真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

第226話 水竜達との戦闘

　「「「「「「「シャルルルガァァァ！」」」」」」」

　海面に水竜達の鎌首がズラリと並び、ネルに向かって迫る。

　「ふん！　アンタ達の弱点はもう分かってんのよ！」

　ネルは身体から粘液を落とすのに使った焚き火の方へと向かい、火を背にハルバードを構えた。

　「かかったわね！　火炎、ガァァァァ！　そして、叩き割り！！」

　そして、無謀にもネルを捕まえようと口を開けて突撃して来た水竜を火炎で焼き即座に粘膜が落ちた首をハルバードで跳ねた。

　陸地の方に跳ねられた水竜の首が飛んでいき、周囲に血飛沫が撒き散らされた。

　«ーー来ます！　左右より接近！»

　「分かってるわよ！　どうしてこう、竜ってどいつもこいつも群れてんの？！　火炎！　ボァァァァァッ！」

　ネルは火炎を左右に吐き、足に噛み付こうとしていた水竜を牽制する。　

　«ーーFPの使用量に注意して下さい。　火炎と戦技を多様していると、あっという間に無くなりますよ！»

　「でも、使わないと倒せないでしょ！　ガァァァァァ！」

　「シャガルルァァッ？！」

　火炎が直撃した水竜を逃がさずにネルは戦技で首を叩き斬る。

　「うわぁっ？！　またヌルヌルと気持ち悪い！　海に引きずり込む気ね？　絶対に行かないんだから！！」

　水竜達はネルの隙を突いて足下に身体を纏わりつかせ、海の方へとネルを連れて行く。　しかし、ネルは冷静さを失わず、ハルバードを地面に突き立てて踏ん張った。

　「させるかぁっ！　この程度で私を引きずり込むなんて、舐めないでよね！」

　ネルは力強く地面を蹴り、絡みついた水竜の身体を振りほどそうと試みる。　

　粘液で滑る足元に苦戦しながらも、なんとかバランスを保ち、海へと引きずられるのを防いだ。

　«ーー落ち着いてください！　焦るとFPがさらに早く減ります！»

　「うるさいわね！　分かってるってば！　でもこのヌルヌル、どうにかならないの？！」

　水竜たちはネルの抵抗に苛立ちを募らせたのか、さらに激しく動き始めた。

　海面が波立ち、新たな水竜が鎌首をもたげて彼女を睨みつける。　鋭い牙が火光に照らされ、不気味に輝いていた。

「くっ……数が多すぎる！　こうなったら一気に片付けるしかないわね！」

　ネルは深く息を吸い込み、焚き火の炎を背に、全身に力を込めた。　彼女の瞳が赤く光り、ハルバードを高く掲げる。

　«ーー待ってください！　それ以上FPを使うと危険です！　体力も限界に近いですよ！»

　「黙って見てなさい！　これで決めるんだから！　火炎乱舞、ガァァァァァァッ！！」

　瞬間、ネルの口から放たれた炎が渦を巻き、まるで火の竜巻のようになって周囲を焼き尽くした。

　と言っても、要は火炎を吐いているネルがその場で回転しているだけなのだが。

　水竜たちの悲鳴が響き渡り、粘膜をボタボタと落としてその動きが止まった。

　ネルは炎の中、ハルバードを振り回し、次々と水竜の首を斬り落としていく。

　「シャガァァァッ！　グルルァァァッ！」

　水竜達が次々に倒れ、海面に沈む。　

　血と粘液が混じり合い、海辺は一瞬にして凄惨な光景に変わった。

　だが、その勢いもつかの間、ネルの身体がふらりと揺れる。

　「はぁ……はぁ……やった……わね……。　ふふ、即席にしては上出来じゃない……？　ちっ、まだこんなに居るの？」

　ネルは膝をつき、ハルバードを支えにして息を整える。

　炎が収まると、水面から幾つもの水竜達が更に現れネルは舌打ちをした。

　«ーー注意！　大きな気配が海面に近づいてきます！»

　「何？　まさか……さっきの奴が戻って来たの？　結構しんどいんだけど……」

　ネルが顔を上げると、海面が不自然に盛り上がり、巨大な影がゆっくりと姿を現し始めた。

　それはこれまでの水竜とは比べ物にならないほどの巨体だった。　粘膜に覆われたそ巨体を持ち上げ、鋭い眼光がネルを捉える。

　「あ～……そうよね。　水竜が居て、水竜王神が居るんだもん。　そりゃ、水竜王が居るわよね」

　ネルはハルバードを握り直し、立ち上がるが、その足取りはおぼつかない。

　そひて、水竜王が口を開き、轟音とともに咆哮を上げた。

　「シャルルグルォォォォォォォォッ！！」