殺した筈の飛竜王だった。
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