真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

第151話 終わらない戦いと腰が限界

　◆クウネルside◆

　「オラオラオラオラオラオラァァァッ！」

　円形の壁に囲まれたクウネルとアンデッドワイバーンの殺し合いは数時間経っても終わる気配が無かった。

　「チートうぜぇぇぇ！　攻撃が効かない不死とか糞ゲーあるあるやん！　まぁ、アンデッドワイバーンの攻撃も私には効かないんですけどねー！」

　今もひたすら殴り続けているが、アンデッドワイバーンの骨は粉々にしても直ぐに再生しており堂々巡りだ。

　「クルルル、ガァァァァァッ！」

　再生する合間にも、アンデッドワイバーンは漆黒の煙を吐き散らす。

　「また性懲りもなく即死の瘴気ですか？　壁に囲まれてるせいで視界が悪いけど、残念無念効きませーーん！！　おりゃぁ！」

　壁にアンデッドワイバーンを叩き付け粉々に砕くが、直ぐに再生する。

　「でも、流石にこのまま殴り続けたら私のスタミナが持たないぞ？！　鑑定さん、何か考えて！ 　それまで殴り続けて何処にも行かせないから！」

　«――了解»

　「ふんぬぅぅぅ！　オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァ！！」

　怒涛のラッシュでアンデッドワイバーンが反撃する暇もなく骨粉になるまで殴る。

　「アンデッドワイバーンは無駄無駄無駄って叫ばないからまだ安心だね！　何の話かって？　てめぇには関係無いんだよ骨野郎ー！」　

　「クルルル？　クルル……ガァァァァァアアッ！」

　クウネルとアンデッドワイバーンの殺し合いはまだ続く。

　◆◇◆

　◆癒しの族長side◆
 
　クウネルがオラオラしている頃、癒しの族長達は逃げ続けていた。

　巨木の森の中を走り回るが、馴れない事も有り既に方向感覚を失っている。　今はひたすら、ゆっくりと追ってくる屍達がクウネルの方に行かない様に囮になるしか出来る事は無い。

　「ギギ、ふぅ、ふぅ、痛たた……。　あっちから戦闘音が聞こえる。　あっちには逃げれない、少し休んだら別の方向へ逃げましょう」

　おぶられ続けたせいで癒しの族長の腰は限界を迎えていた。　今は敵から離れている為、休憩しようと癒しの族長は倒木に腰掛ける。

　「ギバ！　しかし、既に周囲は歩く屍だらけです。　詰められるのも時間の問題かと……」

　そう癒しの族長に進言するゴブリン兵士の手には、既に槍は無い。　何度か接近戦を余儀なくされた時に折れてしまったのだ。

　更に最悪な事に、あれから別の魔物も合流してしまい数を把握するのが困難な量の歩く屍に追われていた。

　森狼以外に、シックスハンドマンティスやビッグアントの歩く屍も現れ、森のそこら中からゆっくりと向かって来ている。

　だが、戦って得た情報も有った。

　この魔物達は動く死体だが、頭部を激しく損傷させると完全に死ぬのだ。　更に、生きている時はフォレストウルフとシックスハンドマンティスは素早いが今は欠損した足を引きずる様にゆっくりとしか移動出来ない様だ。

　故に、そこ迄恐れる必要は無いのかと思ったが、歩く屍達が口から垂らしている黒い涎は危険だと判断し無理な戦闘は行わなかった。　既に、兵士達には絶対に触れないように伝えている。

　そして、黒い涎が出ている歯で噛まれたり鎌や顎に注意すれば倒せない事も無い。　というのが、癒しの族長の見解だ。

　朗報は、何体か倒せた兵士に力が宿ったのか先程より癒しの族長をおぶって走る速度が上がっている為、まだ逃げ続ける事は可能だろう。

　しかし、癒しの族長という足手まといが居るせいで余裕を持って逃げきれずにいるのだ。　このままでは、いつか囮をしている間に囲まれ殺されるのは目に見えていた。

　「ギギバ、私を置いて逃げなさい。　私は長く生きた身、若い貴方達が生き延びるのよ。　もしかしたら、街に向かえば援軍と合流出来るかもしれないわ。　行きなさい！」

　癒しの族長を守りながら逃げていたら、この兵士達は死んでしまう。

　なら、年寄りがこれ以上若者の足手まといになるわけにはいかないと癒しの族長は覚悟を決めた。

　「ギガ……腰も限界だしね。　痛たた……ふふ、敵はゆっくりだから私でもそれなりに囮は出来る。　……って、何してるの？　何故、小声で話してるの？　早く逃げなさいってば」

　「ギバ！　癒しの族長、失礼します！」

　「「ギバ！」」

　突然、3匹の兵士達が癒しの族長を担いで走り始めた。

　「ギ？！　ちょっと、ダメよ！　そっちに行ってはダメ！！」

　癒しの族長は向かう先がクウネルの所だと気付き、兵士達を制止しようとする。

　「ギバ！　アイツに頼まれましたから。　女神様と族長の事。　なので女神様の下へ行きます！　自分達が囮になれば、女神様は族長を担いで逃げれる筈です」　「「ギバ！」」

　兵士達の思わぬ発言に癒しの族長は驚き、必死に止める。

　「ギギ？！　ダメよ、止めなさい！　それでは貴方達が死んでしまうじゃない！　止めて、本当に止めてぇぇぇぇ！？　腰がぁぁぁ！！」

　アンデッドとなった歩く屍達はゴブリン達の逃げた方向へ憎しみを向ける。

　そして、夥しい数の歩く屍達がクウネルに向かって行進を始めた。