真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
86 / 247

第84話 決壊と罪悪感

しおりを挟む
 「ちょっ!? モロ、どうしたの? 玉ねぎ? 誰か玉ねぎ切ったの!?」

 クウネルはボロボロと泣き始めるモロに驚き、意味不明な事を口走る。

 「アゥン……何でそうなるのさクウネル。 はははは、そうか……だからあの赤髪のクウネルはあんなに怒って憎んで叫んでいたのか。 やっと合点がいったよ……」

 何かを納得したモロは頷き、改めてクウネルに話し掛けた。

 「クゥン、クウネル良く聞いて欲しい」

 「う、うん。 何?」

 「グルル……これは私の推測だが。 今の君の精神状態は異常だ。 それほどの悲劇を、苦しみを、2歳の子供が耐えれる筈が無いんだよ。 理由は、私等では分からないが……赤髪のクウネルを静めた生き物が、クウネルが壊れないように怒りと憎しみを別の存在として閉じ込めたんじゃないだろうか? 普段のクウネルからは、怒りや憎しみの濃い匂いは全くしない。 それがそもそもおかしいのさ。 そして、あの赤髪のクウネルは怒りと憎しみの匂いの塊だったんだよ」

 「ふむ? つまり……どゆこと? 今の私がおかしいって話し?」

 モロの話しはクウネルにとって理解出来ない内容だった。 しかし、何故か胸の奥が熱く苦しくなるのを感じる。

 「クゥン……すまない、私の推測でしかないのさ。 どうすれば良いのか、何をしたげれるかも分からない。 そんな推測を立てれた所で、役に立てない友ですまないね」

 謝るモロを見て、クウネルは胸が燃えるように熱くなり嬉しさや悲しみが溢れ出す。

 「何でそうなるのさ! 違うよモロ。 私はきっと話しを誰かに聞いて欲しかったけど、すごく怖かったんだ。 でもモロは友達になってくれて、話し聞いてくれて、思った事話してくれた。 ありがとうだよ! 私と友達になってくれて、泣いてくれて、考えてくれて、ありがとう……あれ?」

 モロの瞳からはまだポロポロと涙が落ち、クウネルからも大粒の涙が溢れ始めた。

 「おかしいなぁ、私も泣いてるみたいだ。 ったく、誰だよ玉ねぎ切ってるのは!」

 涙を抑えようとすればする程、不思議な感情が胸から溢れる。 それは熱く、苦しい感情だった。

 「もう! 何なのよこれ! 涙止まんないじゃんか!」

 「アオン! クウネル、いいんだよ。 泣いていいんだよ。 それだけの事が有ったんだ、それだけの事が有ったのに飛竜に飲まれても生き残ったんだ。 凄いよ、偉いよ、よく頑張ったね」

 モロは宙に浮き、クウネルの頬に優しく体を刷り寄せた。 そして、この時クウネルは2歳児らしい小さな子供の様に泣き喚き始める。

 瞳の色が薄い赤色に変わり、髪は揺らぎ、少し赤みがかった。

 「やめてよ、やめてよモロ。 もう、涙止まんない! うっ……うっ……うわぁぁぁぁぁ! 皆、皆殺されたの! あの時、あの時に私に今の力が有ったら! お祖父ちゃんも! お父さんも! お母さんも! 皆、皆助けれたかも知れないのに、私に力が無かったから、私に! 私に力が! ぁぁぁああああああっ!!」

 膝をつき、クウネルは咽び泣く。 そんなクウネルの頬をモロはずっと身体を擦り寄せ、慰め続けた。

 「クゥン……よしよし、よく頑張ったね。 クウネルのせいじゃない。 クウネルのせいじゃないよ」

 クウネルの中で、何かが決壊した。

 どれだけ長く、長く泣いたのかは分からない。

 それでも、モロはずっと側に寄り添った。

 ◆◇◆

 暫くし、泣き止んだクウネルの瞳や髪色は戻り何時ものクウネルになっていた。

 「ありがとう、モロ。 えへへ……何かすっきりした」

 「クフクフ、友の役に立てれて良かったよ。 そうだ、クウネル。 私が知ってる中で、1番知恵の有るお方に会いに行かないか?」

 「え? 知恵の有るお方? すごく物知りって事?」

 「アオン! そうさ、私に種族名が2つ有る事を教えてくれたお方さ。 そのお方なら、クウネルの状態やどうしたら良いかを助言してくれると思うのさ」

 「ん、分かった。 モロがそう言うなら、会ってみる。 何処に居るの?」

 「アオーン! よし、じゃあ少し長旅になるから準備しなきゃね。 会う為には、2足型3種族の王達に許可を貰わないといけないのさ」

 「なるへそね、じゃあ2足型種のゴブリン、トロール、オークの国を巡らないといけないのか。 ふふ、何か楽しくなってきたぞー! 冒険だぁー!」

 クウネルはモロの話しを聞き、ワクワクして立ち上がるが直ぐに腹の虫がなり始めた。

 「グギュルルルルー……あ、ごめんモロ。 お腹空いたから、何か食べ物探してくるね」

 「アオン、はははは! 勿論良いとも。 此方の準備はしとくよ」

 「何でか良く分からんくなったけど、沢山泣いたからお腹空いちゃった。 さぁ、何を狩って食べよっかな~」

 クウネルは楽しそうに、気配の反応が有る方向へと走り去った。 そして、残されたモロは走って行った友の背中を見つめながら呟く。

 「クゥン……私の友クウネル。 嘘をついた私を、どうか……許しておくれ」

 モロの懺悔を聞く者は居なかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...